エムエスツデー 2010年7月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

「エム・ユニット」変換器の誕生

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 エム・システム技研の信号変換器の歴史は、37年前の1973年にまで遡ります。ちょうど、田中角栄内閣が「日本列島改造論」を旗印に公共投資を立ち上げ始めた頃で、全国のコンビナートで数多くの工業プラントの建設が進められていました。

 その頃の半導体の世界では、多種類のICが開発され、ロジックを処理するデジタルICのほか、オペアンプと呼ばれたアナログICが普及期に入って、それらが自由に入手できるようになっていました。一方、工業計器の世界では、すでに全電子式計装システムの2世代目が完成して、大手計装メーカーが激しく受注合戦を展開していました。
 ほとんどの大形プラントの中央管理室には、DCS(分散形制御システム)と呼ばれる制御用コンピュータが設置され、その下に各社が工夫をこらして設計したワンループコントローラがつながり、集中監視用パネルの表面には、多数のチャート式記録計とこのワンループコントローラのほか、各種表示計器やアナンシエータの表示ランプがぎっしりと並べられているといったイメージでした。
 プラントの各設備には、各種の熱電対や測温抵抗体などのセンサ類に加えて、多数のDC4~20mAの2線式差圧伝送器や流量発信器などの発信器類が取り付けられ、これらの発信器は膨大な量の信号ケーブルで中央管理室の集中監視用パネルまで接続されていました。そして、これら現場計器と中央管理室を結ぶ信号ケーブルの集中監視用パネル側の盤内には、ディストリビュータやその他の変換器類が設置されていて、それらの出力が受信計器群の入力信号となっていました。

 このような環境の中で、エム・システム技研が零細なベンチャー企業としてスタートし、信号変換器メーカーを目指して船出した姿をご想像いただけるでしょうか。工業計器の総合メーカーを自認する大手各社は、DCSから差圧伝送器まで全てを自社ブランドで取り揃えて、計装まるごと一括受注の形で営業活動をしていましたので、変換器だけの製造販売を始めるエム・システム技研には、それなりの創意工夫がなければならない情況だと認識していました。

熱延工場のイラスト

 その頃の大手各社の変換器は、自立盤の内部にビッシリとラック取付される構造になっており、ハウジングは鉄板加工でその前面に端子が配置された形に設計されていて、重量も1kg以上はあったと思います。
 エム・システム技研は、ケースはプラスチック製、取付構造は8ピンソケットのプラグイン式にすることで、信号変換器の小形化と大幅なコストダウンを実現しました。すなわち信号変換器のイメージを一新した「エム・ユニット」変換器の誕生です。
 さらに、直流入力変換器(形式:CV、SVなど)を始め、ディストリビュータやポテンショメータ変換器、そしてPT変換器、CT変換器など、各種の機能商品をラインナップしてシリーズ商品にしました。これらのうち、とくにポテンショメータ変換器とCT変換器が思ったよりすべり出し良く売れ、非常に助かりました。
 CT変換器をプラグイン式にしたことにより、取扱いが便利になったものの、変換器をソケットから取り外したときに、入力端子に接続されているCTの出力側がオープンになって高電圧が発生するという問題がありました。そこで、あくまでもプラグイン式にこだわった当時の設計陣は、ソケットの中にダイオードブロックを組み込むことで、この問題を解決しました。

 さてこの辺りまでが、エム・システム技研が変換器メーカーとしてスタートした当時の事情説明ということになりますが、ここからは、エム・システム技研が本格的な変換器メーカーとして立ち上がってゆくにあたって考えた基本方針についてお話ししたいと思います。
 まず頭に描いたのが、以下の6項目です。
 
1 販売価格を、市場が理解している価格の半額以下に設定する。
  しかも価格は全て公表する。
2 納期は最短にする。しかも、完成品在庫を持たない受注生産でそれを実現する。
3 機種を徹底的に増やす。
  計装設計をするときに必要になると思われる機能を全て商品化する。
4 ひとたび市場に出した商品は、廃形にすることなく、ユーザーの需要に
  永久に応えられるよういつまでも作り続ける。
  たとえば、使用部品が廃形になり入手不能になっても、
  設計変更して、同一機能で同一形状の商品を、供給し続ける。
5 競合メーカーにあって、エム・システム技研にない商品をなくす。
6 販売は全て契約代理店にお願いし、直販はしない。

 なおこの方式は、零細企業が小額の商品を少量受注で全国をカバーするのに最適な方式であった、と今でも思っています。

 それ以後のエム・システム技研は、すでに読者の皆様方がご存じのように、指数関数的に成長をとげました。工夫をこらして電空・空電変換器も創りました。各種の演算変換器も創りました。リミッタ、セレクタや各種の警報設定器も創りました。正に「手当たり次第」といったところでしょうか。
 ついに、マイクロCPUを内蔵した変換器も創りました。この結果、入力仕様が自由に変えられる変換器も創りました。

 もう一つ、高度成長した理由の中に広告・宣伝活動が挙げられるのではないでしょうか。どんなにすぐれた商品でも、お客様がご存じでないものは決して買っていただけません。「知らないものは買えない」のです。もし知っていても、そのメーカー名やどこへ行けば買えるかが分からなければ、買いようがないわけです。美しく分かりやすいカタログ、知名度を上げるための広告、オートメーションに関する展示会という展示会への思いきった大ブース出展、総合カタログの編集、立派で巨大なインターネットホームページ、お客様にやさしいカスタマセンター等々が、この難問への取り組みと言えましょう。

 このようにして創業38年を迎えても、なおこうして『エムエスツデー』の発行を続け、もっともっとお客様に、エム・システム技研の便利な商品群を知っていただこうと努力を続けております。
 つきましては、今後とも、引き続き『エムエスツデー』のご愛読をいただきたく、よろしくお願い申しあげます。

初期のカタログ・広告と海外展示会の出展写真

 

(2010年6月)


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