エムエスツデー 2009年12月号

製品別情報

みにまるシリーズに新機種をラインアップ
高精度、超高速30μs応答
直流入力変換器(形式:M2VF3)

(株)エム・システム技研 開発部

は じ め に

図1 M2VF3の外観と寸法

 エム・システム技研では、これまでコンパクト変換器「みにまるシリーズ」を、お客様のご要望に応じて広くご提供して参りました。おかげさまで、長期にわたりご好評をいただいています。

 今回、このみにまるシリーズに、高精度でありながら、応答時間30μs以下という超高速の直流入力変換器(形式:M2VF3)を新機種として加えました。本稿ではこのM2VF3についてご紹介します。

1.機器仕様

表1 M2VF3の主な仕様

入力信号
 DC−20~+20 mV
 DC−24~+24 mV
 DC−40~+40 mV
 DC−85~+85 mV
 DC−100~+100 mV
 DC−164~+164 mV
 DC−200~+200 mV
 DC−5~+5 V
 DC−10~+10 V
 DC−15~+15 V
DC−20~+20 V
DC−25~+25 V
DC−55~+55 V
DC−60~+60 V
DC−300~+300 V*1
DC−350~+350 V*1
DC−400~+400 V*1
DC−600~+600 V*1
DC−800~+800 V*1
 その他の仕様はお問い合わせください。
 *1 付加コード(規格適合)は「/N」のみ選択可能です。
出力信号
 DC−10~+10 V
 その他の仕様はお問い合わせください。
供給電源
 DC24V
応答時間
 30μs以下(0→90%)
周波数特性
 12kHz −3dB

 入力仕様は表1に示す入力信号レンジに対応しています。従来製品にはなかった「DC−20~+20mV」という低mV入力仕様から300Vを超える高電圧入力にまで対応していて、シャント抵抗を用いた計測や高電圧測定など様々な用途にご利用いただけます。

 基準精度注1)は±0.01%と高精度であり、温度係数も±0.005%/℃以内であるため、変換器の信号変換誤差は極めて小さくなっています。

 余計な高周波成分を取り除く目的で、M2VF3の入力回路は、信号ラインと直列に取り付けられている抵抗と信号ラインとグランド間に並列に取り付けられているコンデンサとで構成されているため、M2VF3の変換器全体としての応答特性は、一次遅れフィルタに近い特性になっています。

 エム・システム技研では、変換器への入力信号を0%から100%へステップ状に変化させたとき、出力信号が0%から90%に上昇するまでのステップ応答時間を、従来から「応答時間」と表現しています(図2参照)。M2VF3は、応答時間が30μs以下と、極めて応答性がよい製品にしました。

図2 一次遅れフィルタの応答時間

2.カットオフ周波数

 コンデンサと抵抗による一次遅れフィルタに、入力信号として正弦波を加えたときに、出力信号の振幅が−3dB(1/√2倍)に減衰する周波数をカットオフ周波数(遮断周波数)といいます。

 一次遅れフィルタの場合、コンデンサの容量値(C )と抵抗値(R )の積を時定数(τ)といいます。

 τ=CR … (式1)
 応答時間(T)と時定数(τ)の間には、およそ式2の関係があります。

 T=2.3 τ … (式2)
 時定数(τ)とカットオフ周波数(f )との間には、式3の関係があります。

 f =1/(2πτ) … (式3)
 f:カットオフ周波数(Hz)、
 τ:時定数(s)

 実際に応答時間が30μsの一次遅れフィルタのカットオフ周波数を計算してみます。

 まず、式2 を変形して、τ=T/2.3 となり、T に30μsを代入すると、
τ≒13μs と求まります。

 次に、式3 に、τ=13μs を代入すると、f ≒12.2kHz となります注2)

 カットオフ周波数が高いほど高速応答になります。

3.海外規格対応

 CEマーキング適合品でない変換器を、海外(とくにヨーロッパ)で使用する設備に組み込んで現地で稼働させると、当該地域の法令によって罰せられることがありますが、 M2VF3 は電磁両立性指令(2004/108/EC)に適合しているCEマーキング適合品であるため、海外でも安心してご利用いただけます。

4.その他の特長

 (1)消費電力は、標準負荷1MΩのときに、わずか0.4W、2kΩの最大負荷時にも0.5Wと、極めて優れた省電力設計をとっています。

 (2)絶縁は、入力−出力−電源の3ポート間絶縁であり、AC2000V 1分間の耐電圧性能があります。

 (3)多回転トリマによるゼロ調整とスパン調整が可能です。

図3 M2VF3のブロック図・端子接続図

おわりに

 以上、簡単にですが新製品M2VF3についてご紹介しました。なお、本稿に記載した内容は、製品の一部仕様だけを取り上げて説明しています。そのため、具体的にご検討いただく場合には、必ず機器仕様書をご覧いただくようお願いします。

 エム・システム技研では、みにまるシリーズに限らず、他の信号変換器についてもお客様のご満足度向上を目指し、今後も機能、性能の向上を図るとともに、日々、機種拡充に努めて参ります。

 ご意見やご要望などございましたら、お気軽にエム・システム技研のホットラインまでお寄せください。

注1)エム・システム技研では、「基準精度」を次のように定義しています。「基準動作条件において、エム・システム技研が管理している信号発生器と測定器を使用した場合に、理想出力と実際の出力との差を出力スパンに対する%で表したもの」(『エムエスツデー』誌1994年2月号「計装豆知識」参照)。
注2)M2VF3のカットオフ周波数は、正弦波を入力して測定すると12.2kHzよりも高い値になっています。

みにまるは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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