エムエスツデー 2009年5月号

『エムエスツデー』創刊17周年のごあいさつ


 『エムエスツデー』読者の皆様、こんにちは。今日もまた、こうして創刊17周年のごあいさつを書いております。昨年も同じことを書きましたが、17年もの長い間、月刊技術情報誌『エムエスツデー』の発行を一度も休むことなく続けてこられたことは、原稿執筆に当たってくださった方々のご努力の賜物であると同時に、次々と現れる技術の進歩と市場の変化があったればこそと存じております。

 それにしても、この一年の世の中の変わりようはショッキングなものでした。「リーマンショック」と呼ばれていますが、昨年暮れにアメリカのウォール街で起こった金融業界の破綻の連鎖は、世界経済に大きなダメージを与えました。

image 経済評論家が解説するところによれば、20年も前に日本で起こったバブル経済の崩壊時、その対策として打ち出された「ゼロ金利政策」に、この金融恐慌の遠因があるとのことです。金融ビックバンとゼロ金利、そして銀行破綻時のペイオフ制度との3点セットが施行された結果、日本経済はなんとか立ち直ったのですが、円の「キャピタルフライト」が発生したことは、まだ記憶に残っています。すなわち、日本人の保有する円建て資産が、金利の高い米ドルとなってアメリカの金融界に流れ込み、それがサブプライムローンの資金となっていったというから驚きです。また、そのサブプライムローンのリスクを証券化し、「金融デリバティブ」という庶民には分かりにくい形で証券化されて世界に売りさばかれたのと、その証券には「レバレッジ」と呼ばれる手法で、手元の現金の何十倍にもなる金額の証券の発行を可能にする金融工学が用いられたといわれています。さらにまた、その証券のリスクに保険がかけられ、またその保険金の受取り権までもが証券化されていて、一体何が何だかよく分からない高利回りの高格付けの証券となって売られ、それを外国の投資家や金融機関が購入し保有しているということです。

 これらの元になるサブプライムローンが破綻したのですから、世界から3,120兆円という巨大な信用マネーが一挙に消滅した(産経新聞日曜経済講座)ことになり、多くの金融機関が、国営化されたり消滅したりしたのだそうです。3,120兆円といえば、日本人の金融資産合計が1,600兆円くらいだといわれていますし、また日本最大手の東京三菱UFJ銀行の預金総額が、100兆円くらいだといわれているのとを比較してみても、この数字の大きさが分かります。

 これからの一年は、どう見ても良い経済環境が巡ってくるとは思われません。でも、世の中は動き続け、世界の60億の人々は、生産活動を止めるわけではありません。この厳しい環境に立ち向ってゆくのは、物作りによる実体経済を活性化させることであり、それを実現させるのは新しいテクノロジーであるのは確かです。

 今、先進各国は、エコロジーに向けて大きく舵を切ろうとしています。元々日本は、太陽光発電技術や風力発電技術では、世界のトップを走っているといわれています。また、都市の省エネルギーや省電力にも多くの投資が見込まれています。

 私たちエム・システム技研では、信号変換器など従来の主力商品に加え、省電力に貢献する電力管理用計測機器群を始め、広域に分散設置された各種設備を集中管理するための計測情報テレメータ機器の品揃えを充実させるほか、産業機械を正確に制御するサーボモータ・アクチュエータなどの開発、生産に力を入れ、新市場の創出に注力しております。

 また、美しい液晶表示を用いたチャートレス記録計に、独自のアイデアを駆使して、取扱い簡単、便利、安価を実現した新製品も、間もなく発売できるところまできています。

 この辺りの事情も、この『エムエスツデー』に発表して参りますので、引き続きご愛読のほど、よろしくお願い申しあげます。


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