エムエスツデー 2009年4月号

お客様訪問記

山口県企業局の小瀬川工業用水供給管理システムに
採用されたMsysNetシステム

(株)エム・システム技研 カスタマセンター システム技術グループ

 小瀬川は中国地方の広島・山口県の境を流れる一級河川であり、広島県大竹市と山口県玖珂(くが)郡和木町(山口県岩国市の北に隣接)で瀬戸内海にそそいでいます。戦後、河口部流域を中心に、化学工場、石油精製工場、製紙工場などからなる工業地帯が拡大し、工業用水の需要が大幅に増大しました。

 今回は、工業用水の供給管理を担当されている山口県企業局の小瀬川工業用水道事務所を訪ね、工業用水供給管理システムとして過日採用された各種信号の多重伝送装置および監視操作ソフトウェアについて、同事務所の森国 光孝 様、広中 勝文 様、林 俊郎 様、そして同システムの設計・設置工事を施工された東伸電工(株)の内田 廣様と、同じくシステム構築に携われた日本計測工業(株)の木下 幸雄 様の皆様からお話を伺いました。

[エム・システム技研、以下エムと略称]今回の新システム導入の経緯をお教えください。

[木下]以前は重電メーカーのテレメータ装置が設置されていましたが、それが更新時期にきていたため、システムの更新についてご相談を受け、エム・システム技研の担当者と一緒に伺ったのが最初でした。

[森国]従前のテレメータ装置では、専用の通信線を用いてデータ通信を行っていました。入出力点数はAi12点、Di80点、Do80点で制御機能もあり、テレメテレコン装置として使用していました。

 なお、この装置の通信速度は200bpsであり、現場側信号の伝送が遅いため、改善を希望しました。

[エム]最初は、従来どおりNTT専用回線を使用するテレメータシステムを検討しました。しかし、通信速度を1200bpsに上げても、中央で操作して現場からアンサーが帰ってくるまでの時間(親局子局間往復の通信時間)が数秒程度はかかることが判明しました。

[森国]現場調査をしたところ、既設の通信線にはツイストペア線(CPEV-S 0.9φ)が使用されていて、総延長が3.8kmありました。

 なお、そのちょうど中間地点に電源がとれる中継所がありました。

図1 システム構成図

[エム]当初は、NTT専用回線にモデムを接続してテレメータリングするMsysNetシステム機器で提案しました。しかし、総延長距離が3.8kmとわかったため、モデムがなくてもMsysNetシステム製品だけでシステム構築が可能であることがわかりました。

 今回採用されたシステムの構成要素である入出力機器(リモート入出力ユニット 形式:SML多点入出力ユニット 形式:39M)は、自立分散形の機器であり、単独で多重伝送できる機能をもち、入出力機器はRS-485に準拠し、NestBusと呼ばれる通信プロトコルをもっています。伝送速度19.2kbps、最大1kmまで伝送が可能です。

 リンクアダプタ(形式:DAM3)を使用すれば、さらにNestBusを1km延長して伝送できます(最大2km)。また、DAM3機器間1対1の構成では最大2kmまで伝送でき、しかもちょうど中間に中継所があるため、最大4kmまで信号伝送が可能であり、テレメータではなく多重伝送方式でシステムを構成することになりました。

 この構成により、伝送時間も短縮され、親局子局間往復で約2秒以内に収まるシステムになりました。

図2 監視卓[森国]事務所ではパソコンを新たに設置し、誰でも簡単に監視操作システムを構築できる監視操作ソフトウェアとしてSCADALINX HMI(形式:SSDLXの導入を考えました。さらに要求事項が増えて、場内の信号もDi300点、Ai80点あり、これも併せて監視することにしました。

 場内の信号はリモートI/O R3シリーズを使ってModbus/TCPで接続することにしました。したがって、L-BusとModbus/TCPをそれぞれ単独のLANにするため、上位パソコンにはLANカードを2枚使用しました。

[エム]場内の信号は従来から既設監視装置で監視されていますが、今回なぜエム・システム技研の監視システムを追加されたのですか。

図3 制御盤[森国]監視を2重化して安心できる面もあり、既設の重電メーカー製監視装置ではトレンドグラフの保存期間が1か月程度と短いのに対し、SCADALINX HMIでは1年間保存できるところが魅力でした。

 また、運用者自身でもシステムの構築、変更ができる点が優れていて、低廉な費用でシステムが導入できました。

[エム]システムの更新時に既設設備との切り替えはスムーズにいきましたか。

[内田]今までエム・システム技研製通信機器の設定を行った経験がなかったため、エム・システム技研に有償での立会いをお願いしました。安心できたうえ、半日ほどで作業は無事終了しました。

[エム]導入されて3年経過しましたが、いかがですか。

[林]昨年夏、雷で障害が発生しましたが、結局、通信線の避雷器が原因でした。機器の問題はなく、順調に稼働していて助かっています。インターネット利用の遠隔監視データロガー「Webロガー(形式:TL2W」も併設設置しているため、重要なアナログ信号4点について既設CATV回線を利用して、トレンドデータを見ることもできます。

 また、FTP通信でデータをパソコンへ送り、長期保存することも考えています。

 送水しているユーザー様へのインターネット経由でのデータ公開もできるため、今後実施したいと考えています。

[エム]今後もエム・システム技研をよろしくお願いします。お忙しいところをありがとうございました。

本稿のシステムについての照会先:
東伸電工 株式会社
内田 廣 様
〒740-0022
山口県岩国市山手町4丁目2番57号
TEL.0827-22-1636
 
日本計測工業 株式会社
木下 幸雄 様
〒740-0018
山口県岩国市麻里布町6丁目14番37号
TEL.0827-22-0955

MsysNet、SCADALINXは、(株)エム・システム技研の登録商標です。


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