エムエスツデー 2009年2月号

お客様訪問記

岡山県 笠岡湾干拓中央管理所に採用された
Webロガーによる配水管理システム

(株)エム・システム技研 カスタマセンター システム技術グループ

 笠岡市は岡山県の南西部に位置し、西は広島県福山市と隣接しています。気候的に温暖で雨が少なく、地形的には平野が少ない場所であったため、土地の有効利用については干拓や埋め立てを積極的に行うことによって対応し、1990年3月には広大な笠岡湾干拓地が完成しました。笠岡湾干拓地は、笠岡湾を堤防で囲み、海水を排水して陸地にした土地です。農業用地は約1,190haあり、広大な土地を活かした花や野菜や果物の栽培をはじめ、乳用牛や肉用牛の飼育などが活発に行われています。春は「菜の花」、夏は「ひまわり」の花畑が、訪れる多くの人々を和ませています。観光面では風光明媚な笠岡諸島を有しており、夏には海水浴客でにぎわいます。また、神島(こうのしま)水道一帯は天然記念物カブトガニの繁殖地として国の指定を受け、世界でひとつしかないカブトガニ博物館ではカブトガニに関する展示や研究も行われています。また、カブトガニにちなんだ駅伝大会も開かれています。

 今回は、この笠岡湾干拓地にある笠岡湾干拓中央管理所を訪問し、Webロガー(インターネット利用の遠隔監視データロガー)を使用した干拓地の農業用水用配水設備の遠隔管理システムについて、管理所の杉原 健介 様と職員の方お二人、そして、本システムの設計・構築を担当されたミツワ電設(株)の有友 猛 様、両金 道也 様にお話を伺いました。

図1 Web ロガーによる配水管理システムの構成図
図1 システム構成図[拡大図

[エム・システム技研、以下エムと略称]笠岡湾干拓中央管理所では、どのようなことをなさっていますか。

[杉原]岡山県から委託を受け、このシステムを使って笠岡湾干拓地内にある農業用水用配水設備の監視を行っています。

[エム]システムの構成や概要についてお教えください。

図2 50 インチの液晶画面

[有友]構成については図1をご参照ください。インターネットを利用して監視ができるWebロガー(形式:TL2Wを金崎分水塔、国繁用水機場、片島用水機場などの配水施設、寺間排水機場、片島排水機場などの排水機場に設置しました。配水施設では農業用地への配水流量や配水タンクの水位、排水機場では内水位と外水位、設備の運転や故障信号などをWebロガーに入力しています。

 取込んだデータはインターネット経由で50インチの液晶画面に表示しています(図2)。寺間排水機場にはWebカメラを2台設置して内水位、外水位の様子を見ることができます(図3)。また、Webロガーの画面表示には専用のソフトウェアは不要で、パソコンに標準で搭載されているブラウザソフトウェアがあれば表示できるため、管理所以外のところからでも容易に監視できるようになっています。

図3 Web カメラの画像

[両金]ネットワークとしては、笠岡市の地元ケーブルテレビのインターネット回線を利用しています。通常、Webロガーをインターネットに公開して管理所や自宅からアクセスするためには、固定のグローバルIPアドレスを取得する必要があります。しかし、固定のIPアドレスを取得する契約は、それを取得しない契約に比べ毎月のランニングコストが高価になってしまいます。このシステムでは固定IPアドレスを取得しない契約をして、代わりにヤマハ(株)製ブロードバンドルータ(形式:RT58i)を使用し、ヤマハ(株)が無償で提供している「ネットボランチDNSサービス」を利用しています。このサービスでは、固定IPアドレスを取得しなくてもルータごとに固定のホスト名をもつことが可能です。そのホスト名をアドレスとして入力することによって常時Webロガーにアクセスすることができ、ランニングコストを抑えることができました。

[エム]どのような画面を作成・表示されていますか。

図4 グラフィック画面図5 トレンドグラフ画面

[両金]まず、5箇所の機場と地図画面を入れた6分割の全体画面を表示できるようにしました。それぞれの機場のグラフィック画面を作成し、流量や水位の現在値やポンプの稼動状況が一目で判るようにしています(図4)。機場ごとの詳細画面としてWebロガーに標準で搭載しているトレンドグラフ(図5)やログ画面以外に配水施設ではポンプや電動弁の操作画面を作成し表示できるようにしました(図6)。

図6 操作画面図7 帳票画面

 また帳票については、各機場のデータを1つの画面にまとめるため管理所のパソコンでVisualBasic(VB)を使用して帳票画面(図7)を作成しています。周期的にパソコンから各機場のWebロガーに対しFTP要求を行い、帳票のベースになるトレンドデータや日報データのCSVファイルを取得します。なお、取得できなかったときには通信異常として警報を表示するようにしています。

[エム]本システムを2008年4月から運用されていますが、導入されてのご評価はいかがですか。

[杉原]従来の水管理システムでは、プリンタ3台が現場から上がってきたデータを常に印刷しているような状態で、データをまとめるのに苦労していました。この新しいシステムになってから、農業用水の使用量やポンプの稼動時間などが1枚の紙面にまとまって毎朝9時に自動印刷されますし、見たい日付の日報や月報を画面に出して印刷することもできます。この帳票は、水の供給元である岡山県企業局や農政局などに提出しています(図7)。また、グラフィック画面には、現在の配水槽水位やポンプの運転状況などが表示され、一目で確認できるため大変便利になりました。

 異常発生時にはWebロガーからEメール発報で知らせてくれるため心配ありません。以前、農業用水を供給している片島配水槽の水位低下が発生したときも、Eメール通報を受け現場に行ってポンプを運転し、配水槽の水がなくなる前に水を供給することができました。

 このシステムには大変満足しています。

[エム]本日は、お忙しいところをありがとうございました。

本稿のシステムについての照会先:  
ミツワ電設(株)
〒701-2155 岡山県岡山市中原511-1
TEL:086-275-3004
FAX:086-275-5886


ページトップへ戻る