エムエスツデー 2008年3月号

お客様訪問記

北海道中空知広域水道企業団で採用された
Webロガー水質監視システム

(株)エム・システム技研 システム技術部

 中空知(なかそらち)広域水道企業団は、当初、北海道のほぼ中央部に位置する滝川市、砂川市、歌志内市の3市に水道用水を供給してきました。2006年4月1日には、奈井江町の水道企業団への参画を機に、水道企業団の水道用水供給事業と3市1町の水道事業を統合し、さらなる経営の効率化を目指し水源から給水までの事業を一元化した事業体として再スタートしました。中空知の企業団を構成する自治体の概要ですが、滝川市では中空知の中心都市として各産業がバランス良く発展していて、味付けジンギスカンが特産品です。砂川市は市民一人当たりの都市公園面積が日本一であり、お菓子のまちとして「すながわスイートロード」事業を展開中です。歌志内市は炭鉱のまちとして栄えましたが、スイスランド計画を通して建築物のデザインの統一化を図っています。奈井江町は「健康と福祉のまち」として地域に密着した介護・医療の提供を行っています。

図1 水質監視システム構成図
図1 水質監視システム構成図[拡大図

 今回は、上記事業の一環として採用されたWebロガー水質監視システムについて、企業団の高橋 一美 様、そして本システムの設計、構築を担当された札幌テーケーシー(株)の松原 弘昌 様、城 康隆 様にお話を伺いました。

[エム・システム技研、以下エムと略称]まず、本システムを導入された経緯についてお聞かせください。

図2 地図メニュー[高橋]従来、水質測定は末端の給水栓にて、測定器具を使用した「毎日検査」注)で行っていたため、これを連続で自動的に行うことはできませんでした。2006年の水道事業統合に伴い、水質管理をより適切に行うため、水質検査を連続測定で自動的に行うことになりました。なお、2004年の法改正により、水質基準も連続測定で行えるようになったことも背景としてあります。ただし、1日1回の検査データがあればそれでもよく、データの連続性については強く要求されていなかったため、できるだけコストを抑えたいとの要望もありました。したがって、既設の配水管テレメータシステムがあったため、それとは別に連続監視装置を置かないシステム構成をとりました。他方、通信回線については50bps専用回線テレメータも検討しましたが、現場で蓄積したデータをWeb(インターネット)で取得する方法を選択しました。なお、データをできるだけ管路末端で測定するため、野外ピット内にセンサを設置して、法律で定められている3項目(濁度、色度、残塩)を測定しています。このような観点から、システムを構築するにあたり、現場でデータを蓄積でき、インターネット経由でデータを取り出せるエム・システム技研のWebロガー(形式:TL2W-ESの採用が最適と考えました。

図3 インデックスメニュー[エム]システムの構成や概要について教えてください。

[松原]構成については、図1をご参照ください。

 測定箇所は7箇所あります。各測定箇所における機器構成は同じで、3つのセンサからの3種のアナログ入力(濁度、色度、残塩)をWebロガーTL2W-ES)で記録しています。Webロガーでは、トレンドデータ、帳票データ(日報、月報、年報)を記録し、FTP転送でI・O DATA社製LANハードディスク(形式:HDL-GX160R)にCSV形式のデータが送られます。

図4 トレンドグラフ ノートパソコン上でメニュー画面を作成し、地図またはインデックスメニューから、個別の測定箇所のデータを参照する画面に展開できます(図23)。

 回線としては、NTTフレッツ・グループアクセス ライトを使用することによって、ランニングコストを抑えています。

[城]FTP転送はインターネットエクスプローラによっても実行できます。しかし、Webロガー側の設定では年報の自動転送機能がないので年報自動転送機能を実現するため、また7箇所のデータをまとめて帳票として出力するためにアプリケーションを組む必要がありました。その際、Visual Basic(VB)を使うとパソコンを交換したときにVBをインストールする必要があるため、Excelマクロだけを使ってアプリケーションを組みました。転送されるファイルフォーマットについての不明点は、エム・システム技研のサポートを得て、解決することができました。

図5 帳票[高橋]パソコンとしてはノートパソコンを使用しています。帳票印刷については、自動印刷を必要としないため、ネットワークに接続されているプリンタを使って手動で印刷しています。

[エム]今回、Webロガーを導入されていかがでしたか?

[高橋]役所内で、オンラインで現場のデータを参照できるようになりました(図4)。とりあえずは、「毎日検査」は並行して実施していますが、センサからのデータを自動的に記録・参照できるようになったため、2008年4月からは直接測定器具を使用した検査を行わずにすむことになり、省力化が可能になりました。また、測定の質も向上し、適正な水質安全管理という点で格段の進歩といえます。札幌テーケーシー殿には、3項目×7箇所のデータを1ページの帳票にまとめたいという要望に沿って、帳票をExcelマクロで作成していただき(図5)、全体を一覧することができ、本当に助かっています。

図6 現場盤[エム]今後の、課題はございますか?

[高橋]システムの拡張の予定はありません。しかし、積雪や寒冷の影響を大きく受けるピット内のセンサの維持管理が課題になります。

[エム]本日は、お忙しいところをありがとうございました。

本稿のシステムについての照会先:  
札幌テーケーシー(株)  
係長 松原 弘昌 様  
〒003-0012
北海道札幌市白石区中央2条1丁目 浅沼ビル4F  
TEL.011-813-3336  
FAX.011-813-3343

 

注)毎日検査:水道法第20条第1項の規定により行う定期の水質検査であり、検査項目は、水道法施行規則第15条第1項第1号により定められています。「1日1回行う色及び濁り並びに消毒の残留効果に関する項目」


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