エムエスツデー 2008年2月号

お客様訪問記

よつ葉乳業(株)オホーツク北見工場で採用された
MSRproデータロガーシステム

(株)エム・システム技研 システム技術部

 よつ葉乳業(株)オホーツク北見工場は、北海道のオホーツク海沿岸中央部、冬季は流氷に閉ざされる厳しい自然環境下の紋別市にあります。市名の由来は、市内中央部を流れる藻鼈(もべつ)川を指すアイヌ語のモベツ[静かである・川]であり(後に、藻鼈(もべつ)村と紋別村が合併して紋別村となった)、天然の良港として松前藩が1685年に「宗谷場所」を設けたのが開拓のはじまりといわれ、豊かな漁場と広大な大地の恵みを活かした水産農林業のまちとして発展しました。特産品は、ほたて、毛がに、たらばがに、ずわいがに、鮭、飯寿(いず)しなどです。真冬には、流氷砕氷船ガリンコ号で流氷を間近に見ようと、多数の観光客が訪れます。

 今月は、紋別市渚滑(しょこつ)町にある、よつ葉乳業(株)オホーツク北見工場を訪ねました。よつ葉乳業は、北海道の大地に根ざした酪農生産者の「酪農生産者の手による、酪農生産者のための乳業工場」という想いをひとつにして、十勝地区の8農協が中心になって昭和42年に誕生した乳業会社です。今回は、北見工場内の新工場建設に伴い電力/排水処理/ボイラ監視用として採用されたPCレコーダソフトウェアMSRpro(エムエスアールプロ)(形式:MSR2K-V5を使用したデータロガーシステムについて、よつ葉乳業(株)岡本 照之 様、辻上 敏宏 様、そして本システムの設計、構築を担当された(株)北弘電社 田中 寛 様にお話を伺いました。

図1 システム構成図

[エム・システム技研、以下エムと略称]まず、本システムを導入された経緯についてお聞かせください。

[岡本]このたび新工場を建設することになり、設備検討設計を進める中、監視システムを構築、設置する必要がありました。選定には能力、仕様はもとよりコストパフォーマンスも重視していました。監視システムの主な目的は、エネルギー原価調査と設備監視であるため、機能的には、監視・記録機能に重きを置きました。MSRproを採用したのは、これらの目的に最も合致したシステムであったためです。

 また、一般の操作・監視用ソフトウェア(SCADA)の場合には、電力デマンド監視用ソフトウェアを標準でもっていないことが多いため、カスタマイズが必要です。一方、MSRproには電力監視用クライアントソフトウェア(MSReco(エムエスアールエコ))が付属している点を評価しました。さらに、当工場において、エム・システム技研の製品・システム(MsysNetシステムPCレコーダソフトMSR128)の納入実績があり、とくにソフトウェアの実績を考慮しました。エム・システム技研のシステムは、他のルートからも納入されていたため、万一の不具合解決の際のアプローチのしやすさと、北弘電社の田中様からの強い推薦も、導入決定の理由になっています。

[エム]システムの構成や概要について教えてください。

[田中]構成については、図1をご参照ください。

図2 デマンド監視画面 サーバPCを既設工場(ボイラ監視室)に、クライアントPCを新工場(制御監視室)に設置し、リモートI/O機器としてR3シリーズを用いた4箇所のステーションとは2台のHUBによってつながれています。サーバ・クライアント間は、約160mの光ケーブルで接続されています。井水処理室からは、既設の小形多重伝送ユニット(形式:22LA1を利用し、接点信号をボイラ監視室に取り入れています。新工場と排水処理施設とは、途中まで既設の構内電話回線に新設した架空電線とLANエクステンダ注)を使ってLAN回線を延長し、接続されています。サーバPCでは、排水処理施設のポンプなどの状態と各水槽の水位、温度、pH、流量などの監視を主に行っているほか、新工場電気室での電力監視とチルド設備の温度、給水量、蒸気使用量状態、コンプレッサの圧力などの監視、井水処理室でのポンプ状態の監視を行なっています。電力監視については、MSRpro付属のデマンド監視ソフトウェア(MSReco)を使い、新工場の電力使用量をデマンド監視しています(図2)。クライアントPCでは、新工場(乳製品加工棟)の電力監視を主に行っています。

図3 グラフィック画面 監視用のグラフィック画面(図3)については、CADで作成した電力系統図やプラント図をビットマップ形式に変換しMSRproのグラフィックパネルの背景画として貼付けた上に、アナログデータをバーグラフあるいは数値で表示し、運転中などの状態表示も行い、故障などの異常信号については画面上でランプをブリンクさせています。さらに、既設工場(ボイラ監視室)から排水処理施設にある電動弁開閉状態の監視および開閉指令を行っていますが、MSRproでは、画面から指令操作が行えません。そこで、画面からでなく外部(ボイラ監視室内)に設置した開閉指令切替スイッチを操作して信号を出すようにしています。具体的には、開閉指令切替スイッチ信号(接点入力信号)をMSRproでアラーム信号として割付け、その信号がONのときに排水処理施設の接点出力信号がONになるように設定しています。

図4 排水処理施設[エム]今回、システムを導入されてとくに良かったと思われる点をお聞かせください。

[辻上]排水監視については、従来、データ値は現場に行かないとわかりませんでした。

 とくに、夜間(16:00~8:00)は、排水担当者が現場にいないため、警報などがグラフィック画面で一目瞭然に見られることが重要であり、助かっています。また、データ値に基づき、電動弁開閉スイッチを操作できるようになりました。帳票によって、新工場のエネルギー(水、蒸気、電気など)の使用量を把握できます。トレンドデータおよび帳票の記録で、過去の動きを知ることもできます。さらに電力デマンド監視によって、電力の最大使用量の把握も容易になりました。

[岡本]構内電話回線やLANを使用した通信システムの構築ができたため、将来の展開にも有効だと考えています。

図5 新工場の集中計器(電力量)盤に設置されたリモートI / O R3 シリーズ[エム]今後の課題はございますか?

[辻上]今回は遠隔監視が主でしたが、遠隔操作で流量の調整なども行えればよいと思います。新工場の蒸気使用量は、現状では一括把握方式になっていますが、個別の使用量を把握できるようにして、省エネ効果を上げることも考えていかなければなりません。

[エム]本日は、お忙しいところをありがとうございました。

本稿のシステムについての照会先:
(株)北弘電社
電力事業本部 発変電情通工事部 参事 田中 寛 様
〒060-0011 札幌市中央区北11条西23丁目2番10号
TEL.011-640-2247
FAX.011-640-2152

注)LANエクステンダ:10Mbpsまたは100MbpsのEthernetを、設置済み電話などのメタル線を利用して、最大1.9kmまで拡張するための機器。

MSRpro、MsysNetは、(株)エム・システム技研の登録商標です。


ページトップへ戻る