エムエスツデー 2007年8月号

お客様訪問記

海峡都市 下関市の上水道遠隔監視システムに採用された
MsysNetテレメータ

(株)エム・システム技研 システム技術部

 山口県は本州の最西端、三方を海に囲まれた場所に位置し、さらにその最西部に下関市があります。九州への玄関口であり、また韓国の釜山や中国の青島へ向かう国際フェリーも発着し、港町として有名です。

 全国の天然ふぐの約8割が水揚げされる、日本一のふぐの水揚げ港でもあります。特産品のふぐは、福を招くよう、地元では「ふく」と呼ばれています。

 また、源平最後の対決「壇之浦の合戦」、武蔵と小次郎の決闘地「巌流島」、あるいは明治維新の歴史を刻む史跡などが点在し、観光地としてもクローズアップされています。

 今回は、この下関市の上下水道局・長府浄水場を訪問しました。2007年4月に水道局と下水道部が統合され、名称も上下水道局となりました。

図1 長府浄水場の中央監視室にある監視用パソコン

[エム・システム技研、以下エムと略称]エム・システム技研のテレメータを導入された経緯をお教えください。

[佐々木]最初の導入は2000年で、今から7年前でした。それ以前は大手メーカーのテレメータしか使ったことがなく、そのような既設テレメータのリプレース用としてエム・システム技研の製品を検討しました。

 理由としては、大手メーカーのテレメータ機器は内部の詳細がわからないため、トラブルが発生した場合、我々ユーザーでは対処できなかった点が挙げられます。

 これに対し、エム・システム技研の製品では、仕様書、取扱説明書、技術資料までが配布されていました。また、当初より職員での構築を目的としていたため、エム・システム技研工場での研修へ担当者を派遣したり、水道局でもメーカー研修を行い、体制づくりをして導入しました。研修を受講することによって内部の詳細な仕組みを簡単に知ることができました。最終的な採用決定にあたっては、すでに納入されていた他の水道局での稼動状況を調査したうえ、問題はないと判断しました。

[エム]現在、どのようなシステムをお使いかお教えください。

[佐々木]計装業界では主流であったパソコンのOS(WindowsNT)上で動作する監視 操作ソフト(形式:SFDNを採用し、ポンプ場、配水場などのデータをNTT専用回線を使って、長府浄水場の中央監視室で集中監視しています。もちろん、パソコンは信頼性向上のため、2台設置して並列運用しています(図1図3)。

 親局−子局間のテレメータとしては MsysNet テレメータを使っています。子局−孫局間のテレメータの種類は、信号量によって使い分けています。

 孫局の信号を子局でI/O出力しない場合は、NestBusを用いて通信のみで接続できるMsysNet テレメータを使用し、またI/O出力する場合は、アドレススイッチを合わせるだけで通信できる“ジャストフィットテレメータ”(小形多重伝送ユニット(形式:22LA1))を使用します。そして自営回線を使用できる箇所は、ジャストフィットテレメータのI/Oユニットのみで使用できる多重伝送方式で行っています。

図3 長府浄水場の遠隔監視システム

図3 長府浄水場の遠隔監視システム[拡大図


 当初は、盤電気工事、操作卓、テレメータ機器の設定、監視・操作ソフトウェアの構築を地元業者に一括で発注しました。しかし、翌年に増設工事を実施したとき、業者が変わったことが問題になりました。

[エム]どのような問題だったのですか。

図2 監視画面

[吉野]監視・操作ソフトウェアのグラフィック画面で使われている部品を、他の業者が使ってもよいかという問題です。著作権の問題があり、結局その年は新たに部品を作ってもらいました。

 このような経験から、翌々年以降は盤設置、電気工事とテレメータ機器の設定だけを外部発注し、パソコンの監視・操作ソフトウェアの構築は、私たち、長府浄水場の職員自身で作業を担当することにしました。

 最近は、発注先業者が毎年変わることもあり、業者より私たちの方がテレメータの設定作業に慣れていることに気がつき、私たち自身で作業した方がスピーディーで、また価格も安く抑えられるため、最終的には盤設置工事だけ外部発注する形になってしまいました。

[エム]パソコンが壊れたとき、内部のご関係者だけで立ち上げられたとお聞きしましたが、具体的にはどのようになさいましたか。

[吉野]汎用のパソコンを使っているため、CD-ROM で OS(WindowsNT)、監視 操作ソフトSFDN)、プロジェクトファイルをインストール(リストア)するだけで立ち上げられました。

 これも、大手メーカーのテレメータを使っていたらできなかったことです。

図4  長府浄水場にある監視盤

[エム]当初、三菱電機製PLCで異常が発生した場合に、警報盤にブザー、ランプ出力して、中央監視室内で異常発生が即座にわかるようになさっていましたが、多点入出力ユニット(形式:39Mに入れ替えられましたね。なぜですか。

[吉野]毎年、テレメータの追加工事が発生し、PLCのソフトウェアの変更が必要になるため、テレメータ機器と設定するビルダーソフト(形式:SFEWが同じである多点入出力ユニット39M)に交換しました。

 PLC と同様にシーケンス機能があり、自分たちでシーケンスの変更ができるメリットがあるため、現場でデジタル入力が多い場合に使用しました。

[エム]テレメータの設定作業を浄水場担当者が分担され、入札により決定した業者は電気工事だけを担当したとのこと、さらに、上位パソコンの監視・監視ソフトウェアのタグ設定やグラフィック画面の構築まで担当者が行える体制を築かれたことはすごいですね。

[山根]担当者の異動があり、今までに長府浄水場内で 2日間のセミナーを 2回実施しました。今後も担当者の異動が予想されるため、現状を維持する目的で、セミナーの受講を行う予定です。

[エム]今後は、どのような設備計画をおもちですか。

[下田]現在では 30対向を超えるテレメータが稼動しています。2005年に市町村合併で豊浦郡4町と合併して市の面積が増え、現場までの距離も遠くなりました。従来のテレメータでは毎月の維持費が数万円もかかる場所も出てきました。

 また、市内4事務所で監視しているサーバの情報を長府浄水場でも見られるようにしたいと考えています。

 今年、豊浦事務所でパソコンの OS、WindowsXP上で動作するサーバ・クライアント方式の監視 操作ソフト SCADALINX HMI(形式:SSDLXを導入し、I/O としては安価なリモートI/O R3シリーズを水質モニタ用に採用しました。

 遠く離れたポンプ場には、現場設置形Web対応データロガー「Webロガー」も初めて採用し、フレッツ・ISDN 回線を使って、トレンドグラフ、瞬時値、日報を常時監視できる状態にしてあります。

 今後は NTT 専用回線ではなく、常時監視でき、維持費が安い VPN 接続のシステムを構築していきたいと考えています。

[エム]お忙しいところ、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。これからも引き続きご愛顧のほど、よろしくお願いします。

本稿のシステムについての照会先:
(株)エム・システム技研
システム技術部

MsysNetSCADALINX は、エム・システム技研の登録商標です。


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