エムエスツデー 2007年5月号

計装豆知識

バルブアクチュエータのフェールセーフ印刷用PDFはこちら

プロセスオートメーションにおいて、制御ループの主要な操作対象として調節弁が挙げられます。そして、調節弁を駆動するバルブアクチュエータの代表的な動作原理として空気式と電動式があり、しばしば両者を比較する記事が見られます。

「計装豆知識」欄でも、2006年7月号にて両者の比較を行っています。今回は、同号の記事中では簡単に触れていた、バルブアクチュエータのフェールセーフ機能についてご説明します。

1.空気式バルブアクチュエータ

空気式バルブアクチュエータには、一方向駆動の単動式と双方向駆動の複動式の2種類がありますが、単動式については、ほとんどの場合、そのままでフェールセーフといえます。

故障などの異常発生時に調節弁が開く方が安全な場合は、「エアレスオープン」を、閉じる方が安全な場合は、「エアレスクローズ」を選択すると、停電などでコンプレッサが停止しても自動的に安全側に動いてくれます。複動式であっても、スプリングリターン機能があれば、同様の動作をします。

問題は、調節弁の開度を中間値に保持しなければならない場合です。複動式でスプリングリターン機能がない場合であっても、アクチュエータの両側の空気圧がなくなると、停止位置を保持することが困難になります。

図1 ロックアップバルブ

このような場合に備えて、ロックアップバルブ(またはエアロックバルブ)が使用されます。ロックアップバルブは、アクチュエータの駆動用空気圧供給配管の途中に設けられ、その空気圧の低下を検知すると、内部のバルブを閉じてアクチュエータに供給されている空気圧が放出されないように保持することによって、調節弁の開度を直前の値に保持します。なお、ロックアップバルブには、単動式用と複動式用の両タイプがあります。図1に、ロックアップバルブの例を示します。

2.電動式バルブアクチュエータ

調節弁の開閉動作を電動モータで行う電動式アクチュエータの場合、停電時に調節弁の開度を直前の値に保持することは、容易です。停電すなわちモータ停止だからです。

問題は、調節弁が中間開度で止まることなく、完全に開いた方(または閉じた方)が安全な場合です。停電の場合、調節弁を開くかまたは閉じようとしても、モータを駆動する電力がないからです。

この問題を解決するために、電動アクチュエータにクラッチ機構とゼンマイを設け、停電時にゼンマイの力でアクチュエータをどちらかあらかじめ定めた方向に駆動させて調節弁を開く(または閉じる)方式を採用しているメーカーがあります。また、アクチュエータに電池を搭載し、停電時には、その電池の電力を利用してモータを駆動することによって調節弁を開く(または閉じる)方式を採用しているメーカーもあります。

図2 サーボトップII(形式:PSN1)

エム・システム技研の電動式バルブアクチュエータサーボトップII(形式:PSN1図2)には、蓄電池の電力を利用したフェールセーフ機能をオプションとして用意しています。

また、調節弁を単純に全開または全閉にするだけでなく、あらかじめ設定した任意の開度に保つこともできます。これは、空気式の単純なエアレスクローズ(またはオープン)やロックアップバルブ、また電動式におけるゼンマイ方式では実現困難な機能であり、たとえば、停電時には特定の流量に保ちたい場合に適しています。

サーボトップは、エム・システム技研の登録商標です。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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