エムエスツデー 2007年3月号

製品別情報

エム・システム技研本社の電力監視システム(3)
− エム・システム技研本社工場への電力監視システムの導入と効果 −

(株)エム・システム技研 システム技術部

は じ め に

 先月号では、省エネ活動を推進するためエム・システム技研の本社に設置し現在稼動中の電力監視システムについて、その特長と構成をご紹介しました。今月号では2006年7月から運用を開始した当該電力監視システムの導入経緯や運用状況、およびエム・システム技研の省エネへの取り組みについてご紹介します。

1.本社工場への電力監視 システム導入のねらい

 エム・システム技研のこれまでの電力管理では、受配電設備に設置した変圧器の最大需要電流の総量をバーグラフメータを使って監視していました。ただし、これは瞬時値を監視するものであり、全体の電力は管理できるものの、効率の良い管理とまではいきませんでした。電力量については2004年、2005年に行った空調設備のリニューアルによって消費量を削減し、契約電力も数次にわたって段階的に下げてきました。

 一方、2006年4月の工場増築により電力負荷の増加が見込まれる中で、先行して下げた契約電力を超過することなく電気を使用していく必要がありました。

 そこで、新たに電力監視システムを導入して電力デマンドの監視を厳しく行うことにしました。さらに各系統別に使用電力量をモニタし、そのデータをもとに工場のどこで、どのように電力が使用されているかを把握し、課題を発見することによって省エネを効果的に実現することをねらいとしました。

2.省エネ目標の設定

 電力監視システムを導入するにあたり、本社工場では次のような省エネ目標を設定しました。なお、目標設定に際しては、当然のことながら過去の電力使用実績や今後の生産計画、設備の増設計画といった需要の増加要因についても検討材料に加えました。

 目標1:ピーク電力の管理による契約電力 50kW 削減

 現在の契約電力および過去のピーク電力と新たな負荷を考慮し、契約電力を 50kW 削減することを目指しました。電力負荷がピークを迎える夏場までにシステムを立ち上げ、負荷の増加が見込まれるにもかかわらず現状の契約電力を超過することなく、さらに 50kW の削減を行うことによって約91万5千円/年の出費低減が見込まれます。

 目標2:総使用電力量の5%削減(エネルギー原単位ベース注)

 ピーク電力の低減による使用電力量の削減に加えて、電力量の監視を通して待機電力や休日を含む非稼動時間帯における電力使用状況を把握することによって無駄を発見し、電気の使用方法の見直しを行い、原単位ベースで総使用電力量を5%削減することを目標としました。この削減効果としては、約75万円/年の出費低減が見込まれます。

図1 省エネ目標の設定

3.導入費用とエンジニアリングの実施

図2 リモートI/O

 電力監視システムの導入に際して要した費用は、ハード・ソフト費、工事費、エンジニアリング費に大別されますが、受電点およびフィーダ72回路の計測に関するハード・ソフト費は約300万円(定価ベース)に抑えることができました。機器の取付けや機器間の配線など若干の工事費はかかりましたが、エンジニアリングについてはエム・システム技研 システム技術部にて実施しましたので、先に掲げた省エネ目標を達成できれば、2年余りで償却できる目論見です。

 システム導入に伴うエンジニアリングとしては、次に挙げる5項目を実施しました。

 (1)システム系統図、計測計画図面の作成
 (2)配電盤、分電盤改造図面、配線設計図面の作成
 (3)ハードウェア設定(リモートI/O図2
 (4)ソフトウェア設定(PCレコーダ、グラフィック画面作成を含む)
 (5)試運転調整

 幹線回路へのクランプ式交流電流センサの取付けについては、充電部に注意を払いつつ停電させることなく実施できました。事前に現地調査を行いクランプ式交流電流センサの取付け場所をあらかじめ決めておいたことと、クランプ式交流電流センサ自体に二次側が開放になっても安全なように保護対策をとっていたために、取付け作業は効率的に実行できました。

4.導入効果と省エネ推進活動

図3 省エネ監視担当者

 社内で省エネ推進の旗振り役である総務部の担当者に話を聞きました。

 [システム技術部、以下[シ]と略記]電力監視システムを導入した効果はいかがでしょうか?

 [総務部、以下[総]と略記]一番大きな効果としては、生産量が増えたにもかかわらず、電力デマンドを契約電力以下に抑えることができたことです。とくに空調(冷房)負荷がフル稼働する7月中旬から8月下旬までは電力デマンドの超過が危惧されました。そして、昼間の時間帯には頻繁にデマンド警報が発生しましたが、負荷調整を行うことによって電力デマンドを抑えることができました。8月末に新しい生産ラインが稼動し電力負荷が増加したときにも、負荷管理を徹底することによって契約電力を下回る運用ができました。過去の実績から電力デマンドのピークは7月初旬~9月上旬の間に発生することが想定されていたため、システムの導入をその時期に間に合わせたことも効果的でした。

 また、事務所にクライアントパソコンを置くことによって、居ながらにして測定電力量をグラフ化して見ることができ(図3)、工場のどの場所でどれだけの電力を消費しているかが一目で分かるようになりました。その結果、従来は把握できていなかった深夜、休日の待機電力や不在時の電力消費などの無駄が見えてきたことも大きな効果です。

 [シ]省エネ対策として具体的にどのようなことを行いましたか?

図4 デマンドアナンシエータ

 [総]デマンド警報発生時の負荷制限対策としては、主に空調負荷を対象にしました。デマンド警報が発生すると、画面で知らせるほか、守衛室に設置したデマンドアナンシエータ(図4)でLEDを点灯させブザーを鳴動させます。守衛室から連絡が入ると手動で空調負荷のコントロールを行いました。コントロールの対象は生産に影響のない範囲に限定しました。また、空調の集中管理機能を活用し、各職場では設定温度の変更ができないようにしました。なお設定温度を28℃に設定したほか、部分的には一時停止も行いました。デマンド監視画面では現在デマンドのほかに予測デマンドを表示しています。負荷を調整することにより、それまで出ていた警報の解除とともに予測デマンドが契約電力以内に収まることも確認できました。この機能の効果によって、電力デマンドのピークを抑えるだけでなく電力使用量も抑えることができ、省エネを実現できました。

 また系統毎に測定した電力データのグラフによる分析結果からは、昼休みの照明消灯を徹底する、夜間休日に停止する負荷の見直しを行うなど、発見した無駄をなくす対策をとってきました。

 [シ]社員の反応や今後の取り組みについて聞かせてください。

 [総]電力監視システムの導入および冷房時の温度集中管理については、システム導入後速やかに社員に周知徹底しました。冷房の温度管理を徹底すると同時に、クールビズ(夏場の軽装)を実施しました。今回のシステム導入によって、「電力を監視している」ということが意識付けられ、省エネ意識が高まってきたように感じます。表示装置を本社工場の玄関に設置し(図6)、社員がより関心をもつようにもしました。これからも、社員一人ひとりのコスト意識と省エネ意識が高まるように取り組んでいきたいと思います。

 今後の検討事項としては、空調の効率的な利用や照明器具のインバータ化などを掲げ、さらなる省エネを目指していきます。

図5 照明電力 図6 本社工場の玄関に設置された表示装置

お わ り に

 3か月にわたりエム・システム技研の電力監視システムについてご紹介してきました。なおこのシステムは、電力以外にも温度、あるいはガスや水道の積算流量など、ユーティリティ関係の物量を同時に監視できることも評価され、工場やショッピングセンターなどでご採用いただくなど、各方面からご好評をいただいています。

 今後はデータ分析、解析機能の強化など、機能の拡充を進めていく予定です。お客様各位の省エネ活動にもエム・システム技研の電力監視システムをぜひご採用いだだきたいと願っています。

注)エネルギー原単位とは、一般に工業製品 の単位生産量または単位生産額に対して使用する電力や燃料などのエネルギー消費量の総量のことです。本社工場では、単位生産額あたりのエネルギー消費量をエネルギー原単位ベースとして目標設定に用いました。


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