エムエスツデー 2007年2月号

製品別情報

エム・システム技研本社の電力監視システム(2)
− エム・システム技研の電力監視システムの特長と構成 −

(株)エム・システム技研 システム技術部

は じ め に

 先月号では、地球温暖化の進行や省エネ法の改正について、また省エネルギーの動向や省エネルギー活動の推進について管理サイクルを含めてご説明しました。

 今月号では、このような省エネ活動を支援する電力監視システムの特長とエム・システム技研本社工場での設置事例についてご紹介します。

1.エム・システム技研の電力監視システムの特長

 エム・システム技研の電力監視システムは、エム・システム技研の主力製品であるリモートI/O R3シリーズ図1注1)PCレコーダソフトウェア MSRpro、そして電力監視用ソフトウェア MSReco注2)によって構成されます。さらに、既設設備にCT(計器用変流器)がない場合には、容易に電流を取り出すことができるクランプ式交流電流センサ図2)を用います。

 この電力監視システムの特長およびメリットについて、以下に述べます。

図1 リモートI/O R3シリーズ 図2 クランプ式交流電流センサ

 (1)簡単に構築できます。

 電流検出にクランプ式交流電流センサを用いることにより、工期の大幅な短縮、停電時間の短縮、そして工事費の低減といったメリットがもたらされます。各種信号をリモートI/Oに取り込み、LANでパソコンに接続するだけでシステムが構築できます。

 (2)パソコンで監視できます。

 リモートI/O から伝送されるデータを MSRpro サーバで収集・収録します。従来、現場巡視によって採取していたデータを、パソコンの画面上でリアルタイムに系統別に見ることができます。

 さらに、電力デマンド監視を行うことができます。デマンド監視は契約電力の適正化につながり、省エネ、省コストを実現します。

 また、標準機能としてバーグラフ作成、リアルタイムのトレンドモニタ、帳票の作成やグラフィック画面作成などの機能を備えています。収集データや帳票データはCSVファイルに変換し、出力できます。

 (3)拡張性に優れています。

 工場内製造ラインなどの増設に応じてシステムを拡張する場合には、リモートI/O のステーションまたはノードを追加し、設定を行うだけで対応ができます。また、豊富なリモートI/O のバリエーションを使うことによって、電力以外に温度、湿度、流量、圧力などのアナログ信号や運転・故障などのデジタル信号を取り込むことができます。もちろんパルス発信機能付電力量計からのパルス信号のカウントも行えます。

2.本社電力監視システムの構成

 エム・システム技研の本社工場は大阪市内の南部に位置し、関西電力(株)からは高圧6600Vで受電しています。年間(2005年度)の電力使用量は約180万kWhです。

 システムの構成は図3に示すとおりです。電気室に設置されているキュービクルおよび各所に分散設置されている空調分電盤にリモートI/Oを合計4ステーション設けて、データを収集しています。収集したデータは MSRpro サーバに収録され、MSRproMSReco クライアントを使って表示します。省エネ担当者のパソコンおよび守衛室のパソコンにクライアントソフトをインストールし、モニタしています。本社工場の省エネ担当者以外の一般の社員も、必要に応じて社内LANを介してその状況を閲覧できます。

図3 本社電力監視システムの構成

 キュービクル内に設けたリモートI/O では、電力会社が設置している取引用電力量計からの電力量パルス信号を、パルス検出器を介して高速パルス積算入力カードに取り込んでいます。さらに、低圧の分岐回路ごとに電力入力カードを用いて有効電力や積算電力量を取り込んでいます。

 空調分電盤に設けたリモートI/O でも同様に、電力入力カードを用いて空調回路ごとの有効電力や積算電力量を取り込んでいます。工場全体では、受電点の電力量1点と低圧分岐回路や空調回路の電力量72点(予備回路を含め)を取り込んで監視しています。

 キュービクル、空調分電盤はいずれも既設の設備ですが、CT(計器用変流器)や電力量計は取り付けられていませんでした。さらに、昼夜稼動する生産に影響を与えないため、追加・改造工事は短時間で行う必要がありました。そこで、すべての分岐回路の電流をクランプ式交流電流センサ図4)を用いて取り込むことによって、停電時間の最小化、工期の短縮と工事費の大幅な低減を実現できました。

 また電力デマンド警報発生時には、デマンド監視画面での表示だけでなく、R3シリーズの接点出力カードから出力されるデマンド警報信号を用い、LED表示回路やブザー回路を外付けで構成したデマンドアナンシエータ(図5)によって知らせています。

図4 クランプ式交流電流センサ図5 デマンドアナンシエータ

3.電力監視機能

 監視機能についてご紹介します。まず、電力デマンド監視画面(図6)を示します。

図6 電力デマンド監視画面

 電力デマンドを契約電力以内に抑えることがデマンド監視の目的です。目標デマンドを契約電力より低めに設定し、その範囲内に抑えることができれば、契約電力を下げて契約し直すことで、コスト削減につながります。電気料金は基本料金と電力量料金で構成され、電力デマンドによって基本料金が決まります。したがって、電力デマンドを契約電力以内に抑えることが重要です(図6)。

 次にバーグラフ監視機能です。工場全体の使用電力をグラフ化することで全体の使用量の変化など使用傾向を把握できます(図7)。

図7 バーグラフ画面(工場全体)

 さらに各分岐系統や機械設備ごとの電力負荷変動を計測することによって、省エネ改善のポイントを抽出していきます。いわゆるエネルギー使用状況の可視化です。グラフ化することによって、いつ、どこで、どのように電力が使用されているかが分かります(図8)。1画面に8系統までのバーグラフまたは折れ線グラフの作成が可能です。この画面を最大32画面まで使用することができます。

図8 バーグラフ画面(系統別)

 配電用変圧器系統別あるいは空調分電盤別に収集されたデータを、フロア別や部門別にグループ化してグラフにすることで、新たな課題も発見されます。また、グラフィック画面によりリアルタイムデータをビジュアルに監視することもできます。

お わ り に

 エム・システム技研の本社工場では、このシステムを2006年6月に構築して7月から運用を開始し、夏場の電力ピークを迎えるなど、電力デマンド抑制や使用電力量の削減に役立ててきました。

 次回はエム・システム技研での運用実績について、関係者のインタビューも含めてご紹介します。

注1)電力入力用のR3シリーズについては 『エムエスツデー』誌2006年1月号「リモートI/O R3シリーズ クランプ式センサ入力形 電力入力カード(形式:R3-WT4A/R3-WT4B)、電力用マルチカード(形式:R3-WT1A/R3-WT1B)」でご説明しています。
注2)MSRecoについては2006年3月号 「MSRproに新登場する電力監視用ソフトウェア(MSReco)」でご説明しています。


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