エムエスツデー 2006年12月号

製品別情報

FOUNDATION Fieldbus
パワーサプライ・ユニット(形式:FFPSU)

(株)エム・システム技研 開発部

は じ め に

図1 FFPSUの外観と寸法

 現在、国内の工場現場で使用されているフィールド機器としては、DC4~20mAを標準信号とするアナログ伝送方式をとる製品が多くを占めていると思われます。

 これに対し、近年、完全なデジタル通信方式を採用した産業オートメーション用ローカルエリアネットワーク(LAN)であるFOUNDATION Fieldbus が注目されています。

 この方式は、従来のアナログ伝送方式やハイブリッド通信方式とは異なり、多種・大量のデータを双方向に通信できるため、機器の管理・運営を担当するお客様にとって大きなメリットをもたらします。

 今回、このFOUNDATION Fieldbusシステムにおいてフィールド機器に電源を供給するパワーサプライ・ユニット(形式:FFPSU図1)を開発したので、ここにご紹介します。

1.FOUNDATION Fieldbusの概要

 FFPSU をご紹介する前に、FOUNDATION Fieldbusの概要を簡単にご説明します。

 FOUNDATION Fieldbusは、1994年に設立された非営利法人であるフィールドバス協会が開発し普及促進している、オープンな国際統一フィールドバスです。フィールドバス協会には、世界のPA/MA(Manufacturing Automation) 産業・オートメーション業界の主要企業をはじめ、エンドユーザー、大学・研究機関などが参加しています。

 接続形態(トポロジー)として、アナログ伝送方式の1対1に対してマルチドロップ接続が可能であるため、配線コストの削減に大きく貢献し、機器増設の際にも簡単に配線が行えます。

 通信については、ネットワーク上のすべての機器間で双方向通信による情報交換が可能であるため、高度な機能が実現できるようになります。多様なデータ通信は、フィールド機器の自己診断も可能とするため、予防保全面でのメリットも大きな特徴といえます。伝送速度は31.25kbpsであり、アナログ信号にデジタル信号を重畳させたハイブリッド通信方式よりも高速です。またA/D・D/A変換に伴う誤差発生がないため、高精度な信号伝送が可能です。

2.形 状

 FFPSUは、ベース(形式:FFBS電源カード(形式:FFPS診断カード(形式:FFDGから構成されます。各カードのベースへの取付けは、特別な工具を必要とせず簡単に行えます。カードをベースの装着スロットに差し込み、ロックレバーを留めるだけのワンタッチ取付けです。

 ベースは、背面に2個のDINレールアダプタを装備しているため、DINレールにしっかりと固定されます。

 配線の接続には、脱着可能なユーロ端子台を採用しているため、配線の作業性が良好です。また、ユーロ端子台は脱落防止ねじが付いたタイプですから、配線した電線の重さや機器の振動などで端子プラグが脱落してしまう恐れはありません。

 各セグメント注1)にはモニタ端子を2箇所に設けてあります。機器の立ち上げやメンテナンスの際、電源出力電圧をテスタで測定したり、デジタル信号をオシロスコープで確認したりするのに役立ちます。また、ベースには、1箇所のスクリーングランド端子が設けてあります。すべての端子台のフィールドバス・ケーブル・シールド端子がこのスクリーングランド端子に内部で接続されています。ケーブルのシールドをキャビネットなどに接地する際にご使用いただくと便利です。

 電源カードは電源表示ランプ(緑色)とエラー表示ランプ(赤色)を備えていて、電源出力電圧を監視します。

 診断カードは2個の電源表示ランプ(緑色)と1個のエラー表示ランプ(赤色)を備えていて、2系統の供給電源電圧と電源カードの電源出力電圧の監視、過電流検出を行います。

図2 FFPSUの前面パネル図

3.仕 様

 FFPSU は、フィールドバス協会が制定したフィールドバス・パワーサプライに関する試験規格(FF-831)に準拠していて、フィールドバス協会から正式に認定を受けた製品です。フィールドバス協会は、電源の製品区分として、「Fieldbus Power Supply」、「Fieldbus Power Conditioner(Type 1)」、「Fieldbus Power Conditioner(Type 2)」の3種類を定義していますが、FFPSU は供給電源と電源出力が電気的に絶縁されたタイプであり「Fieldbus Power Supply」に当たります。ちなみに「Fieldbus Power Conditioner」は非絶縁の電源を意味します。

 今回ご紹介するFFPSU は、2重化された電源を2つのセグメントに供給します。対象になるセグメントの通信仕様は、通信速度 31.25 kbps の電圧伝送モード(H1)です。

 各セグメントにはホスト注2)端子、トランク注3)端子、モニタ端子が用意されています。電源カードが2重化されているため、予期しない電源カードの故障に対してフィールドバス電源供給の安全性を保証します。FFPSU への供給電源電圧は DC19.2~35Vと幅広い電圧範囲を確保していて、こちらも2重化に対応しています。

 フィールドバスに供給される電源出力電圧はDC27~31V、電流容量は350mAです。FOUNDATION Fieldbusでは、通信路の両端でターミネータ(終端器)が必ず必要になりますが、FFPSU としては、その一端を担うターミネータ内蔵タイプを選択することが可能です。

4.診断機能

 すでに指摘したとおり、電源カード診断カードには、出力電圧を監視し異常状態を知らせる表示ランプがあります。各表示ランプの仕様については、表1をご参照ください。

表1 表示ランプの仕様
電源カード
PWR 表示ランプ 出力電圧 約DC26 V 以上 緑色点灯
ERR 表示ランプ 出力電圧 約DC26 V 未満 赤色点滅
診断カード
PWR 表示ランプ 1 供給電源 1  約DC18.5 V 以上 約 DC35.8 V 以下時、緑色点灯
PWR 表示ランプ 2 供給電源 2  約DC18.5 V 以上 約 DC35.8 V 以下時、緑色点灯
ERR 表示ランプ ・電源カードの出力電圧が約 DC26 V 未満の場合 : 赤色点滅
・ベースの電源カード所定収納台数に対して、電源カードの実装が
 満たされていない場合 : 赤色点滅

 また診断カードは、エラー表示ランプ(赤色)のほかに警報リレーを備えていて、電源カードの異常に対する警報出力を発生できます。警報出力(通常動作時:クローズド)はエラー表示ランプと同期していて、出力電圧が約DC 26V未満になるとオープンになります。この警報出力はベースに配置された2個の警報出力端子から出力されます。警報出力端子を2つ設けてある理由は、2台以上の FFPSU で警報出力を共通に使用する場合(システム警報)の接続を容易にするためです(図3)。

 さらに、警報モニタ端子も別に用意されているため、システム警報を使用した場合に、それぞれの警報モニタ端子を監視することによって、どのユニットが異常状態なのかを特定することができます。

図3 警報出力接続例

お わ り に

 今回ご紹介した FFPSU は、2重化・2セグメントタイプですが、今後はコスト重視のシングル・4セグメントタイプの開発も計画中です。また、危険地域への設置の際に要求される防爆認定(zone2)の取得も視野に入れ、今後の機種拡充に取り組んでいきたいと考えています。どうぞご期待ください。

注1)セグメント:通信路と同じ特性インピーダンスで終端処理したフィールドバスの1区分。
注2)ホスト:ネットワーク上のフィールド機器を制御/監視するワークステーションとそのソフトウェア。
注3)トランク(幹線):H1フィールドバスネットワーク上の機器間のメイン通信路。


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