エムエスツデー 2006年8月号

製品別情報

絶縁形本質安全防爆関連機器 A3・UNITシリーズ
ディストリビュータ(形式:A3DYH)

(株)エム・システム技研 開発部

は じ め に

 エム・システム技研は、すでにいくつかの本質安全防爆注1)または耐圧防爆の認定を受けたHART通信注2)機能付き2線式温度変換器を提供して参りました。

 ただし、皆様ご存じのように、その中で本質安全防爆製品(本安機器)を危険地域に設置する場合は、爆発性危険物に点火する恐れがある過大電圧または過大電流が危険地域に供給されることを防ぐため、安全地域に設置した安全保持器(ツェナバリア、または絶縁形バリア)という本質安全防爆(本安)関連機器を接続しなければなりません。

 しかし、従来エム・システム技研自身はこのような本安関連機器を提供していなかったため、エム・システム技研の本安機器は、必ず他社の本安関連機器と組み合わせてご使用いただく必要がありました。設備の管理やメンテナンスなどの面から考えると、お客様にはいろいろご不便をおかけしていたことになります。

 また、本安関連機器の選定には、防爆知識が必要なため、不慣れなお客様が戸惑われることが多かったと思われます。

 以上のような事情から、本安関連機器に関するお問合せが、エム・システム技研のホットラインまで多数寄せられていました。

 お客様のご不便を解決し、エム・システム技研の防爆製品を容易にご使用いただけるよう、エム・システム技研は絶縁形バリアに相当する絶縁形本質安全防爆関連機器の開発に着手しました。

 今回ご紹介するHART通信対応ディストリビュータ(形式:A3DYH注3)は、絶縁形本質安全防爆関連機器「A3・UNITシリーズ」の第1号に当たります。

1.形 状

図1 A3DYHの外観と寸法

 A3DYHの外観と寸法は、エム・システム技研の薄形2線式変換器「B3・UNITシリーズ」製品と同じです(図1参照)。取付け構造はDINレール取付けです。コンパクトなサイズであり省スペース取付けが可能です。

 また、ユーロ端子を使用しているため、配線作業をスムーズに行うことができます。なお、危険側配線と安全側配線の取り違えを防止するため、本安防爆規格(EN50020、FM3610など)に従って危険側端子を青色として、安全側端子の緑色との識別を容易にしています。

 電源表示用LEDが搭載されているため、機器の通電状況が一目瞭然です。また、ゼロ調整およびスパン調整トリマをケース前面に配置しているため、操作が容易です。

2.機能と特長

 A3DYHは、HART通信に対応する2線式伝送器用電源としてだけではなく、DC4~20mA入力に対するアイソレータとしても使用できます。

 HART通信信号を双方向に絶縁して伝送できるため、本安認定のないHART機器であっても安全側回路には接続可能であり、HART対応本安機器の設定や監視が行えます。したがって高価なHHC(ハンドヘルドコミュニケータ)を用いなくても、身近にあるパソコンで設定や監視が行えます。

 絶縁形本質安全防爆関連機器であるため、ツェナバリアの場合と比較して接地不要という長所があります。

 さらに短絡保護回路が内蔵されているため、万が一2線式伝送器用電源端子 1 − 2 間が短絡しても回路が破損する心配がありません(図2参照)。

図2 A3DYHのブロック図

3.主な仕様

 (1)2線式伝送器用電源仕様
   電源電圧範囲:約DC22V(無負荷時)、DC14V以上(DC20mA負荷時)
   電流容量:DC22mA以下

 (2)入力信号:
  
DC4~20mA

 (3)出力信号:
  
DC4~20mA (負荷抵抗:550Ω以下)(ただし、HART通信を行う場合は230~550Ω)

 (4)供給電源:
   DC24V±10%、 約3W

 (5)性能(スパンに対する%で表示)
   基準精度:0.1%
   応答時間:0.1s以下(0→90%
   温度係数:±0.015%/℃

 (6)絶縁抵抗:
   100MΩ以上/DC500V(入力−出力−電源間)

 (7)耐電圧:
   入力−出力・電源−大地間: AC1500V/1分間
   出力−電源間:AC500V/1分間

4.エム・システム技研製品との組合せ

 表1に示すように、エム・システム技研は現在5機種のHART通信機能付き2線式温度変換器を提供中です。

 構造については、フィールドマウント形、ヘッドマウント形およびパネルマウント形(DINレール取付)という3種類の製品が揃っていますから、お客様は現場の取付け事情に応じて自由にご選定いただけます。

 A3DYHは、以上の5機種すべての製品と組み合わせて使用することができます。HART通信対応2線式温度変換器をご採用の場合には、同時に検討いただくようお願いします。

 また、他社製のHART通信機能付き2線式伝送器にも対応できますから、お気軽にエム・システム技研のホットラインまでお問い合わせください。

表1 HART通信に対応する2線式温度変換器

製品の名称と形式
防爆認定取得状況
外  観
フィールドマウント形
2 線式ユニバーサル温度変換器
(形式:B6U
FM 本質安全防爆
CENELEC 本質安全防爆(ATEX)
FM nonincendive
労検本質安全防爆
HART通信に対応する2線式温度変換器外観
フィールドマウント形
2 線式ユニバーサル温度変換器
(形式:B6U-B
FM 本質安全防爆
CENELEC 本質安全防爆(ATEX)
FM 耐圧防爆 *2)
CENELEC 耐圧防爆(ATEX)*2)
FM nonincendive
労検本質安全防爆
労検耐圧防爆 *2)
ヘッドマウント形
2 線式ユニバーサル温度変換器
(形式:27HU*1)
FM 本質安全防爆(申請中)
CENELEC 本質安全防爆(ATEX)
ヘッドマウント形
2 線式ユニバーサル温度変換器
(形式:27HU-B
FM 耐圧防爆 *2)
CENELEC 耐圧防爆(ATEX)(申請中)*2)
労検耐圧防爆 *2)
パネルマウント形(DINレール取付)
2 線式ユニバーサル温度変換器
(形式:B3HU
FM 本質安全防爆(申請準備中)
CENELEC 本質安全防爆(ATEX)
*1)27HUを本安認定の必要な屋外でご使用の場合は、27HU本安認定品を
    「屋外設置用ハウジング(形式:6BX-E)」に 収納してご使用ください。
*2)変換器が耐圧防爆の場合は、ディストリビュータの本安関連機器としての認定は不要です。

お わ り に

 以上、新製品であるA3・UNITシリーズ ディストリビュータ A3DYH についてご紹介しました。

 本製品を危険地域に設置する防爆製品と組み合わせて安全保持器としてご使用になる場合は、ぜひ一度エム・システム技研のホットラインまでお問い合わせください。

注1)電気機器の防爆知識については、『エムエスツデー』誌2000年34月号の「計装豆知識」をご参照ください。
注2)HART通信の概要については、『エムエスツデー』誌1998年1112月号の「計装豆知識」をご参照ください。
注3)本質安全防爆関連機器としての認定(FM、ATEXなど)は現在申請中です。


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