エムエスツデー 2005年8月号

遠隔監視のアプリケーション
No.10

Webロガーのアプリケーション
− PHS網を利用した浄水場設備の遠隔管理 −

 今月は、PHS網を利用するWebロガーのアプリケーション例として、浄水場設備の遠隔管理システムをご紹介します。

システム構成

 図1に、Webロガーを中心にしたシステムの構成図を示します。本システムの特長は、通信回線にPHS網を利用する点にあります。PHS網は、手軽に利用できる無線通信回線として我が国で広く普及しており、サービスエリアも一部の山間部や過疎地を除く、ほぼ全土をカバーしています。通信コストが比較的安価であり、最近は、とくにデータ通信を目的として利用される例が増えています。

 PHS網には一般公衆回線用のWebロガー(形式:TL2W2-SおよびTL2W2-R2)が対応し、PHSの見なし音声方式注1)によりアナログ回線と同等な通信を行います。PHSの端末には、エム・システム技研が発売している「PHSアクセスユニット(形式:PAU)」を使用します注2)。PAUは、固定設置を前提としたデータ通信専用のPHS端末であり、電波状況の変動を受けにくく、安定した通信状態が確保できます。

 他方、管理側のパソコンはモデム経由で一般電話回線に接続されていて、パソコン側からのダイヤルアップ接続によりPAUとの間で回線が形成されます。また、Webロガーが発信するEメールは、インターネット上のプロバイダを経由して配信されます。

図1 システム構成図

システムの機能

 現場に設置されたWebロガーは、汚泥レベル、薬液注入量(流量)、および薬液残量(薬液タンクレベル)の測定値をアナログ入力として収録しています。同様に、薬液残量の下限ステータスを接点信号入力として取り込んでいます。ここで、システムは設備の遠隔管理の手段として、次のような機能をもっています。

(1)異常通報
 汚泥レベルが上下限異常状態になった場合、もしくは薬液の残量が下限に達した場合に、Webロガーは自動的にEメールを発信し、現場で異常が発生したことを管理者に通報します。

(2)Web画面監視
 上記の異常通報を受けた管理者は、必要に応じてパソコンを現場のWebロガーに回線接続し、ブラウザ(インターネットエクスプローラ)から各種の標準画面を通して現場の状況を監視することができます。

(3)日報、月報、年報の作成
 Webロガーに収録された変数は、日報、月報、年報用データとして編集され、メモリ上に保存されています。管理者は、これらのデータを回線を通じてFTP注3)方式でパソコンに収集し、日報、月報、年報を作成することができます。

システムの特長

 PHS網は、無線区間を通して回線接続するために、電話回線の敷設が困難な設置条件にも対応が可能です。

 また、前述のように通信コスト(回線利用料)が比較的安価なことに加え、本システムでは必要時のみ回線を接続する方式であるため、ランニングコストを節約することができます。さらにPHS端末(PAU)には固定電話のような施設設置負担金(電話加入権)が不要であるために、イニシャルコストも低く抑えることができます。

注1)音声帯域の周波数を変調してデジタル 信号を送るアナログ通信方式。(→MODEM)
注2)PAUについては本誌2002年3月号、 2003年9月号「テレメータ用PHSアクセスユニット(形式:PAU)」をご参照ください。
注3)File Transfer Protocol

【(株)エム・システム技研 システム技術部】


ページトップへ戻る