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2003年11月号

レベル の お 話

第11回  液体密度計(その1)

松山技術コンサルタント事務所 所長 松 山 裕

1.液体密度・比重の定義と単位 1)、2)
 密度は、「単位体積当たりの質量」と定義されています。液体密度の単位には、通常g/cm3 またはkg/Lが使用されます。
 液体の密度は温度によって大きく変化します。そのため、たとえば密度(20℃)というように、密度測定時の温度条件を付記します。なお圧力については、大気圧の範囲であれば圧力の変化による液体密度の変化は無視できるので、通常は圧力条件の付記を省略します。
 液体の比重は、「液体の質量と、それと同体積の1気圧のもとでの4℃の純水の質量の比」と定義されています。液体の比重には単位はつけません。液体の温度がt ℃、水の温度がt 0℃の時の比重は、比重(tt 0℃)と表示します。比重(tt 0℃)は、t ℃の液体の密度とt 0℃の水の密度の比なので、おのおのの密度から比重を計算で求めることができます。なお、4℃の水の密度は0.99997g/cm3 なので、液体の比重(t /4℃)は、数字としては事実上密度(t ℃)と一致します。
 計量法には、比重に相当する単位として、重ボーメ度と日本酒度が規定されています。ただしこれらの単位は法定計量単位ではなく、省令単位です注)。重ボーメ度および日本酒度と4℃における比重dとの換算には、下記の式を使用します。
 重ボーメ度の場合は、比重が1では重ボーメ度は0であり、比重が1より増加すると重ボーメ度も増加します。日本酒度の場合は、比重が1のときは0ですが、比重が増加するとマイナスになります。日本酒にはエキス分が含まれていますが、これが多いと比重は1より大きくなり甘口になります。つまり日本酒度は、甘口・辛口の目安なのです。

2.密度計の種類と測定原理
 密度計の種類と測定原理の概要を、表1に示します。

3.差圧式密度計
 液体が入っている容器の底には、液位と液体の密度の積に比例した圧力がかかります。したがって、たとえばタンクの底に圧力計を設置し、このタンク内の液位を常に一定にしておく(たとえばいつもオーバーフローさせておく)と、圧力計の指示は液体の密度に比例しますので、これにより液体の密度を測定することができます。しかし実際にはタンク内の上下2点の圧力を測定し、その圧力差より液体密度を求めます(図1)。これが差圧式密度計の原理です。
 差圧式密度計においては、圧力伝送器を2個使用しその出力の差より液体密度を求めることも可能ですが、この場合圧力伝送器の誤差が拡大され密度測定の誤差が大きくなります。そのため、差圧伝送器1台を使用することが一般的です。
 差圧式密度計には、直接式、ダイアフラムシール式、エアパージ式などがあります。直接式は、図1の圧力P 1、圧力P 2を差圧伝送器の低圧側と高圧側にそれぞれ直接導く方法です。この場合は、タンクと差圧伝送器の間に導圧管が必要ですが、導圧管には詰まりや洩れの心配があります。また腐食性が強い液や固形物を析出しやすい液では、差圧伝送器内に直接液体を入れることは好ましくありません。そのためダイアフラムシール付き差圧伝送器を使用する方法があります。この構成を図2に示します。ダイアフラムシール付き差圧伝送器については、本連載第4回「圧力式レベル計」をご参照ください。また、液体中に少量の空気をパージして、液体の圧力P 1P 2を空気圧に変換して差圧伝送器に導入する方式もあります。この構成例を図3に示します。図3の定差圧槽は、密度目盛の下限をシフトさせるために使用します(たとえば密度目盛を1.1~1.2とする)。しかし、定差圧槽を使用せず、差圧伝送器のゼロサプレッションを利用する方法もあります。

4.HTGシステム3)
  HTGというのは、Hydrostatic Tank Gagingの略で、タンク内の液体の液位、液体の質量・密度を同時に測定するシステムです。高精度の圧力伝送器の出現により、比較的最近実用化されました。
 タンク内の液体の質量を知るには、液体の体積(液位)と密度を知る必要がありますが、この目的に液面計と密度計を別々に設置するのではなく、3台の圧力伝送器を設置してその出力を演算することにより液位・密度・質量を同時に求めることができます。図4にHTGシステムの構成図を示します。
 圧力伝送器P 1P 2の出力と抵抗温度計の出力よりタンク内の液体密度を求めます。次に圧力伝送器P 0P 2 の出力と密度より液位を求めます。ただしタンクの内圧がない場合は、圧力伝送器P 0は不要です。また圧力伝送器P 0P 2 の出力とタンクの断面積より、タンク内の液体質量を求めます。このシステムは、円筒型垂直設置のタンクばかりでなく、枕型のタンクや、球型タンクにも応用されています。 ■

◆ 参考文献 ◆
1)JIS K 0061(2001):化学製品の密度及び比重測定方法
2)松山 裕:実用工業分析、省エネルギーセンター(2002)
3)D.R.Gillum:Industrial pressure、level and density measurement, ISA(1995)

注)経済産業省令である計量単位規則で規 定されている単位を、省令単位といいます。法定計量単位ではなく、計量法上の制限はありません。

 

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