トップページ >レベルのお話 第7回 |
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2003年7月号 | |||||||||||
レベル の お 話
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松山技術コンサルタント事務所 所長 松 山 裕 |
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まず、超音波は物質がなければ伝播しませんが、マイクロ波は真空中でも伝播します。また経路上の気体の状態(温度・圧力・流速など)には、ほとんど影響されません。次に、マイクロ波の伝播速度は毎秒およそ30万kmなので、超音波のおよそ百万倍です。たとえば1m離れた測定面で反射されて帰ってくるまでの時間は、およそ6.7ナノ秒(6.7×10-9秒)です。このように極端に短い時間を精度よく測定するには特殊な手法が必要になります。 マイクロ波式レベル計は、1975年スウェーデンのSaab Tank Control 社により開発されました。この製品は、石油やLPG/LNGなどのタンクのレベル測定用でした。取引用を目的としていたので、たとえば測定範囲が40mでその全域に亘って精度が±1mmといった高機能を誇っていました。そのため測定装置は大きくかつ非常に高価でした。 1991年頃、プロセス用のマイクロ波式レベル計が、ドイツのKrohne、Endress+Hauser、Vegaの3社より相次いで発売されました。これらは、性能においてはSaab社の製品より劣りますが、プロセス用として必要かつ十分な機能をもち、小型・軽量かつ安価でした。その後他のメーカーも製品化に参加し、とくにここ4~5年は急速に発展しています。 マイクロ波式レベル計は、測定面に非接触で測定できるという特長以外に、(1)高温・高圧の環境下や真空中でも測定できる (2)マイクロ波の経路にある気体や蒸気の圧力・温度の影響をほとんど受けない (3)非金属の容器や、非金属の窓をもつ容器内のレベルを外部から測定できる といった長所があります。一方、(1)超音波式レベル計に比べて価格が高い (2)比誘電率が低い液体のレベルは測定しにくい という短所がありますが、価格については最近解消する方向にあります。 このレベル計の開発・改良の過程におけるキーポイントには、下記の3点があります。以下これらについて説明します。 (1)マイクロ波の時間測定方法 (2)マイクロ波の周波数の選択 (3)アンテナの進歩
FMCW式は、マイクロ波式レベル計に最初に採用された方法で、送信するマイクロ波の周波数を連続的かつ直線的に変化させる方法です(たとえば9.5GHz(ギガヘルツ)から10.5GHzへ)。原理図を図1に示します。測定面からの反射波の周波数と送受信器が反射波を受け取った時点での送信波の周波数を比較すると、両者の間の周波数の差は、マイクロ波を送信してから受信するまでの時間に比例します。したがって、両者の周波数の差から測定面までの距離を求めることができます。ただし反射波には測定面以外からの反射波(ノイズ信号)が含まれていることが多いので、送信波と反射波の差の信号をデジタル信号処理により各周波数成分に分けます。各成分の周波数は送受信器からの距離に比例し、各成分の振幅は反射の大きさを示します。通常は、振幅が大きい成分を採用し、これより距離すなわちレベルを求めます。ただしノイズ信号分が大きいときは、エコーノイズ除去ソフトを使用して除去します。この原理は、先月号で説明した超音波式レベル計の「にせの信号をカットする方法」とほぼ同じです。 パルスレーダ式は、マイクロ波のパルスを使うだけで原理的には超音波式レベル計と同じです。しかしマイクロ波は非常に速いので、これをゆっくりした波に変換してから測定します。図2に示すように、反射波のごく一部をサンプリングし、かつこのサンプリングする位置を一定時間(Δt )ずつシフトします。次にこのサンプリングした部分を合成した反射波を作ります。この合成波は、元の波と同じ波形でゆっくりした波になるので時間測定が容易になります。この方法を時間軸伸張といいます。 FMCW式は測定精度は高いのですが、消費電力が大きいことややや応答が遅いという欠点があります。一般の工業計器と同じように2線式(電源線と信号線を共用する方式)にするためには、パルスレーダ式が有利であることなどの理由から、最近はパルスレーダ式の製品が増加しています。
◆ 参考文献 ◆ 1)松山 裕:非接触レベル計の最近の動向、計測技術、Vol. 28、No. 10、 p. 1~4(2000) 注)比誘電率の例を挙げると、トルエンは2.39、ベンゼンは2.28、シリコン油は2.2で、反射率は4%前後です。 |
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