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2003年3月号

レベル の お 話

第3回  ディスプレーサ式レベル計

松山技術コンサルタント事務所 所長 松 山 裕

1.ディスプレーサ式レベル計の概要
 ディスプレーサは、これをレベルを測定する液体中に入れますが、フロートと異なり液面上に浮くわけではありません。液体中にある物体は、その物体が排除した液体の質量に相当する浮力を液体から受けます(アルキメデスの原理)。この浮力を利用して液位を知るのが、ディスプレーサ式レベル計なのです。なお、ディスプレーサ(Displacer)とは、“液体を排除するもの”という意味です。
 ディスプレーサ式レベル計の原理は、大きく浮力比例式とサーボバランス式に分けられます。

2.浮力比例式
 断面積が一定の細長い円筒をスプリングで液中に吊すことを考えます。円筒全体が液面より上にある場合は、スプリングは円筒の重さで伸び、円筒の重さとスプリングのバネ常数によって決まる位置に静止します。しかし、液面が上がってきて円筒が液体に部分的に浸ると、円筒は浮力を受けて軽くなり、スプリングの力により浮力分だけ上昇します。このとき円筒が受ける浮力は、(円筒の断面積)×(液中にある円筒の長さ)×(液体の密度)に比例しますので、円筒の位置より液位を知ることができます(図1参照)。これが浮力比例式レベル計の原理です。
 この原理におけるスプリングとしては、普通のコイルバネも使用されますが、工業用の製品ではトルクチューブが主として使用されています。トルクチューブ式レベル計の原理図を図2に示します。
 トルクチューブは細長いチューブで、その先端にレバーを取り付け、レバーの先端にディスプレーサを吊します。トルクチューブはねじれて、このとき生ずる力によってディスプレーサを支えます。液面の動きによってディスプレーサに加わる浮力が変わると、トルクチューブのねじれ角も変化します。トルクチューブは、液体が入っているタンク(ボイラーなど)の内圧をシールしながら、フロートの動きを出力軸の回転角として外部へ取り出します。出力軸には空気式や電子式の変換器を接続し、レベルに比例した出力を出します。また、調節計を接続して現場でレベル制御を行うこともできます。
 電子式の製品の例を図3に示します。ホール効果センサというのは、回転角を非接触で電圧に変換するセンサです。なお、浮力は液体の密度に比例するので、このレベル計を使用するときには、液体密度をレベル計にあらかじめ設定しておきます。またディスプレーサは、液体中にいつも部分的に浸っていることが必要です。そのため、ディスプレーサはレベルの測定範囲より若干長く作ります。
 このレベル計には、内筒式と外筒式があります。内筒式では、レベル計をタンクの上部(トップ)か側面(サイド)に取り付け、ディスプレーサを直接タンクに入れます。外筒式では、ディスプレーサを筒形の容器(外筒といいます)に入れ、この外筒をタンクの側面に取り付けます。取り付けの例を図4(a)、(b)に示します。
 このレベル計は、2種類の液の界面の位置を測定する目的にも使用できます。ただし、2種類の液の密度差が0.1g/cm3以上あることが必要です。

3.サーボバランス式
 浮力比例式では、ディスプレーサの動きは液面の動きそのままではありません。一方サーボバランス式では、ディスプレーサはモータの助けにより液面の動きに正確に追従します。そのため、サーボバランス式では小形で円盤状のディスプレーサが使用されます。
 サーボバランス式レベル計にはテープ式とワイヤ式とがあります。テープ式は前回説明したフロート・スプリングバランス式レベル計とほぼ同じです。ただしサーボバランス式では、測定テープの途中に張力検出器を取り付け、ここで検出したテープの張力が一定になるようにサーボモータでテープを引っ張ります。張力を一定にすることにより、ディスプレーサの吃水面を一定に保つ(すなわちディスプレーサに加わる浮力を一定にする)ことができます。
 一方ワイヤ式は、ディスプレーサを吊すのに細いワイヤを使用します。このとき、ワイヤを巻き上げるワイヤドラムの回転トルク(回転に要する力)を一定にするようにモータを制御します。この場合も結果としてワイヤの張力を一定にすることになります。ワイヤ式の構造例を図5に示します。
 図において、マグネットA・Bは隔壁を介してマグネットカップリングを形成しています。そのためワイヤドラムは、減速機構(ウォームホイールとウォームギア)を介して、ステッピングモータによって駆動されます。ただしウォームホイールと駆動軸の間にはスプリングが入っていて、駆動軸に作用するトルクはトルク検出器によって検出されます。検出されたトルク量は増幅され、マイクロプロセッサとステッピングモータによって一定値に制御されます。   ■


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