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2002年11月号

圧 力 の お 話

第5回  差圧伝送器とその応用

松山技術コンサルタント事務所 所長 松 山 裕

1.差圧伝送器の概要
 差圧伝送器は、2つの圧力を受けてこの両者の差を信号に変換し、外部へ伝送する製品で、工業計測制御システムにおいて非常に重要な位置を占めています。
 伝送信号としては、20~100kPaの統一空気圧信号と、DC4~20mAの統一電気信号の2種類がありますが、最近は空気圧式の製品はかなり少なくなっています。また、最近デジタル信号を採用したフィールドバス方式の製品も開発されていますが、まだ出荷量はごくわずかです。
 差圧伝送器の用途には、差圧式流量測定用、圧力測定用、液位測定用、液体密度測定用などがあります。そのうち差圧式流量測定用が最も多く、約半数を占めています。あとは順に約30%、約20%、ごくわずかといったところです。圧力測定用以外の製品は、それぞれ構造・機能が若干異なるので、以下にその概要を説明します。

2.差圧式流量測定用
 差圧式流量計の構成例を図1に示します。オリフィスの前後に発生する差圧は流量の自乗に比例しますので、差圧式流量計用の差圧伝送器は通常開平機能をもっており、流量に比例した出力を出せるようになっています。また気体流量を測定するときは、温度・圧力補正が必要ですが、この機能を内蔵した差圧伝送器もあります。前号で説明した歪ゲージをダイアフラム上に形成する製品では、差圧測定用の歪ゲージ以外に絶対圧測定用の歪ゲージを1チップ上に形成した製品があります。この製品に使用される複合センサの例を図2に示します。この複合センサは5mm角の半導体センサで、この上に差圧・静圧(絶対圧)、温度の各センサが形成されています。この温度センサは、半導体歪ゲージの温度特性を補償するものです。この複合センサとプロセス配管内に挿入した温度計の出力は、A/D変換後マイクロプロセッサによって処理され、温度・圧力補正した流量信号として外部へ伝送されます。この方式の差圧伝送器のソフトウェアブロック図の例を図3に示します。
 なお、差圧式流量計では導圧管が保守上のネックになっています。導圧管では詰まりや接続部分からの流体の洩れがよくあるからです。そのためダイアフラムシールをプロセス配管に取り付け、キャピラリーチューブを介して差圧伝送器に接続するケースが増えています。また3岐弁の設置は従来常識とされていましたが、静圧および片側過大圧に強く、かつゼロ点変動がほとんどない製品の登場(前月号参照)により、3岐弁を使用しないケースも増えています。

3.液位測定用
 液体が入っている容器において、容器の底面にかかる圧力は(液体のレベル)×(液体の密度)に比例します。したがって、この圧力を測定することによって液体のレベルを測定することができます。この容器に内圧がないときは圧力伝送器を、内圧があるときは差圧伝送器を使用します。導圧管を使用せず、ダイアフラムシール付きの差圧伝送器を使用する例も最近増えています。この構成例を図4に示します。
 液位測定の対象が容器ではなく、井戸、地下タンク、河川、水路などでは図4の構成は困難です。そのような対象に対しては、投げ込み式水位計が使用されます。これはケーブルの先に円筒形の差圧伝送器を取り付けたもので、これを水中に投入して水圧を測定します。ケーブルの内には導線のほかに、差圧センサの片側に大気圧を導入するためのチューブが内蔵されています。

4.液体密度測定用
 液体が入っている容器の液位が一定であれば、容器の底面にかかる圧力は液体の密度に比例します。したがって差圧伝送器を使用して液体の密度を測定することができます。これにはエアパージ式、水パージ式、ダイアフラムシール式、単管式などの方法があります1)が、ここではエアパージ式密度計の構成例を図5に示します。図の定差圧槽は、密度目盛の下限をシフトさせるために使用するものです(たとえば、密度目盛を1.1~1.3にするなど)。

5.充満式温度計
 これは差圧伝送器を使用する例ではありませんが、圧力計の応用例の一つとして挙げておきます。図6に構成を示します。一定の容積の容器内に、液体または気体を封入すると、その容器内の圧力は温度によって変化するので、この圧力を測定することにより温度を知ることができます。この温度計は圧力式温度計といわれることが多いのですが、JIS Z 8707では充満式温度計と呼んでいます。      ■

◆ 参考・引用文献 ◆
1)松山 裕:実用 工業分析、省エネル ギーセンター(2002)

注)差圧式流量計については、本誌の昨年8月  号に佐鳥氏の解説がありますので必要により参照してください。

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