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2002年4月号

流 量 の お 話

第10回  タービン流量計 その他

(有)計装プラザ 代表取締役 佐 鳥 聡 夫

1.風車のような流量計
 これまでいろいろな流量計をご紹介しましたが、簡単な風車や水車のような流量計が無いのか疑問を持たれた方もいるでしょう。風車や水車は流速に比例した速さで回りますから、流量計にならぬ筈がありません。
 どちらも流れで羽根車を回す点は同じですが、風車に似たものはタービン流量計(またはタービンメータ)、水車に似たものは羽根車式流量計として実用化されています。タービン流量計は主として高精度の流量計測に、羽根車式は簡便な流量監視に用いられています。

2.動作原理
 流体で羽根車を回す方式には、流れを羽根車の回転面と直角に当てる軸流式(図1)と、回転面と平行に当てる接線流式(図2)の2種類があります。羽根車の回転回数が体積流量に、回転速度が瞬時流量に比例します。
 接線流式は容積式に似ていますが、容積式は回転子と流路の壁との隙間を極力狭め、漏れを最小に抑えています。一方、羽根車式は漏れを問題にせず、口径が大きくなると図3に示すように、流れの一部で羽根車を回します。
 羽根車の動きを外部に取り出す機構には、機械式、光式、磁気式があります。機械式は、図4に示すように羽根車の動きを機械的伝達機構で外部に取り出し、積算計を駆動するもので、大型の水道メータなどに用いられています。
 光式は流体と流路が透明な場合に適用可能ですが、より一般的には、図5にその原理を示す磁気式が使われます。磁石、検出コイル、磁性材質の羽根車、非磁性材質のボディーから構成され、羽根が検出コイルの前を通るたびに、磁束変化により検出コイルにパルス電圧信号を発生させます。羽根車が非磁性の場合は、羽根の先端に小さな磁石を埋め込みます。

3.特徴
 タービン流量計と羽根車流量計には、その特徴に共通の部分と異なる部分があります。以下の解説で、とくに断りのない部分は両者共通の特徴です。
 それではまず長所について述べましょう。
 1)高精度
 タービン流量計は、設置条件を守り、保守管理を怠らなければ、指示値の0.5~0.2%という高い精度で測定ができます(羽根車式はフルスケールの2~5%程度)。
 ただし、同じ軸流式でも水道メータや灌漑用水流量計は、それほど高い精度を要求されないので、指示値の2%程度が一般です。
 2)低粘度流体が測れる
 容積式流量計では、流体の粘度が高くなると流量測定範囲が広がりましたが、タービン流量計はその反対で、粘度が低い方で流量測定範囲が大きくなります。
 3)小型軽量
 基本的な構成要素は羽根車と軸受けだけなので、全体が小型軽量になります。また圧力損失も比較的少なく、口径の割に大きな流量を流すことができます。同じく高精度計測が可能な容積式と比べると差がよく分かります。
 4)取付姿勢が自由
 全体が小型軽量であり、面積式のような原理上の制約がないため、水平、垂直、斜めと、どのような姿勢でも設置可能です。
 5)羽根の動きが見える
 一部の羽根車式流量計には、羽根の動きが見えるよう、透明窓をもつ製品があります。この場合には、たとえ信号系統が故障しても、現場で流れの有無を監視できます。
 以上長所の宣伝をしましたが、逆に次に挙げる諸問題点には注意してください。
 1)測れる流体の制約
 タービン流量計、羽根車式流量計の測定対象は主に液体です。石油類のように潤滑性のある液体が測定対象として最適です。気体用のタービン流量計は、羽根車を支える軸受の潤滑が難しいため、特殊な製品としてだけ存在します。蒸気やスラリーは測れません。
 2)軸受の磨耗
 この形式の最大の弱点は軸受の磨耗です。車のタイヤと同様、すり減っていつか寿命が尽きます。
 水道メータのように測定対象が決まっているものでは、あらかじめ軸受の寿命が予測できますが、一般的には流量計の使用条件、流体の潤滑性などいくつもの因子が関係し、一概に寿命は決められません。とくに高精度計測用の場合は、軸受の定期点検が必須です。
 3)高粘度液に不適
 粘度が高くなると羽根の周りに液がへばりつき、その実質的な輪郭が変わるため、特性が悪くなります。
 4)直管部が必要
 タービン流量計では、羽根車に当たる流速分布が偏ると計測誤差を生じます。また、流れが旋回していると、羽根に当たる角度が変わり、これも誤差の要因になります。
 ただし小口径の羽根車式では、流速分布の影響がないため直管部を必要としません。

4.応 用 分 野
 タービン流量計が得意とする用途は石油製品取引の分野です。とくに低粘度のLPGやガソリンで、特長を最大に発揮します。
 羽根車式は水道メータとして普及しているほか、安価なので流量監視用として広く使われています。軸受に寿命があることも、冷却水の監視用では、「故障時に信号が消えるので安全」と、むしろプラスに評価されています。

5.その他の流量計
 流量計の種類には、これまで紹介した各種流量計のほかにも、次に挙げるように、まだたくさんあります。
 ●ピトー管式
 ●層流式
 ●動圧板式
 ●堰式など
 さらに勉強なさりたい方は、専門ポータルサイト「計装プラザ」http://www.keisoplaza.info/で紹介している、参考図書をご覧ください。  ■


◆ 参考・引用文献 ◆
1)松山 裕:実用 流量測定、省エネルギーセンター(1995)

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