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2001年7月号

流 量 の お 話

第1回  流量計測の世界

(有)計装プラザ 代表取締役 佐 鳥 聡 夫

は じ め に
 皆さん流量計というと、どのようなものを思い浮かべられますか。水道メータやガスメータ、それにガソリンスタンドのガソリン計量機あたりでしょうか。温度計や分析計と同様、流量計も実に多種多様で、専門家でもすべてに精通することはできません。
 よってこの連載の狙いは、代表的な流量計の解説と、使用上の注意とします。その中で、信号変換器との関わりにも触れたいと思います。

1.流量計測システム
 流れを測るには、流量計本体のほかに、図1に示すような流量計を含むシステム全体を検討する必要があります(図には最大限の構成要素を示しました。流量計の種類によって、この中のいくつかが必要になります)。高価な流量計を買っても、必ずしも高精度の測定ができるわけではありません。表示器、積算器など関連するハードウェアだけではなく、用途別にどのような流量計を選ぶか、精度をどうやって保証するかなどのソフトウェア技術も重要なのです。
 今回は連載の最初なので、まず流量計測の基本的な事項をお話ししましょう。

2. 流量とは何でしょうか?
 一口に流量といってもいろいろあります。まずは瞬時流量と積算流量。瞬時流量とはある瞬間にどのくらいの量が流れているかを示すもので、流量の監視や調節に必要です。積算流量は流量計をどのくらい物質が通過したかを示す用語です。ちょろちょろ流そうと、どっと流そうと、結果に変わりはありません。水道メータやガスメータ、ガソリン計量機はすべて積算流量が重要で、瞬時流量の指示部は付いていません。複数の物質を一定割合で混ぜ合わせながら出荷するシステムがありますが、この場合は瞬時流量も、積算流量も、ともに重要です。
 次は体積流量と質量流量。多くの流量計は物質の占める体積を測る仕組みになっています。質量流量を知りたい場合は、温度計と圧力計、あるいは密度計の助けを借りて、体積流量から換算して求めるのが一般的です。近年、質量流量を直接測るタイプの流量計も登場し、特定の分野で普及しつつあります。
 また脈動流・間欠流などもあります。ダイヤフラムポンプやプランジャーポンプから出てくる流れは脈動しているので、流量計の種類によっては測定誤差を生じます。脈動の振幅が大きくなった極限は流れたり止まったりする間欠流です。この場合、瞬時流量は何の役にも立ちません。

3.測定対象について
 流量を知りたい対象は何でしょうか。まず一般的な対象は液体、気体、蒸気でしょう。ベルトコンベアで運ばれる石炭や鉱石も「流れ」ですから、固体流量を知りたいときもあります。
 また、液体と気体、気体と固体など複数の相が混在するニ相流あるいは多相流という測定対象もあります。多相流の測定には特別な工夫が必要で一般的な流量計では測定できません。ただし、液体の中に細かい固体粒子が存在するものはスラリーと称し、いくつかの種類の流量計で測定できます。
 また、測定対象が流れる流路の断面状態も図2に示すように様々です。一般的な丸パイプのほかに、角ダクトがありますし、天井のない開水路もあります。下水道は円形断面ですが、通常は非満水状態です。
 ほとんどの流量計は、丸パイプを完全に満たして流れる状態を想定しており、それ以外の状態では正常に動作しません。よってこのシリーズでは、測定対象を円形断面のパイプ内を完全に満たして流れる単一相の液体、気体、蒸気、スラリーに限定します。
 後に説明しますが、流量計を使いこなすには、測定対象の性質や流れの状態を正確に理解することが大変重要です。

4.流量計は、なぜ種類が多いのか?
 今後の予定(表1)に示したように、流量計の形式は代表的なものだけでも10近くあります。ではなぜこんなに種類が多いのでしょうか。それは測定対象である流体の性状や流量範囲、必要な精度などに応じ、なるべく経済的に測りたいからです。
 ここで参考のため、理想的な流量計とはどのようなものか、項目を挙げてみましょう。
 1)液体、気体、蒸気、スラリーなど、何でも測れる。
 2)高粘度、腐食性流体が扱える。
 3)流路に障害物がなく、圧力損失がない。
 4)磨耗部品や可動部品がなく、保守点検が不要。
 5)設置工事が簡単で、どのような姿勢でも使用できる。
 6)小型軽量、かつ流量計の前後に直管部が不要。
 7)測定精度が高い。
 8)TCO(購入から廃棄までの総費用)が低い。
 残念ながら、これらすべてを同時に満たす製品はありません。測定対象と用途に応じて、どの種類の流量計が最適か検討する必要があります。この作業は、実はかなりの経験と知識を必要とし、間違いとはいえないまでも最適ではない選択がよく見受けられます。

5.今後のスケジュール
 次回以降どのようなテーマについてお話しするか、およその目安を表1にまとめました。途中で考えが変わり、順番や内容を入れ替えるかもしれませんが、その節はご容赦ください。
 連載終了を待たず、今すぐ流量計を使いたい方は、センサとフィールド機器の情報センター「計装プラザ」http://www.keisoplaza.co.jp/をご利用ください。また流量計全般を勉強したい方には、前々回この連載を担当された松山裕氏の著書「実用流量測定」をお薦めします。表題のとおり実用的で平易な入門書です。出版元などの情報は計装プラザに掲示してあります。    ■
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