エムエスツデー 2007年4月号

フィールドロガー、テレメータ

テレメータD3シリーズ新製品
多重伝送 SIN-NET用 通信カード、ツイストペア用 10km対応通信カード、 光ファイバ用 通信カード(1)

(株)エム・システム技研 開発部

は じ め に

図1 D3-NS1の外観と寸法

 エム・システム技研では、信号点数が10点以下の小規模システムからアナログ信号や接点信号が数百点を超す大規模システムまで、様々なご要望にお応えできるよう、多種類のテレメータシリーズを開発し販売して参りました。

 ここにご紹介する3種類の通信カードのうち、「多重伝送 SIN-NET用 通信カード(形式:D3-NS1」はエム・システム技研製の分散形多重伝送 SIN-NETシステムを、「ツイストペア用 10km対応通信カード(形式:D3-LT5」はツイストペア線を、「光ファイバ用 通信カード(形式:D3-LP1」は光ファイバをそれぞれ使用することにより、D3シリーズのテレメータシステムを構築することが可能です。

 本稿では2回にわたり、これらD3シリーズの新製品について、それぞれの機能と特長をご紹介します。

1.多重伝送 SIN-NET用 通信カード:D3-NS1

 (1)多重伝送 SIN-NETとは?

 多重伝送 SIN-NETシステムとは、分散形(親局を必要としない)システムを構築できる、エム・システム技研独自の通信方式です。

 代表的な多重伝送機器としては、分散形多重伝送ユニット(形式:DLA1小形多重伝送ユニット(形式:22LA1があります。

 通信線としては、より対線(ツイストペアケーブル)を使用します。

 接続方法はマルチドロップ方式であり、それぞれの局間に渡り配線をとって通信ケーブルを各局へ接続します。

 マルチドロップ区間には最大16台のユニットを接続でき、合計伝送距離は最長1km 注)となっています(図2(a))。

 なお、伝送ラインの両端に3局ずつ機器が接続されている場合には、最長3kmまで 注)伝送できます(図2(b))。

図2 多重伝送システム構成例

  (2)多重伝送 SIN-NETの特長

 •PLCが不要

  多重伝送 SIN-NETシステムは、マスタ局をもたない分散形のシステムを構築できるため、PCやPLCなどのマスタ局は不要です。

 したがって、容易かつ安価にシステムを構築することが可能です。

 •通信設定はロータリスイッチのみ

 SIN-NET用機器の通信設定については、コンフィギュレータソフトなどを使う面倒な操作を必要としません。

 機器の前面パネル部分にある2つのロータリスイッチ(ステーション番号設定用)を、自局と相手局とで設定するだけで通信でき、アナログ信号やパルス信号、接点信号などのデータを入出力することが可能です。

 ステーション番号は通信中でも変更でき、電源の停止・再投入の必要はありません。したがって、システム立ち上げ時の労力は少なくて済みます。

 (3)D3-NS1の特長

 D3シリーズの多重伝送用 通信カード D3-NS1は、分散形多重伝送ユニット(形式:DLA1の置き換え機器として使用できます。

 システム構成内に DLA1D3シリーズを混在して使用できることが特長の一つです。

 たとえば、既設の DLA1を故障あるいは老朽化のため交換したい場合に、D3-NS1を実装したD3シリーズに簡単に置き換えることが可能です。

 また故障などの場合には、電源カード、通信カード、入出力カードをそれぞれの単位で交換できます。

 D3-NS1 DLA1と比較して、高さ、奥行きがコンパクトであるため盤内設置スペースを小さく抑えることができます。

 さらに、DLA1だけを使う多重伝送システムでは実現できなかった入力、出力信号をD3シリーズの豊富なI/Oカードを使用することによって実現できます。

 (4)D3-NS1を使用した基本構成(図3)

図3 D3-NS1を使用したD3シリーズの構成

 D3-NS1を使用したD3シリーズは、基本的にベース、電源カード、通信カード D3-NS1、および入出力カードから構成されています(なお、上位通信カードは使用できません)。

 供給電源回路を備えた D3-NS1も用意していますから、小規模なシステムも容易に実現できます。

 (5)RUN接点出力

 D3-NS1では、正常通信時にはRUN接点出力がON(短絡)、通信異常時にはOFF(開放)になります。したがって、RUN接点出力を監視することによって、通信状態を容易に確認できます。

 (6)DLA1との組合せ

 D3-NS1を実装したD3シリーズと分散形多重伝送ユニットDLA1とを組み合わせて使用した場合、D3シリーズの入力信号を指定した別のDLA1またはD3シリーズへ出力させることはもちろんのこと、1局のD3シリーズへの入力信号を複数台のD3シリーズまたはDLA1に同時に出力させることが可能です。したがって、この組み合わせによるシステムの構築にはすばらしい拡張性があります。

表1 D3シリーズのベース・電源カード・入出力カード

製 品 名 称
形 式
ベース ベース D3-BS
アドレス可変形ベース D3-BSW
電源カード 電源カード(出力電流:750mA) D3-PS1
電源カード(出力電流:2A) D3-PS3
アナログ入出力カード 直流電圧入力カード(絶縁4点) D3-SV4
直流電圧入力カード(絶縁8点) D3-SV8
直流電流入力カード(絶縁4点) D3-SS4
直流電流入力カード(絶縁8点) D3-SS8
直流電圧出力カード(絶縁4点) D3-YV4
直流電圧出力カード(絶縁8点) D3-YV8
直流電流出力カード(絶縁4点) D3-YS4
熱電対入力カード(絶縁4点) D3-TS4
熱電対入力カード(絶縁8点) D3-TS8
測温抵抗体入力カード(絶縁4点) D3-RS4
測温抵抗体入力カード(絶縁8点) D3-RS8
ディストリビュータ入力カード
(絶縁4点、2線式伝送器用電源付)
D3-DS4
ポテンショメータ入力カード(絶縁4点) D3-MS4
ポテンショメータ入力カード(絶縁8点) D3-MS8
CT入力カード(実効値演算形) D3-CT4
交流電圧入力カード D3-PT4
積算パルス入力カード(Pi16点) D3-PA16
パルス出力カード(Po16点、オープンコレクタ) D3-PC16A
接点入出力カード 接点入力カード(Di16点、入力電源内蔵) D3-DA16
接点入力カード(Di16点、外部入力電源) D3-DA16A
AC接点入力カード(Di16点) D3-DA16B
接点入力カード(Di32点) D3-DA32A
接点入力カード(Di64点) D3-DA64A
接点出力カード(Do16点、リレー) D3-DC16
接点出力カード(Do16点、オープンコレクタ) D3-DC16A
接点出力カード(Do16点、トライアック) D3-DC16B
接点出力カード(Do32点、オープンコレクタ) D3-DC32A
接点出力カード(Do64点、オープンコレクタ) D3-DC64A
BCD入出力カード BCD入力カード(BCD7桁) D3-BA32A
BCD出力カード(BCD7桁、オープンコレクタ) D3-BC32A

*  *  *

 今号では、多重伝送 SIN-NET用通信カード D3-NS1の機能と特長についてご紹介しました。

 次号では、ツイストペア用 10km対応通信カードD3-LT5)と光ファイバ用 通信カードD3-LP1)についてご紹介します。

注)小形多重伝送ユニット(形式:22LA1 の場合は除きます。


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