エムエスツデー 2007年1月号

PCレコーダ、MSRpro、チャートレス記録計システム

エム・システム技研本社の電力監視システム(1)
 − 省エネルギーの動向と電力監視システム −

(株)エム・システム技研 システム技術部

は じ め に

  地球温暖化の進行や異常気象の問題が各方面で取り沙汰される中、温室効果ガスの排出量削減を目的とする京都議定書が2005年2月に発効しました。

 これを踏まえて、各分野におけるエネルギー使用の合理化をより一層進めるため、エネルギー消費量の伸びが著しい運輸分野における対策を導入するとともに、工場・事業場および住宅・建築物分野における対策を強化することを目的として省エネ法が改正され、2006年4月に施行されました。

 一方、企業活動においては、「環境経営」を行っていることを積極的にアピールしたり、取引先から環境経営を要請されるようになってきています。最近では、環境の面だけでなく社会的な貢献の面も今後の企業経営にとって重要な要素であるとされ、本来の経済的な意味の「経営」に「環境」や「社会」を統合し、「企業の社会的責任(CSR)」などといわれることもあります。

 さらに企業経営においては、環境問題とともにその生産コストに占めるエネルギーコストの削減は重要な課題であり、省エネルギーへの取り組みは今後ますます重要になってくるものと考えられます。

1.地球温暖化防止と京都議定書

 ここ数年、世界各地で頻発している大雨、洪水、熱波、ハリケーン、森林火災さらには寒波、大雪などの異常気象による災害の多発に伴い、地球温暖化への関心が著しく高まっています。日本国内においても最低気温が25℃より下がらない「熱帯夜」の日数が、この100年間で5倍以上に増加した都市もあり、寝苦しい夏を過ごされている方も多いと思います。

 世界最大規模のスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」による気候変化の予測によれば、2100年には日本の夏の平均気温は現在より4.2℃上昇し、真夏日の日数も約70日増加することが示されています。さらに、大雨の頻度も増加すると予測されています。

 1997年12月、京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(地球温暖化防止京都会議COP3)では、先進国から排出される温室効果ガスの具体的な削減目標や、達成方法などを定めた「京都議定書」が議決されました。その後の協議で、その詳細についても合意が形成され、各国の批准手続きを経て、前述のとおり「京都議定書」は2005年2月16日に発効しました。

 京都議定書では、温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、SF6など)の排出量について法的拘束力のある数値目標(2008年から2012年の間に達成すべき1990年度比の削減率目標)が各国毎に設定されており、その数値はEU8%、アメリカ7%、日本6%などですが、排出絶対量が最大のアメリカは、この議定書自体を批准していません。

 地球温暖化の原因になる温室効果ガスを削減するためには、その発生要因と密接な関係のある電力消費量の削減、重油・ガスなど燃料の消費量の削減が必要です。

2.改正省エネ法の概要(工場・事業場 に対する規制区分の一本化など) 

図1 日本の部門別エネルギー消費の推移 http://www.eccj.or.jp/

 図1は日本の部門別エネルギー消費の推移を示します。

 日本のエネルギー消費については、工場など「産業部門」では石油危機以降、ほぼ横ばいですが、「民生部門」や物流を担う運送事業などの「運輸部門」では著しく増加しています。

 今回改正された省エネ法では、このような状況を踏まえ、「民生部門」「運輸部門」の分野での対策が強化されています。ちなみに、省エネ法とは「エネルギー使用の合理化に関する法律」であり、昭和54年に制定された後、何度か改正されています。

 この法律の中では、エネルギーの区分(電気、熱)毎にその年間の使用量に対応して第一種エネルギー管理指定工場、第二種エネルギー指定工場に分けられています。ここでは工場という名称を用いていますが、ビルや商業施設、学校、病院や下水処理場、清掃工場などの公共施設も含まれます。

 2006年4月1日に施行された改正省エネ法では、工場・事業場におけるこれまでの「熱」と「電気」の区分が廃止され、「熱電気一体」で管理されることになりました(図2)。

 このため、全国の規制対象工場・事業場の数が拡大し、経済産業省の試算では全国で約30%増加しています。

図2 熱電気一体管理 http://www.eccj.or.jp/ http://www.eccj.or.jp/

 今回の法改正では、このほかにも(1)新たに、輸送業者(貨物・旅客を輸送する業者)と荷主を省エネ法の対象とする輸送分野での省エネ対策の導入、(2)住宅・建築物における取り組みの強化、(3)消費者への省エネルギー情報の提供促進などが盛り込まれています。

 さて、熱と電気を一体で管理することにより、「管理指定工場」の認定方法が変わります。このためエネルギー管理体制の見直しが迫られ、大きなインパクトが生じています。従来以上にエネルギー管理の徹底が必要になり、そのため「どんなエネルギーをどこでどれだけ使っているのか」を定量的に把握していくことがより重要になってきます。こうした状況から、電力監視をはじめとするエネルギー監視の需要がますます増加するものと見込まれます。

3.省エネルギーの推進と管理サイクル

 エネルギー管理においては、図3に示すようなPDCAの管理サイクルを回します。

 まず、省エネ目標の設定、測定計画というPlanの段階があります。次に、実際にデータを取って使用状況を把握します。また、あらかじめ想定される項目については省エネ改善を実施します。これがDoの段階です。そして、測定したデータを系統別、設備別に分析し、時間ごとの使用傾向を分析します。Checkの段階です。さらに、その結果をもとに改善点を抽出し、具体的な省エネ対策を講じます。Actionの段階です。たとえば契約電力の見直しや、設備の稼動方法の変更などが挙げられます。そうして、このような管理サイクルを継続して繰り返していくわけです。

図3 PDCA管理サイクル http://www.eccj.or.jp/

お わ り に

 このような状況に対応して、エム・システム技研では省エネ活動を支援する電力監視システムをご提供しています。このシステムでは、電力デマンド監視や消費電力量の監視が行えます。エム・システム技研の主力製品であるPCレコーダソフトウェアMSRpro、電力監視用ソフトウェアMSRecoリモートI/O、それにクランプ式交流電流センサを組み合わせることによって、簡単容易に、そしてローコストでシステムを構築できます。

 また、2006年7月からは、このシステムをエム・システム技研の本社工場に設置し、実際に使用して省エネ活動に取り組んでいます。電力デマンド監視を行うことにより(図4)、契約電力の適正化を図るとともに、使用電力量の削減といった省エネ効果が現れてきています。

図4 電力デマンド監視画面

 なお、いつでも実際にご覧いただけるようエム・システム技研本社玄関において電力監視システムの展示を行っています。ぜひ一度ご見学いただきたいと思っています。

 次回からは、電力監視システムについて、自社工場への導入事例も交えてご紹介します。


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