エムエスツデー 2005年9月号

PCレコーダ、MSRpro、チャートレス記録計システム

工業用アナログ記録計を安価で容易にリプレースできる
入力カード選択形 チャートレス記録計(形式:73VR3000)

(株)エム・システム技研 開発部

は じ め に

 チャート(記録紙)を使用する従来の工業用アナログ記録計では、消耗品であるインクやチャートの常時在庫ならびに補充、交換などのメンテナンス作業が不可欠でした。しかし近年は、省力化やランニングコストの低減が切実な問題になり、安価で取り扱い容易な電子式デジタル記録計の出現が期待されていました。エム・システム技研では、このようなご要望にお応えして、現場設置形のチャートレス記録計本体(73ET・74ET・75ET、以下まとめて7xETと略称)の販売を2003年から開始し、ご好評をいただいています注1))。

 また、上記の記録計本体7xETの発売以来、ユーザー各位から多くのご意見、ご要望を承って参りました。標題の73VR3000は、チャートレス記録計システムの主要構成要素である本体ハードウェアであり、いただいた貴重なご意見、ご要望にお応えすることを目標に、7xETの主な機能を継承し、さらに新機能を追加して開発した入力カード選択形チャートレス記録計です。今回は、この73VR3000がもつ新しい機能を中心にご紹介します。主な仕様については表1をご覧ください。

表1 73VR3000の主な仕様

表示部仕様 表示デバイス 4.7型 STN液晶
表示色 256色
解像度 320×240ドット
ドットピッチ 0.1×0.3mm
バックライト 冷陰極管
インタフェース部 Ethernet IEEE802.3 および IEEE802.3u規格準拠
10BASE-T/100BASE-TX(自動切換)
IPアドレス 192.168.0.1(工場出荷時)
CFカードスロット 1スロット(Type/TypeⅡに対応)
動作電圧 5V、3.3Vカード対応
入出力部 R3シリーズ用I/Oカードを最大4枚まで装着可能(表2 参照)
入出力チャネル 最大64チャネル、演算チャネル最大64チャネル(表3 参照)
収録周期 20ミリ秒、100ミリ秒、0.5秒、1秒、2秒、5秒、10秒、1分、10分
防塵防滴仕様 IP65準拠
外形寸法 144(W)×144(H)×235.6(D)mm
質  量 約2.0kg(入出力カードを除く)

1.形 状

 7xETでは、取り付け時の機器の配置に柔軟性をもたせるため、入出力ユニットを分離する形状としましたが、逆に取り付け時の簡便性から入出力ユニット一体形を希望されるご意見も多くいただいていました。

 73VR3000では、入出力ユニット一体形の構成としながらも、様々な入力種別を目的に応じて効率良く経済的に選んでいただけるように、エム・システム技研のリモートI/O R3シリーズのI/Oカードを背面に最大4枚まで装着できる構成となっています(対応するI/Oカードについては表2をご参照ください)。

 なお、前面面積の狭小化によりパネル取付時のパネルカット寸法を従来の144mm角記録計に対応させています注2)。したがって、従来の小形記録計からのリプレースも容易に行えます。

表2 装着可能なI/Oカード(最大4枚まで)

入出力種別
カード形式
備  考
対応サンプリング周期
20ミリ秒
100ミリ秒
0.5秒
電圧入力 R3-SV4S 絶縁4点 直流電圧入力カード
R3-SV4AS 絶縁4点、mV入力 直流電圧入力カード
R3-SV8AS 絶縁8点、mV入力 直流電圧入力カード
×
R3-SV16NS 非絶縁16点 直流電圧入力カード
電流入力 R3-SS4S 絶縁4点 直流電流入力カード
R3-SS16NS 非絶縁16点 直流電流入力カード
×
熱電対入力 R3-TS4S 絶縁4点 熱電対入力カード
×
×
R3-TS8S 絶縁8点 熱電対入力カード
×
×
測温抵抗体入力 R3-RS4S 絶縁4点 測温抵抗体入力カード
×
×
R3-RS8S 絶縁8点 測温抵抗体入力カード
×
×
接点入力 R3-DA16S Di16点(入力電源内蔵)接点入力カード
接点出力 R3-DC16S Do16点(リレー)接点出力カード
×
×

*、各カードの仕様につきましては、各カード個別の仕様書をご覧ください。○:対応 ×:未対応

図1 73VR3000の外観と寸法

2.20ミリ秒、100ミリ秒 高速サンプリングの追加

表3 収録周期と最大有効チャネル数
項 目
対応サンプリング周期
20ミリ秒
100ミリ秒
0.5秒
アナログ入力
8
計16
計64
接点入出力
8
演算チャネル
16
16
64

 73VR3000では、従来の0.5秒サンプリングに加え、入力チャネル数に制限はありますが、新たに20ミリ秒、100ミリ秒の高速サンプリングモードを追加しました(表3参照)。もちろん0.5秒サンプリング時と同様、高速サンプリング時のデータについても、CFカードへの連続収録、接点入力を利用したトリガ入力に連動したデータ収録などが可能です。高速サンプリングモードが加わったことによって、より幅広いアプリケーションに対応できるようになりました。

3.前面CFカードスロットと活線挿抜機能

 7xETではCFカードスロットが機器背面にあり、CFカード交換時には機器取付パネルを開く必要がありましたが、73VR3000では防塵防滴仕様を継承しながらCFカードスロットを前面に配置することによって、前面からのカード挿抜を可能にしています。

 また従来はCFカード交換時にデータ収録を一時停止する必要がありましたが、73VR3000では本体内に十分な容量のバッファメモリをもたせることによって、データ収録を継続しながらCFカードを交換することが可能になっています。CFカードを抜き取った状態でのデータ収録可能時間は収録周期などの条件によって異なりますが、バッファメモリの残容量を表示することができるため、残容量が0になるまでにCFカードを挿入していただければ、データ収録を途切れなく行うことができます。

4.演算機能の追加

表4 演算の種類
分 類
演算の種類
四則演算 加減算、乗算、除算
論理演算 論理積、論理和、否定、排他的論理和
関  数 平方根
フィルタ 移動平均、一次遅れ

 測定データに対するリアルタイムな演算処理機能を追加しました。四則演算をはじめ、論理演算、関数、フィルタがご利用いただけます(表4参照)。なお、演算結果に対しての警報設定もできますから、よりきめ細かい警報設定が可能です。

 移動平均や一次遅れのフィルタ演算は、ノイズが重畳した信号の測定や変化量の大きい信号の変化傾向をモニタするのに有効です。

5.パスワード機能

 ご要望が多かったパスワード設定機能を追加しました。パスワード設定時には、トレンド画面、バーグラフ画面、オーバービュー画面からの操作が禁止され、不用意な設定変更、データ改ざんが防止されます。パスワード設定を行うことによって、オペレータを限定することが可能になります。

お わ り に

 73VR3000にはこのほかにも、データ収録中でもCFカード内データを上位パソコンへFTP転送する機能や、収録したデータを表示・解析する波形ビューワソフトの標準添付など、いろいろな新機能が追加されています。また、タッチパネルの操作性向上のために、メニューボタンを大きくするなどのきめ細かな見直しも忘れていません。

 以上、73VR3000の新機能について簡単に説明させていただきました。入出力ユニット一体形の73VR3000と分離形の7xETを用途・目的に対応して、お使い分けください。

注1)73ET・74ET・75ETについては本誌2005年7月号「データ監視ができる記録計へと機能が充実したチャートレス記録計本体(形式:73ET・74ET・75ET)」をご参照ください。
注2)DIN 43700パネルカット寸法 

□□137
+2 ミリ角
−0

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