エムエスツデー 2005年7月号

MsysNet、SCADALINX

屋外見通し3kmの長距離通信を実現する
MsysNetテレメータシステム

(株)エム・システム技研 システム技術部

は じ め に

図1 システム構成例 エム・システム技研では、従来よりSS(Spread Spectrum)無線を通信媒体として利用する無線テレメータシステムをご提供して参りました。

 このシステムの中心になるのが、無線局免許も操作員資格も不要な「特定小電力無線」注1)を使用する無線データ通信モデム(形式:RMDおよびRMD2)です。これらの製品に加え、このたび、「特定小電力無線」ではなく、簡単な申請手続きによる免許取得が可能な「小エリア無線」を使用するオムロン製の長距離ワイヤレスモデム(形式:WM51-SLP)注2)も利用できるようになりました(図1表1)。

 従来から販売しているRMDおよびRMD2については、送信出力の制限や現地の設置環境などの問題から、無線通信距離が3km程度までに制限されていました。

 したがって、それ以上の距離で通信する場合には、NTT専用回線など、有線の通信媒体を採用していました。WM51-SLPは、そのような長距離区間のデータ通信にも無線の適用を可能とします。

表1 オムロン製 長距離ワイヤレスモデム
(形式:WM51-SLP)の仕様

無線仕様
通信方式 単信方式(半二重)
使用周波数 348.5625~348.8000MHz
通信チャネル数 20
チャネル選択方式 固定/簡易MCA(コマンドによる設定)
通信速度 2400bps
通信構成 1:1
送信時間制限 なし
空中線電力 0.1W/1W切換え
伝送期待距離 郊 外:1km以上(0.1W時 0.5km以上)
屋外見通し:3km以上(0.1W時 2km以上)
(ただし、周囲の電波環境により短くなる場合があります)
データスクランブル オリジナル方式
誤り制御 CRCエラー検出+リトライ(3回)
適合規格 RCR STD-44 小エリア無線
有線仕様
上位接続端末 DTE
インタフェース RS-232-C準拠 (SMM/SMDM との接続に使用)
本体側/HR22-12WTRA-20PC : ヒロセ電機製
ケーブル側/HR22-12WTPA-20SC : ヒロセ電機製
(電源コネクタと共通)
通信方式 調歩同期式
通信速度 9600bps
フロー制御 RS/CS
入出力バッファ 512バイト
環境仕様
使用温度範囲 -20~+43°C(屋外直射日光下)
-20~+50°C(屋内)(ただし氷結しないこと)
使用湿度範囲 25~95%RH(ただし結露しないこと)
保存温度範囲 -35~+70°C
保存湿度範囲 25~95%RH(ただし結露しないこと)
保護構造 IEC規格 IP65
電源仕様
電源電圧 DC12~24V±10%
消費電流 12V 0.1W時 310mA
1W時 600mA
(受信待機時 55mA)
24V 0.1W時 140mA
1W時 260mA
(受信待機時 35mA)

1.WM51-SLPの特徴

 以下に、WM51-SLPの機能と特徴についてご説明します。

(1)エリアをカバーする長距離通信を実現
 畑、田畑などが周辺にある住宅地、高層建築物のない郊外の環境では1km以上、無線機同士のアンテナが見通せ、周辺に住宅を含む建造物がない環境では3km以上の長距離通信が期待できます。
(ただしアンテナ設置高さを3m以上とした場合の通信距離です。これらの数値は周囲環境により異ってきます)

(2)屋外設置可能な保護ケース入り
 本体はアンテナ一体形で、柱上設置など屋外設置に対応可能な防水構造の保護ケース入りです。したがって、防水用の特別な付帯工事は不要で、取付けが簡単です。

(3)ハイパワー1W
 送信出力については、0.1Wと1Wの選択切換えが可能です。長距離間では、1Wを選択することにより安定した通信が可能になります。通信距離に余裕がある場合には、0.1Wを採用することによって消費電力および他システムへの影響を低減できます。

(4)立ち上げ時に便利なツールを準備
 WM51-SLPを快適にお使いいただくために「WM51ユーティリティ」がご利用いただけます。
  • WM51-SLPは、パソコンを用いてパラメータ設定を行うことが可能です。
  • WM51-SLPが使用できる20チャネルすべての電界強度値を取得し、グラフに表示することにより、現場の電波状況の確認が可能です。
  • 相手局との接続状況と電界強度をモニタリングできます。  

 「WM51ユーティリティ」のソフトウェアは、オムロン(株)のホームページ注2)からダウンロードできます。
  なお「WM51 ユーティリティ」をインストールしたパソコンとWM51-SLPとを接続するためには、別途RS-232-Cストレートケーブルが必要になります。

(5)安定したデータ伝送を実現するMCA機能
 小エリア無線では、20チャネルの無線チャネルが割り当てられています。このうちの4チャネルから無線通信が可能なチャネルを自動的に選択してデータ通信を行うMCA(Multi-Channel Access)機能を搭載しています。この機能により、同一周波数を利用する他システムとの混信を避け、安定したデータ伝送を可能にし、信頼性を向上しています。

(6)使用周波数帯
 348MHz帯(348.5626~348.8000MHz)を使用します。2.4GHzを使用したRMD、429MHzを使用したRMD2に比べ、低い周波数を使用するため、電波の回り込み(回折)を利用して、障害物に強い安定した長距離通信が可能になります。

 なお前述のごとくWM51-SLPは、無線局免許が必要な「小エリア無線局」です。ご使用いただくためには、あらかじめ簡単な申請手続きにより無線局免許の取得が必要です注3)

2.無線テレメータの構成例

 図2にWM51-SLPを使用したシステムの構成例を示します。
 入出力ユニットとモデムインタフェース機能を併せたI/O一体形モデムインタフェース(形式:SMM)とWM51-SLPとを組み合わせることにより無線テレメータシステムを構築します。

 さらに、SMMで入出力点数が不足する場合には、リモート入出力ユニット(形式:SML)モデムインタフェース(形式:SMDM)を組み合わせることにより、最大512ビット(アナログ信号で最大32点)までのデータ通信が可能となります。

図2 システム構成例

3.無線データ通信が適した用途例

 無線テレメータは、通信線の敷設が不可能な場所でのデータ通信を可能にします。また、配線工事費の削減も大きなメリットです。その例として、以下のような用途を挙げることができます。
  • マンホールポンプの監視
  • 河川、国道をまたいでのデータ伝送
  • 山岳部でのデータ伝送
  • 設備機器・計装盤間の無線化
  • 構内の建屋間でのデータ通信
  • 仮設設備でのデータ伝送

お わ り に

 以上に述べたように、WM51-SLPを利用することによって、従来の特定小電力無線では実現不可能であった長距離間での無線通信が可能になりました。用途や環境に合わせて機種をご検討のうえ、最適なテレメータシステムをご計画ください。

 

注1)「特定小電力無線」については、本誌 2003年11月号の 「計装豆知識」をご参照ください。
注2)長距離ワイヤレスモデム(形式:WM51-SLP)の製造元はオムロン(株)です。 オムロンホームページ:http://www.fa.omron.co.jp
注3)免許申請について(2004年4月現在): WM51-SLPは小エリア無線のため、簡単な申請手続きによる無線局免許の取得が必要です。 無線局免許は国内全地域で有効ですが、5年毎の更新が必要です。 免許申請手数料:3,550円/台 電波利用料:600円/年・台 (免許更新の申請手数料:1,950円/台)
詳細についてはエム・システム技研ホットラインまでお問い合わせください。

MsysNetは、エム・システム技研の登録商標です。


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