エムエスツデー 2006年9月号

避雷器、操作部コンポーネント、電源、共通機器

わずか7mm幅!
薄形避雷器 MD7シリーズの開発

(株)エム・システム技研 開発部

は じ め に

 PLCやリモートI/Oに代表されるように、近年、計装盤内機器の高密度設置化には目を見張るものがあります。これに伴い、計装盤自体も従来より小形のもので済むようになっています。当然、各計測チャネルを保護する避雷器にも省スペース化が求められてきます。

 エム・システム技研は、省スペース化追求の一つとして、わずか7mm幅の電子機器専用避雷器エム・レスタ 薄形避雷器「MD7」シリーズを現在開発しています。

 今回は、この薄形避雷器 MD7シリーズの形状と様々な特長および製品ラインアップをご紹介します。

1.形 状

 図1MD7シリーズの外観、図2に外形寸法図を示します。わずか7mm幅ですから、たとえば16点を保護する場合にも、設置スペースは約110mmしかとりません。したがって、多点数保護における省スペース実現のために最適です。

 また、高さと奥行きについても、先に挙げたPLCやリモートI/Oと同程度か小さめに抑えていますから、これらの計装機器に並べて設置することが可能です。

図1 MD7シリーズの外観図2 MD7シリーズの外形寸法図

 機器前面には、製品形式を表示するとともに、一部の形式に限りますが、交換用ヒューズ(計装標準信号用避雷器 形式:MD7STオプション指定)やモニタランプ(小容量直流電源用避雷器 形式:MD7DP)が付きます。接続端子については、上面はサージ側、下面は保護側というように分離して、それぞれ4極のユーロ端子が並んでいます。また、側面には端子結線図を表示し、結線作業時に一目で判断できるようにしています。

 なお、背面には接地端子を兼ねた金属製のDINレールフックが付いています。

2.特 長 

 (1)高性能

 放電管と高耐量ゼナーダイオードを抵抗器を介して組み合わせた多段式保護回路を採用することによって、避雷器の重要性能である制限電圧を低く抑えています。ただし、制限電圧は、前記回路素子の選定や回路方式だけで決まるものではありません。素子の配置や素子どうしの配線の仕方によっても大きい違いが生じます。MD7シリーズでは、エム・システム技研が長年培ってきた経験をもとに、この辺りの注意も含めて最適な設計を施しています。

 さらに、放電耐量20kA(雷サージ波形8/20μsの場合)の超高耐量を実現しているため、通常想定されるサージ電流に対して、十分に余裕のある耐量といえます。

 (2)新JIS対応

 近年制定された低圧信号用避雷器のJIS規格(JISC5381-21:2004)に準拠し、C1、C2、D1のカテゴリに属します。ここで、カテゴリの説明をしますと、C1は平均的な誘導雷サージを300回、C2は電磁的遮蔽のない悪環境で発生する強力な誘導雷サージを10回、D1は低レベルの直撃雷サージを2回受けても、それぞれ避雷器が劣化することなく処理できる能力を要求しています。この規格では、ほかにも6つのカテゴリが用意されていますが、C1、C2、D1の3つを満たしていれば、あらゆる雷サージに対応でき、耐量と耐久性についてバランスがとれた避雷器であるといえます。

 (3)便利なDINレール取付、DINレール接地

 MD7シリーズは、省スペース化を図り、多点数設置を想定した避雷器です。多くの避雷器を並べて設置する際の取付けおよび配線作業量を軽減するため、DINレールにワンタッチで取付けられるとともに、DINレールを接地していただくことで、金属製DINレールフックを通じて避雷器の接地が一括して行えるようにしました。

 (4)勾配付ケーブル挿入口

 これも配線の作業性を高めるための工夫です。ケーブル挿入口をやや前面に傾けることで、図2に示すようにケーブルを前面側から挿入しやすいようにし、多点数設置したときにも、配線作業が容易に行えるように配慮しました。

 (5)シールド保護用端子付

 ケーブルのシールドを接続するための専用端子を設けました。形式コードによって、シールド−信号間、シールド−接地間の接続はフローティングとグランディングが選択できます。フローティングを選択した場合、放電管によってシールドは信号や接地と通常は絶縁状態にありますが、雷サージによってシールドの電位が上昇すると速やかに放電管が動作し、望ましくない箇所で放電が起きるのを防ぎます。グランディングを選択した場合、シールドは信号に対してゼナーダイオードを介して数V~数10Vの低電圧でつながった状態に、また接地に対して常時つながった状態になります。

 ケーブルのシールドは、設備や通信規約によって、両端接地あるいは一端接地(図3)、SG端子につなぐなど様々ですが、それぞれのケースに対応できるように配慮しました。

 表1にシールド接続の選定例を示します。

表1 シールド端子選定例

形式コード
シールド−信号間
シールド−接地間
選 定 例
FF
フローティング
フローティング
・信号−大地間が絶縁されている機器を保護する場合
・一端接地のためシールドを浮かす場合
FG
フローティング
グランディング
・信号−大地間が絶縁されている機器を保護する場合
・両端もしくは一端接地のためシールドを接地する場合
GF
グランディング
フローティング
・被保護機器のSG端子にシールドを接地する場合
(ただし、シールドは接地しない)
GG
グランディング
グランディング
・信号−大地間の絶縁が低い機器を保護する場合

 (6)断路スイッチ兼用ヒューズ

 2線式伝送器への給電のためディストリビュータを用いる一般的なDC4~20mAループの場合には、この断路スイッチ兼用ヒューズは必要ありませんが、1本の電源バスに多数の2線式伝送器をぶら下げるアプリケーションの場合には有効です。被保護機器が何らかの原因によって短絡故障を起こした場合に、ヒューズによって故障した伝送器を電源バスから切り離し、システムが全滅するのを防ぎます。また、活線状態で保守作業を行う必要がある場合には、このヒューズを引き出すことによって、被保護機器を電源バスから切り離せるため、作業ミスによる短絡事故を予防することができます(図3)。

図3 MD7シリーズの機能説明と配線要領図
図3 MD7シリーズの機能説明と配線要領図[拡大図

3.製品ラインアップ

 表2に製品ラインアップを示します。

 今後の計画ではありますが、3線式伝送器用、2chパルス信号用、またセルシン、ロードセルなどのセンサからの信号用、さらに大変ご好評をいただいている寿命モニタ機能付などの機種も順次追加していく予定です。

表2 MD7シリーズの製品ラインアップ

形 式
用 途
MD7ST 計装標準信号(DC4~20mA)用
MD7TC 熱電対用
MD7RB 測温抵抗体用
MD7PM ポテンショメータ用
MD74R RS-422/RS-485用
MD7PA PROFIBUS-PA用
MD7DP 小容量直流電源用

お わ り に

 以上、MD7シリーズについて手短にご紹介しました。

 従来の避雷器では必要な設置スペースが確保できないというお悩みをおもちの際は、ぜひMD7シリーズをご検討いただくようお願いします。

エム・レスタは、エム・システム技研の登録商標です。


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