エムエスツデー 2005年10月号

遠隔監視のアプリケーション
No.12

Webロガーのアプリケーション
− 水門の遠隔監視・制御 −

 今月は、Webロガー注)のアプリケーション例として水門施設の遠隔監視・制御システムをご紹介します。
 河川の多い我が国には、「堰(せき)」や「水門・樋門(ひもん)」と呼ばれる水門施設が多く存在します。「堰」は、河川の流れを制御するために河川を横断して設けられる設備であり、常時は全閉の位置で河川の水を貯水し、上下水道用水、農業用水、工業用水、発電などに利用します。堤防の機能はなく、洪水時には全開となって放水します。「水門・樋門」は河川や水路を横断して設けられる制水施設で、堤防の機能をもっています。堰と違って常時は全開、洪水時には全閉となります。水門と樋門は機能的には同等ですが、構造上の違いによって区別されています。

システム概要

 水門施設の多くは、通常時は無人ですが、開・閉操作時には人手を要するため、その操作を自動化する制御システムの導入が有効です。本例は、水門の遠隔監視、制御にWebロガー(形式:TL2W-ES)を適用してシステムを構成しています(図1参照)。本システムの基本的な動作を下記します。

(1)水門前後の水位を測定し、その値を通信回線を通じて遠隔監視、記録します。
(2)水位が異常になった場合、現場で自動的に警報を発生します(警報表示灯の明滅など)。
(3)水位異常発生から一定時間が経過すると、水門を自動的に全開、もしくは全閉とします(前述のように、堰と水門・樋門の場合では動きが反対になります)。
(4)水位が異常状態を脱すると、水門を自動的に全閉、もしくは全開とし、一定時間経過後、警報を停止します。

図1 システム構成図

Webロガーの機能

 本システムの中心であるWebロガーは、次のような機能をもっています。

 (1)水位データの収録:水門前後の水位の測定値(アナログ値)を入力とし、1分周期もしくは10秒周期のトレンドデータとして収録します(7日間のデータが蓄積できます)。

 (2)シーケンス制御:水位に対応した警報の発生と水門の操作(電動機の起動、停止)はWebロガーに標準装備されているシーケンス制御機能が自動的に実行します。

 (3)Web監視:上記(1)の収録データやに関わる警報など各種イベントの発生履歴は、遠隔地に設置したPCのブラウザ画面から通信回線を経由してリアルタイムに監視できます。水位の瞬時値表示やトレンドグラフ表示、警報履歴画面、ユーザー定義のグラフィック画面など、各種の監視用画面が用意されています。なお、本例の通信回線にはADSLによるインターネット常時接続方式を採用しています。

 (4)異常通報:水位の異常時や警報の発生時およびその解除時、水門の操作時など、現場で起きた事象のすべてはEメールで通報できます。

Webロガーの特長 

 • Web監視方式であるため、インターネットが接続できる場所であれば、どこからでもいつでも水門の監視ができます。たとえば、豪雨で深夜に洪水が発生する可能性がある状況下において、担当者が自宅のパソコンで現場の状態をリアルタイムに監視することも可能です。また、何らかの異常が発生した場合にはEメールでいち速く通報するため、迅速に対応できます。

 • Webロガーは、オールインワン構造であり、シーケンス制御機能も標準装備されているため、システムの初期コストを安価に抑えることができます。また、インターネット常時接続契約など最新の通信インフラを利用することによって、ランニングコストも大幅に抑えることが可能です。

注)Webロガーとは、エム・システム技研の現場設置形Web対応データロガーのことです。

【(株)エム・システム技研 システム技術部】


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