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エムエスツデー 2005年4月号

計装 今昔ものがたり

第4回 差圧伝送器 力平衡からオープンループへ

早稲田大学 理工学総合研究センター 客員研究員 深町一彦

石油産業と計装機器

 昭和24年、日本は占領軍から製油所再開の許可がおり、石油メジャーの資本が一挙に流入し、多くの石油会社で精製設備の建設が活発化し始めました。昭和28年の6月までの外資投資額のうちの53%は石油関連だったそうです。もともと太平洋戦争そのものが、南方石油資源の支配をめぐる争いでもあったことを想い合わせると感慨深いものがあります。

米国から新しい精製設備の技術と一緒に計装機器も輸入され、全空気式の高度に自動化された計装システムが入ってきました。それに刺激を受けて、国産の小型計装機器が世に出始めたのが昭和30年前後です。

力平衡式差圧伝送器

 図1に示した製品は、FOXBORO社と技術提携して横河電機が国産したD/Pセルです。FOXBORO社の製品は品揃えのバランスもよく、デザインも洗練されていました。その製品のひとつ、差圧伝送器は「D/Pセル」という商品名が一般名詞になるほど一世を風靡しました。2枚の金属ダイアフラムの両側に導かれた差圧は、ノズルフラッパというゲインの高い増幅機構のおかげで出力空気圧と力平衡するという原理で、これぞフィードバック原理そのものが精度を保証しているすばらしい構造と思われました。各社それぞれに製品を出していました。

図1 横河電機ーFOXBORO社 D/Pセル

図2 純国産 差圧伝送器 DR46

 図2は珍しい写真で、昭和20年代終わり頃から30年にかけて、北辰電機が独力で開発した全空気式計装機器シリーズのうちの差圧伝送器です。果敢な努力でシリーズを完成しましたが、差圧伝送器には四苦八苦でした。アプリケーションの状態によって大振幅のハンチングを生じる、ゼロ点は変動する、静圧誤差、温度変動などなど、計測器トラブルの総合商社で、製品が理論どおりに作動するためには、総合的な“ものづくり技術”による下支えが不可欠であるという、極めて当然のことを改めて認識したものでした。結局程なく、BARTON社と技術提携して変位平衡型の差圧伝送器を生産することになりました。非常に安定の良い製品でしたが、力平衡型に比べてコスト高は避けられませんでした。この産業も戦後の歴史の例外ではなく、米国の企業との技術提携が主流の時代を迎えました。同じ敗戦国でもドイツ製品は健在でしたが、石油精製技術と一緒に流入した米国製品が数の上で主導権を握っていました。

電子式計装機器

 電子式制御システムの時代の話題は、なんといっても多様な伝送信号の競争ですが、すでにいろいろな場で語られているので省略します。各社が信号レベルを選んだ背景としては、遠隔伝送能力や安全面、耐ノイズ性など多くのことを考慮して決めたのだろうと思います。フィールド機器にそれまでの力平衡の機構を流用しようとするとフィードバックベローズに替えて、コイルに電流を流して力を得る必要があり、最低限ある程度の電流をフィードバックコイルに流さねばならないという別の要因がありました。操作端の電空変換器/電空ポジショナを作動させるためにも、同様の電流レベルを必要としました。力平衡を採用していないメーカーもありました。また低い信号レベルや電圧信号、交流信号など様々ありましたが、最後は現在の形になりました。

 この時代は、まさに“新しき時代来たる”といった感じで、非常に多くのメーカーが各社創意を凝らして製品を世に問うた時代でした。それぞれのプラントに種々の製品が取り付けられていました。日本の技術が米国を凌駕する兆しを見せ始めたのもこの頃です。

 それぞれに優れた製品も少なくなかったのですが、やがて総合的な技術体力のある企業の製品が残るようになり、天の時、地の利に恵まれなかった製品はやがて姿を消してゆきました。

 夏草や つわものどもが夢のあと、こう書いてしまえば、ただの負け犬ストーリー、次元の低い話になってしまいますが、文化とは百花繚乱の妍を競ってこそ次の時代への遺産となりうるもの、栄枯盛衰の中でそれぞれの技術の遺伝子は営々と引き継がれて、今日の繁栄の歴史的担い手として、ひとしく戴冠を許される旗手たちと思っています。

オープンループ式差圧伝送器

図3 オープンループ式差圧伝送器原理図

 やがて、米国のROSEMOUNT社(今日のEMERSON社)から始まる、オープンループタイプと呼ばれた差圧伝送器が登場します。差圧で僅かに撓むダイアフラムの変位を、差動キャパシタンスが検出して電気変換する構造です。機器の中でフィードバックループがクローズしていないのでオープンループと呼ばれました。不確定な作動を補完するのがフィードバックの持ち味で、加工技術の向上に伴い入力に正確に対応する動きを保証されれば、いたずらにフィードバックにこだわる必要もない道理です。機械系だけでなく、僅かな変位を高い再現性と分解能で電気変換するエレクトロニクス技術がこの方式の前提でもありました。

 フィードバック・メカニズムの呪縛から逃れ、小型で機械的な構造が格段に堅牢になったこの方式は、たちまちのうちに力平衡式の差圧伝送器を置き換えてしまいました。キャパシタンスだけでなく、差圧を電気変換する様々な素子の優劣が競われています。機械構造的な安定については数年間の耐久性を保証し、従来工業計器の常識と思われてきた日常的なキャリブレーションは不要ですとメーカーはアナウンスしています。3ヶ所弁を省いて、オリフィスフランジに直結させることを薦めるところもあります。反面、高額な開発投資と生産設備を必要とするために、量産量販体制を指向せねばならない製品になり、それまでのどちらかといえば手工業的な生産方式を一変させ、工業計器メーカーのあり方も大きく変わらざるを得なくなりました。2002年の統計で、世界における差圧伝送器類の総生産量は年間140万台といわれ、そのシェアを巡って熾烈な競争が展開されています。使う側にとっても、日常的に気軽に採用したり交換したりする製品になり、測定する箇所も増え、プラントから得る情報量が格段に増加してきました。

次の時代へ

 機械的なキャリブレーションが不要になったため、高機能の電子回路が総ての調整機能を受け持ち、遠隔調整も可能になり、マイクロプロセッサを搭載することで、今まで中央の制御装置が受け持っていた各種の制御機能もフィールド機器に内蔵できるようになってきました。さらにはプラントの操業だけでなく、メンテナンスのための情報など、扱う情報の幅も大きく広がり、計装の概念を大きく変える動機のひとつにもなって、次世代への論議を提供しています。

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