エム・システム技研がお送りする計装情報満載のWebマガジン

エム・システム技研Homepage

エムエスツデー

ユーザー登録 お問合せ 資料請求 個人情報保護方針 サイトマップ

トップページ(最新号)バックナンバーカテゴリ別情報製品別情報インフォメーション

エムエスツデー 2005年3月号

計装 今昔ものがたり

第3回 流れに始まる

早稲田大学 理工学総合研究センター 客員研究員 深町一彦

 前回までは、主として計装全体の流れを回顧してきましたが、今回から、いろいろな断片を拾って計装の歩みを振り返ってみます。

流れを測る

 「流れを制するもの、国を制す」治山治水こそが、地形の凹凸の激しい列島に生きるわが国にとって世を統べる基本といわれていました。行き過ぎもあって、列島改造とか土建国家とまでいわれることもありますが、昔から比叡山の坊主と賀茂川の流れは為政者の大きな関心事でした。

 大量消費を前提とした近代工業は、物質の移動もエネルギーの移動も、流れを利用し、流れを制することによって発達してきました。エネルギー源の主体が石炭から石油に移行してきたのも「流れ」という利便性が故でした。プロセス産業は、流体の特徴をフルに利用した産業ともいえます。プラントの運転は、その中を通り抜ける原料から製品への物質の流れと、物質を加熱あるいは冷却する熱エネルギーの出入りをコントロールすることから始まります。そのためにも、流量計はプラントの収支を管理する要(かなめ)の機器といえます。今回は、流量計、その中でもとくに数多く使われている差圧式流量計を取り上げて、その原点を振り返ってみることにします。

差圧式流量計

 流量の計測にもいろいろな手法があり、それぞれ特徴がありますが、主役はなんといっても差圧式流量計でしょう。オリフィスに代表される絞り機構を配管中に入れて、その前後の圧力差を測れば、その圧力差は流量の二乗に比例するという原理を利用しています。差圧測定は機器メーカーにとって花形でもあり、そのヘゲモニーを手中にすることが、計装機器産業界での位置づけでもありました。

図1 差圧発信器の原理図

 図1は、戦後わが国のプロセス産業を先駆した差圧発信器の原理図です。水銀のU字管マノメータの原理です。写真はその代表的な製品のひとつで、戦前から米国のBROWN社と販売契約を結んでいた当時の山武商会が、やがて国産を始めたもので、戦後の産業復興時代の工業計器ベストセラーのひとつでした。「17284型」と、型式番号が普通名詞になるくらいでした。黒塗りで、ずらりと並ぶとなかなかの威容でした。もちろん当時の大手工業計器メーカーはみなそれぞれ同様の差圧発信器を製作していました(浅学にして国産1号は誰の手によって作られたかは知りません。戦前あるいは戦時中ではないかと想像しています)。しかし、17284型は私の知る限り戦後もっとも普及した機種のひとつでした。

図2 差圧伝送器

 人の腰くらいまでの高さがあり、重量は30kg以上あり、床にアンカーボルトで固定されていました(ちなみに最近の差圧伝送器は片手に乗る大きさで、重量は3kgを下回るものもあります−図2)。水銀も数kgも注入せねばなりませんでした。扱う者にとっては、当然健康に良いはずはなかったのですが、当時はあまり気にしていませんでした。停止弁と均等弁の操作を誤ると、流体の静圧が過渡的に片側にかかって、水銀があっという間にどこかに(当然配管中に)ふっ飛んでいってしまいます。当時でも水銀は高価なもので、深夜、密かに盗み出す奴がいて、朝、出勤すると計器の指示が振り切れていて、発信器のまわりの床にはこぼれた水銀の粒がころころと光っている、といったことは、当時の関係者はほとんどみな経験していることでした。

 水銀はトリチェリーの真空の実験以来広く重用され、やがて有害物質のひとつとして肩身の狭い思いをしていますが、しかし今日でも各社の検定室では、圧力測定の重要な基準器のひとつとして大事に使われています。

 いろいろな測定レンジに対して、水銀の液面検出用のフロートのストロークを一定に保つために、低圧室の内径を変更してレンジ変更をしました。この内径を特殊な形状に加工して、出力が流量に比例するようにした開平機能を考えた人もいました。デジタル演算が普及するまでは、開平は差圧式流量測定の一大課題でした。ところで突然ですが、貴方は電卓を使わずに筆算で開平演算ができますか?  差圧発信器は、流量測定に限らず、その原理を生かしていろいろなプロセス値の検出に使われました。たとえば、圧力槽の上下の圧力差を測れば、中の液体のレベルを測定することもできるので、液位計として広く使われています。

直動式差圧指示計

 上述の差圧発信器は、差動トランスを100V電源で駆動し、受信側の同種の差動コイルとの間にインダクタンスブリッジと呼ばれる伝送方式をとっていましたが、フロートの動きを直接指示したものもありました。図3に示した製品はその例で、富士電機の昔のカタログから拝借しました。目盛りが均等に刻まれているのは、差圧を利用して液位を指示している例でしょう。高圧タンク内の液体レベルなど、重要なプロセス値はできるだけシンプルに直接監視しようというもので、監視パネルの中央に取り付けられていたものです。

図3 浮子形差圧指示計

計装工事

 大きな計装機器を据え付けるので、計装工事もなかなか大変でした。据え付け場所も限定されるため、差圧の取り出し口から発信器までかなり長い距離を圧力導管の配管作業が必要でした。配管の途中にドレンなどの液溜まりや気泡が溜まってしまわないように、配管を巧みに曲げて勾配をつけなければなりませんでした。上に述べた直動式指示計では、パネル裏まで高圧の導管が来ていました。先号にも述べた空気圧伝送用配管の時代まで、計装工事は、種々の配管工事の比率が高いものでした。今日のように、多量の配線を駆使して大量の情報を処理している時代とは一味違った、電気工事屋でもなく、配管工事屋でもないといった、かなり多彩な技能を求められる特殊な作業のジャンルでした。

おわりに

 流量計ばかりが工業計器でもなく、また差圧式だけが流量測定ではないのですが、オートメーション機器産業の出発点として、どうしてもこの製品のことをお話して、プロセス計装の原点を知っていただきたかったので、今回は初期の差圧発信器に絞って書きました。機器の解説を目的としてはいないので、すべての事柄を網羅しているわけではありません。昔話の断片として読み流してください。

エムエスツデー

ユーザー登録 お問合 資料請求 個人情報保護方針 サイトマップ

エム・システム技研