エムエスツデー 2007年2月号

ITビジネスから見た海外事情

第2回 海外旅行にインターネットを駆使

酒井ITビジネス研究所 代表 酒 井 寿 紀

ウェブを使って海外旅行

 海外に出かける際は、情報収集やホテルなどの予約に、できるだけウェブを使うようにしています。その方が、今や、ガイドブックで調べたり旅行代理店に出かけたりするより便利だからです。また、海外のウェブの状況を調べるためでもあります。

 私の体験から、海外のウェブの状況を紹介しましょう。

 飛行機の予約がインターネットでできるのは、今や常識でしょう。予約する人に便利なように、海外の航空会社のウェブサイトは、以前からトップのページ(本来の意味でのホームページ)で予約できるようになっていました。今では日本の航空会社のサイトも同様になっています。

 イタリアやスペインを旅行したとき鉄道を利用しましたが、これらの国の国鉄の時刻表もインターネットに掲載されています。食堂、電話、新聞などのサービスの有無まで出ています。また、旅行会社の資料に出ていなかった臨時列車も分り、時間的に都合がよかったので、それを利用したこともあります。以前は、ヨーロッパを旅行するときは、全ヨーロッパの鉄道の時刻表が掲載してあるトマス・クックの時刻表を買ったものですが、もうその必要はなくなりました。

 レンタカーの予約もインターネットでできます。前に、8人でフロリダを旅行したとき、2台のレンタカーを借りました。そのとき、クルマのトランクに4人分の大型スーツケースを積める必要がありましたが、アメリカのレンタカー会社のウェブサイトを調べると、どういうサイズのスーツケースを何個積めるかが詳しく記載してありました。これは、レンタカーを借りる人にとっては、エンジンの性能などよりはるかに重要な情報なので、さすがだと感心しました。

 また、レンタカーを、借りた空港とは別の空港で乗り捨てる人にとって重要な情報に、レンタカーの返却場所があります。マイアミの空港でレンタカーを返すとき、行けばすぐ分るだろうと、よく調べないで行ったところ、空港の広大なエリアの中のどこか分らず、散々苦労しました。あとで、レンタカー会社のサイトを見たところ、各方面からのアクセス方法が詳細に記されていて、事前に調べなかったことを反省しました。

 ホテルの情報は、米国の旅行サイトが詳しいようです。プールの有無、ペット同伴の可否、インターネットの接続手段などまで記載されています。日本の旅行会社のサイトではとてもここまで分りません。ただし、米国の旅行サイトで予約する方が安いかどうかは別問題です。スペインを旅行した際は、料金は日本の旅行会社の方が安かったため、米国のサイトで調べてホテルを決め、日本のサイトで予約しました。インターネットで各社の料金が容易に比較できるようになったので、旅行会社も大変だと思います。

 レストランにもインターネットで予約できるところがあります。メニューやワインリストの実物の写真まであって、何がうまそうか、事前にじっくり検討できるところもあります。

 コンサートやショーの予約もインターネットでできるところが多いようです。ザルツブルク音楽祭のコンサートは、ウェブで座席の配置から予約状況までわかり、予約すると、航空便でチケットを送ってきました。しかし、こういうのはむしろ少なく、ウェブで予約するとメールが届き、それを印刷して持って行けば入れてくれるのが一般的なようです。慣れないうちはちょっと心もとなく感じましたが、こうして経費を節約し、その分安くしてくれた方が有難いと思います。郵便事業はどの国でも衰退に向かうのではないでしょうか。

 美術館や博物館のウェブ情報も豊富です。マドリッドのプラド美術館へ行ったときは、ウェブに展示室の配置が詳しく出ていたので、丁寧に見る部屋を事前に決めることができました。また、バルセロナのピカソ美術館のサイトには、設立のいきさつやピカソの年譜まで詳しく出ていました。

 このようにウェブで、旅行会社が持っている情報よりはるかに詳しく、新しい情報が手に入り、予約も解約も自由にできるので、最近は旅行会社の店舗に足を運ぶことはまったくなくなりました。今や、旅行会社は変革を迫られています。

現地でもインターネットを活用

 昔は、海外で日本と連絡を取る時は、国際電話かテレックスかファクシミリを使っていました。パソコン通信が使われるようになると、ノートパソコンを海外出張に持参し、パソコン通信を活用して通信費の節約を図りました。その後、インターネットが普及すると、会社の仕事でも、個人の旅行でも、持参したノートパソコンをインターネットに接続して、現地の情報を調べたり、日本と連絡を取ったりするようになりました。

 海外でインターネットを使うには、持参したパソコンをホテルの部屋の電話回線につながなければなりません。しかし、これは必ずしも簡単ではありませんでした。まず、電話機の接続がモジュラー・ジャックになってないところはお手上げです。その点、昔からある由緒ある高級ホテルなどより、ランクが低くても最近できたホテルの方がいいようです。次に問題になるのが、ホテルの交換機を経由して外線に接続する方法です。普通は、外線電話をかけるときと同様に、電話番号の頭にゼロなどを付ければいいのですが、これが、なかなかうまくいかないことがありました。そういうときは、頭のゼロと電話番号の間に「,(コンマ)」をいくつか並べて、時間を空けるとうまくいくこともありました。理屈でなく、いろいろやってみて成功すればOKという世界でした。

 こうしてパソコンをインターネットに接続して、国際ローミング・サービスを使えば、世界中どこにいても自宅にいるときと同様に、ウェブを閲覧したり、メールを処理したりすることができます。また、インターネット経由で企業内のネットワークに入れるようになっていれば、職場にいるときとまったく同じように社内の連絡がとれます。もはや、「今週は海外出張中で不在です」という言い訳は通用しない時代になりました。

 最近はブロードバンドの利用者が増え、それに伴ってウェブのデータ量も増えました。そのため、ホテルなどから電話回線でウェブを使うと、遅くて不便になりました。そこで、今後は、ホテルでLANに対する要求が高まると思います。軽井沢で何回か利用した小さいホテルは、各部屋に電話がない代わりにLANを用意しています。そこの経営者に聞いたところ、ほとんどの利用者が携帯電話を持っているため、電話の設置をやめて電話交換機の費用を節約し、その代わり要求が増えつつあるLANを用意したとのことでした。こういう考えは時代の先端を行っているのかも知れません。

いいウェブサイトとは?

 情報の入手や予約などにウェブサイトをいろいろ使ってみると、ウェブサイトにもいいものと悪いものがあることがわかります。

 まず、利用者が必要とする情報が漏れなく記載されていることが大事です。上記の、レンタカーのトランクのサイズや返却場所がこれに当たります。

 そして、必要な情報に早くたどり着けることが重要です。つまり、利用者がよく使う情報はトップのページから近いところにあることが望まれます。上記の、飛行機の予約などがこれに当たります。

 しかしウェブには、必要以上に大きい写真、内容のないキャッチ・フレーズ、ケバケバしい配色でチャカチャカ動くアニメなどをちりばめた、一見見栄えがいいが、利便性をまったく考慮してないサイトが氾濫しています。たとえば、クルマや電気製品の諸元表を見ようと思っても、見たくもない写真を何枚も見せつけられて、なかなかたどり着けないことがよくあります。見た目のきらびやかさよりも、道具としての便利さをもっと重視するべきだと思います。


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