エムエスツデー 2018年10月号

ごあいさつ

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

(株)エム・システム技研 代表取締役会長 宮道 繁

 記録的な異常な暑さの夏が通り過ぎてゆきましたが、『MS TODAY』誌をご愛読いただいている皆様方にはお変わりのないことを念じております。

 ところで私事で恐縮ですが、今年で結婚58周年を迎えましたので、何か記念になる行事をしようと考えました。良い案が思い当たらなかったのですが、今のうちにできることと自分達の体力を考慮して、最短の北海道旅行をすることにしました。日程は6月26日から29日までの3泊4日とし、目標を ①阿寒湖でマリモを見ること ②旭山動物園でアザラシが透明な円柱水槽の中に顔を出すのを見ることとしました。
 初日は大阪伊丹空港から新千歳空港まで飛び、そこでレンタカーを借りて帯広までただひたすらに車を走らせました(もちろんプロの運転手にお願いしましたので問題なく辿り着きました)。帯広周辺を見学する予定でしたが、雨のため実現しませんでした。翌2日目は釧路湿原を展望台から望んだのですが、雨模様の天気が邪魔をして絶景というわけにはゆきませんでした。そして走ること100キロ以上、ようやく摩周湖に到着しましたが、まさに「霧の摩周湖」とはよく言ったもので、展望台に近づくにつれて霧が濃くなってきて、展望台では周りの樹木さえよく見えない状態でした。止むを得ず、湖面を見るのを諦めて阿寒湖に向かい、そこで宿泊しました。周りはアイヌコタンの店が並び、木彫りのお土産を売っていました。3日目は阿寒湖遊覧船に乗って阿寒湖に浮かぶチュウルイ島で一時下船し、ガラス越しにマリモ群を眺めて第1目標を達成して旭川へ向かいました。ここでも200キロ程走るのですが、途中に女子カーリングで名を上げた北見市を通り、層雲峡で滝を眺めて旭川市内の星野リゾートのホテルに泊まりました。4日目はようやく旭山動物園へ向かい、園内に入るなりいきなりアザラシが円柱の中に現れて第2目標を達成したので、一路新千歳空港へ向かい、最短の北海道旅行は終わりました。レンタカーの走行メータが 1000キロを超えていたのには驚きました。
 こうしているうちにもテレビでは大雨による災害情報を流しており、被災地の影像を見るたびに胸が痛みました。そして地球の温暖化の問題が取り上げられ、省エネ対策が議論されることになります。

 エム・システム技研では、今から35年も前の1983年頃には全電動式バルブアクチュエータ(商品名:サーボトップ)を完成し発売に漕ぎつけていました。その頃には変換器の出荷量が倍々ゲームで伸びていました。計装エンジニアの経験をもつ私は、「いずれ計装用の空気圧式コントロールバルブの世界も、省エネで単純な電動式になるに違いない」と考えて、電動アクチュエータの開発に取組むことにしました。バルブの開度検出には差動トランスを用い、駆動部にはブラシレスDCモータを採用し、空気圧式にも優る?スムーズな動きのストレート形で、入力信号が4~20mA DCの制御弁用電動操作機を完成させました。発売に当たってこれに商品名をつける必要に迫られました。空気圧式のバルブ操作機のことを「エアトップ」とか「バルブトップ」と呼んでいるので「サーボトップ」と名付けることにしたのですが、これを特許庁が商標として認めてくれるかどうかが問題でした。「案ずるより産むが易し」ということでしょうか、出願後問題もなく商標登録の通知を受けました。商品名「サーボトップ®(形式:BST)」の誕生です。そしてさっそく営業活動を開始しました。
 しかしながらマーケティングの成果はそう易々とは実現しませんでした。JR山手線の目黒駅前にあったエム・システム技研の東京営業所に現物を展示し、PRを開始しました。もちろん売込み先はバルブメーカーだと信じていましたので、(株)北辰電機製作所でSEをしていた頃に覚えたバルブメーカーに声を掛けてまわりました。そこで思い知らされたのは、サーボトップ®はバルブメーカーが「自社で生産しているエアトップのライバル商品が現れた」と感じたのだろうと思うのですが、現物の動作を目にしたバルブメーカーのうちA社は、この程度の完成度では気にしなくてもいいといった様子で帰ってゆきました。またB社は、「大変興味がある。ぜひ検討させてもらいたい。ついては1台サンプルを貸して欲しい」との申し出があったので喜んで提供しました。何とそのバルブメーカーはエム・システム技研のBSTとほとんどそっくりなコピー製品を作って、電動弁として発売しました。どうやら市場の構造には全く頭がまわらず、ただ電動弁の世界を開拓しようとの理想に燃えて開発を進めた世間知らずの自分を思い知ることになりました。それからようやく「マーケティング」の必要性を認識して、電動弁が有効に活動できるマーケットは水道局の薬注制御であることに気が付き、一点集中で薬注制御メーカーを開拓することで、細々とではありますが販売実績を重ねることができました。

 それから30年以上の時が経ち、サーボトップ®の中身も進歩して今ではステッピングモータを駆動源として、1000分の1の分解能を誇る電動操作機(モータアクチュエータ)に変身し、必要なバルブサイズに見合った機種を取り揃えることができました。もちろんこれからも市場の要望に合わせた新製品を開発して参ります。今ではバーナーの制御用や船舶用エンジンの冷却水の制御弁などに安定したマーケットを獲得して、生き残りを果たしました。

 空気圧式の制御弁には、大量のクリーンな空気源が必要になります。常時、圧縮空気を供給するコンプレッサ、各装置に圧縮空気を供給するための配管、そして圧縮空気をクリーンにするための脱湿器やエアフィルタのほか、減圧弁などの設備が不可欠です。しかもこれらの機器は常によくメンテナンスされている必要があります。一方電動制御弁にはこれら一切の付帯設備が不要で、信号線と電源線を配線するだけですぐに始動します。その上、バルブ1台当たりの消費電力が圧倒的に少ないので省エネにも貢献します。
 ここ数年の動きですが、ターボ冷凍機のべーンのコントロールとか、ゴミ焼却炉のダンパのコントロールへの採用が出荷台数を大きく押し上げてくれています。

 今年に入って電動操作機単体の販売に限界を感じたこともあり、バルブメーカー様にお願いして共同の電動弁のPR用コラボマップサーボトップ®をバルブに組付けた電動弁として、その特長をマンガを取入れて分かり易く解説したPR用パンフレット)を作ってみたいがどうでしょうかとご提案したところ、複数社から快く了解が得られましたので、早速コラボマップの製作を手掛けることにしました。これで電動弁のユーザー様には、サーボトップ®のサイジングを気にすることなく電動弁一式としてご用命いただける環境を整えることができるのではないかと期待しております。

 今では空気圧式のコントロールバルブにはスマートポジショナが取付けられたものが主流になっています。エム・システム技研では、このサーボトップ®のスマート化に着手しました。間もなく電動弁はHARTプロトコルを搭載してスマート化を果たしたサーボトップ®が完成し、それと組合せた最新鋭の電動制御弁が実現するはずです。どうぞご期待ください。

マンガを取入れて分かり易く解説した、電動調節弁のPR用「コラボマップ」
マンガを取入れて分かり易く解説した、電動調節弁のPR用「コラボマップ」

旭川市 旭山動物園 「あざらし館」 の円柱水槽

(2018年10月)


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