規格/標準

エムエスツデー 1998年1月号

計装豆知識

ノンインセンディブ規格 (NON-INCENDIVE)印刷用PDFはこちら

新しい防爆規格

エム・システム技研ではこの度、みにまるシリーズのアイソレータ、熱電対変換器、測温抵抗体変換器などについて、世界的に知られている米国の認証機関UL(Underwriters Laboratories) からノンインセンディブ承認を取得しました。

発火性の気体、蒸気、粉体、繊維などの物質が常時存在するような工場内の危険地域で使われる計測・制御機器に対しては、従来から本安(本質安全防爆)や耐圧防爆の規格が適用されてきました。

コンパクト変換器シリーズ みにまる

コンパクト変換器シリーズ
みにまる

本安規格は発火性の物質が常時存在するような環境(規格用語ではDivision 1の危険場所)で使われることを想定した規格です。

本安規格では、正常動作中はもちろん、機器内に同時に2箇所までの故障が起きても周囲の発火性物質を発火させることがないような設計が要求されています。また、耐圧防爆規格では、機器の電子回路を強固な外筐に封入し、回路周辺で万が一発火してもその火種を筐体内に閉じ込め外部への波及を避けるという考え方をとっています。したがって、このような機器は高価であり、設置・定期点検などにも手数がかかります。

一方、本安機器を使用した工場の長年の運用実績から次のことがわかってきました。

1) 工場の危険地域については、発火性物質が常時存在するわけではなく、プラントの異常時にだけ発火性の物質が存在する可能性があるような場所(規格用語ではDivision 2の危険場所)が多いこと。

2) プラントの異常と機器の故障が同時に起こる可能性は皆無に近いこと。

このような危険地域で使用する計測・制御機器のために制定された規格がノンインセンディブ規格であり、アメリカ、カナダで使用されています。

ノンインセンディブ規格では、入力線と出力線がショートしたり、これらがアースに接触しても発火を起こすようなエネルギーを出さないことを規定しています。また、開閉部品(make/break component)に対してもそれらの部品が発火を誘発しないように使用条件が細かく規定されています。出力トランジスタなど電力を多く消費する部品の最高表面温度が発火性物質の発火温度にならないように規制し、温度上昇が規格の決める限界値を超える場合には、その温度を機器の表面に表示するように義務づけています。

ノンインセンディブ機器も、本安機器と同じように、承認機関の検定を受け、それに合格しなければなりません。エム・システム技研はULで検定を受けました。

ノンインセンディブ機器は本安機器よりも低コストで製造できますし、設置や保守も簡単です。したがって、アメリカやイギリス、またその他の地域において、アメリカ系の会社・工場で採用され広く使われ始めています。石油精製工場や化学工場でも採用されています。将来は、本安機器、耐圧防爆機器は発火性の物質が常時存在する限られた場所の計装にだけ使われ、ほかの多くの危険地域についてはノンインセンディブ機器を使って計装するようになると予想されます。

日本では、まだノンインセンディブの概念はほとんど取り入れられていませんが、エム・システム技研はいち早くノンインセンディブ規格を取得することにより、より合理的、経済的な計装を実現する新技術の普及に役立ちたいと考えています。


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