規格/標準

エムエスツデー 2009年7月号

計装豆知識

グリーン調達の現状(1)
−RoHS指令からREACH規則まで−印刷用PDFはこちら

昨今、欧州連合(以下、EU)に止まらず、広く国際的な動きが見られる化学物質の含有規制について、主要な法令を簡単にご紹介します。

まず、これらの法令が定められた背景について少し触れておきます。

発端は1992年の国連環境開発会議(地球サミット)であるといわれています。そこで採択されたアジェンダ21(21世紀に向けての課題)と呼ばれる計画に基づき、加盟各国が地球環境問題に取り組んでいます。その後、2002年には持続可能(サステイナブル)な開発に関する国連の会議が開かれ、今日の地球環境問題への取り組みがスタートしたとされています。

現状では、RoHS指令に準拠していなければ、EU域内で、電子・電気機器類を販売することができません。

また、新たに「REACH規則」が採択され、有害物質に対する規制が一層厳しくなっています。

RoHS指令

RoHS指令(Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment Directive)注1) とは、EU域内で販売される電子・電気機器類に対して、製品に含有される特定の有害物質を制限することにより、環境破壊や健康に及ぼす危険を最小化することを意図した指令です。なお、EU以外の国でも法令化の検討が進められています。

規制対象となっている特定の有害物質は、鉛(Pb)、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)、六価クロム(Cr+6)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)類、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の6物質で、適合判定としては、カドミウムは“100ppm以下”、鉛、水銀、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル類、ポリ臭化ジフェニルエーテルは“1000ppm以下”の基準を用います(ただし、技術的に除外することが難しい製品や部品については、指令で規制対象外となっています)注2)

REACH規則

REACH規則(Registration Evaluation Authorization and Restriction of Chemicals)とは、EUにおける化学物質の登録、評価、認可及び制限を目的とした規制です。

REACH規則で対象となっている化学物質は高懸念物質(Substances of Very High Concern)と呼ばれ、環境や人体に対し非常に高い懸念を抱かせる物質とされています。「有害物質を制限し、環境破壊や健康に及ぼす危険を最小化することを意図している」という点ではRoHS指令と変わりはありませんが、対象となる化学物質とその届出の義務が発生する条件が異なり、下記のように、“規則”と“指令”という言葉が法令の重みに違いをもたせています。

RoHS指令とREACH規則の違いについて簡単にまとめたものを表1に示します。

*   *   *

次号では引き続きREACH規則と化学物質含有量調査の現状などについてご紹介します。

表1 RoHS 指令とREACH 規則の違い

  RoHS指令 REACH規則
指令と規則
の違い
拘束力はあるものの、
方式・手段については、
それぞれのEU加盟国に委ねられる
定められている事柄がEU加盟国に
そのまま適用される
規制の
仕組み
特定化学物質の含有制限 化学物質の管理・情報開示
対象物質 6物質群(禁止物質) 登録:市場で流通する全物質(約3万種)
届出、情報開示:高懸念物質
  (選定範囲は約1500種で現在のところ15種指定)
含有の確認 分析可能 分析による確認は困難
規制内容 電気・電子機器に対する
特定化学物質含有の原則禁止
全業種・全製品が対象
消費者・企業に対し、情報開示の義務が生じる
行政庁に対し、登録・届出の義務が生じる

注1)RoHS指令については『エムエスツデー』誌2005年1月号の「計装豆知識」でご紹介しています。
注2)欧州委員会が決定した適用除外項目として、高融点ハンダの鉛(質量で85%以上の鉛を含む鉛ベースの合金)などがあります。

【(株)エム・システム技研 品質保証部】

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