規格/標準

エムエスツデー 2008年11月号

計装豆知識

白金測温抵抗体のJIS規格印刷用PDFはこちら

白金測温抵抗体の国内規格JIS C1604注1)(以下「JIS規格」と略記)の最新版は1997年版ですが、実際のプラントでは旧規格の測温抵抗体やそれに対応する温度変換器が今なお数多く使われています。これらの補修のためにメーカーのカタログを見ても、実際に必要な旧規格に適合しているかどうかは、なかなか判りづらいのが実情だと思われます。

今月は、JIS規格の白金測温抵抗体の1981年以降の変遷についてご説明します注2)

1989年のJIS規格改正

1989年におけるJIS規格の改正では、「国際協調と経済の自由化促進(同規格の「解説」から引用)」を目的として、国際規格であるIEC751(現IEC60751、以下「IEC規格」と略記)への第1次整合が図られました。

以下、主な変更点についてご説明します。

100℃における抵抗値と0℃における抵抗値の比率をR100/R0注3)で表すと、1981年版JIS規格では1.3916でしたが、1983年制定のIEC規格では1.3850であったため、これをIEC規格に合わせました。ただし、それ以前の旧JIS規格で認められていたPt100をいきなり廃止すると市場での混乱を招くため、従来と同じ比率をもった測温抵抗体も「JPt100」という記号を付けて残されました。ただし、0℃における抵抗値が50Ωである、「Pt50」は廃止されました。

使用温度範囲も、IEC規格に合わせて、従来の−200~500℃注4)から−200~650℃注4)に拡大されました。ただし、JPt100の使用最高温度はそれ以前と同じ500℃です。

階級は、1981年版JIS規格では0.15級、0.2級および0.5級の3種類でしたが、相当する階級がIEC規格にない0.15級は廃止されました。また、0.2級および0.5級は、IEC規格に合わせて、名称をそれぞれA級およびB級に変更しました。

1997年のJIS規格改正

1997年改正における主な変更点は、以下のとおりで、IEC規格との第2次整合が図られました。

抵抗の種類としてPt10が導入されました。国内には実績がなかったのですが、IEC規格への整合として導入されました。その一方、JPt100は廃止されました。ただし、補修品などでの需要を考慮して「解説」欄に抵抗値表が残されています。

図1 JIS C1604 測温抵抗体の変遷

抵抗値の比率R100 /R0が、1.3850から1995年版IEC規格互換の1.3851に変更されました。しかし、350℃で0.1℃、600℃で0.37℃と、A級の許容差の1/5程度の差であり、実用上互換性があります。

使用温度範囲は、IEC規格に合わせて再び拡大され、−200~850℃になりました。

また、3線式抵抗器のリード線の色が、従来どおりのJIS方式(A:赤、B:白)とIEC方式(A:白、B:赤)の2種類になりました。

*   *   *

図2 測温抵抗体変換器(形式:M2RS)多くのセンサメーカーは、補修品の需要に応じるため、旧規格対応のPt100測温抵抗体を生産しています。あるメーカーによりますと、補修品の注文を受けた場合、補修対象の測温抵抗体の製造年や添付されている抵抗値表から適用する規格の年度を決めているそうです。

対する測温抵抗体変換器に関しては、たとえばエム・システム技研のアナログ形測温抵抗体変換器(形式:M2RS)は、JPt100(1981年版JIS規格のPt100と同じ)、1989年版JIS規格と1997年版JIS規格におけるPt100、および1981年版JIS規格におけるPt50に対応し、古い測温抵抗体に対してもご使用いただけます。

注1)規格の名称は「測温抵抗体」です。
注2)ここで取り上げた以外の変更点も種々ありますが、本稿では割愛しました。
注3)R100/R0値が規定されたのは1989年版からですが、比率の計算はいずれの年度でも可能なので、本稿ではすべての年度で使用しています。
注4)1981年版JIS規格の抵抗値表では−200~649℃までの抵抗値が記載されています。また、1983年版IEC規格の抵抗値表も−200~850℃まで記載されています。いずれも金属保護管で使用した場合の金属蒸気による悪影響を考慮して、本文中では最高温度を制限していますが、金属蒸気の影響を受けない場合は、抵抗値表どおりの使用が可能です。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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