変換器

エムエスツデー 2004年4月号

計装豆知識

変換器の仕様書の読み方について(4)

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1.熱電対について

図1

熱電対は、工業用温度計測において測温抵抗体とともに最もよく使用される温度センサです。

異なる2種類の金属線または合金線A、Bを図1のように接続し、その両端C、Dに温度差を与えると、ゼーベック効果により端子D1−D2間に電圧(熱起電力)V 1が発生します。なお、端子D1、D2は同一温度t 2に保ちます。

ゼーベック効果による熱起電力V 1はC点(測温接点)とD点(基準接点)の温度差 Δt (=t 1−t 2)に対応して発生するものであり、ΔtV 1の関係は熱電対の金属線A、Bの組合せごとに一定かつ既知であって、IEC、JISなどの規格に「規準熱起電力表」として掲載されています。

2.冷接点補償

測温接点Cの温度t1を測定するには、基準接点(冷接点)D1、D2 を0℃に保ち、その時の熱起電力を上記の規準熱起電力表を使って換算することにより、測温接点の温度、したがって測定対象の温度を知ることができます。

ところで、工業計測においては、通常、基準接点D1、D2の温度を実際に0℃に保つ方法はとらずに、基準接点D1、D2 の温度を別途測定して熱起電力V1 を補償する方法をとりますが、これを冷接点補償または基準接点補償と呼んでいます。具体的には、t2 の温度を測定し、該当する規準熱起電力表から求めたt2 に対応する熱起電力がV2とすると、V1V2を加算して補償します。

基準接点の温度を測定するには、通常、ダイオードの温度特性を利用したり、測温抵抗体を使って電子回路で補償します。

3.冷接点補償の誤差の要因

熱電対の起電力は温度に対して非直線関係にあるのに対して、基準接点温度はダイオード、測温抵抗体などで直線近似して補償するため、基準接点温度が変化すると補償誤差が生じます。

4.エム・システム技研の冷接点補償精度

M2TS

エム・システム技研のカップル変換器(形式:M2TS)を例に、冷接点補償精度について説明しましょう。基準接点20℃において誤差を0℃にした場合、周囲温度(基準接点温度)の変化±10℃に対応する誤差は一般に0.5℃以下です。非直線性がとくに大きい熱電対S、R、PRなどでは1℃以下になります。

例.カップル変換器(形式:M2TS)の仕様
基準精度:±0.4%
(ただしR、S、PR熱電対では測定 スパン400℃以上、B熱電対は770℃以上)

冷接点補償精度:20±10℃において
  K、E、J、T、N熱電対 ±0.5℃以下
  S、R、PR熱電対 ±1℃以下

たとえば、K熱電対によって0~1000℃を測定する信号変換器(M2TS)の周囲温度20±10℃における精度は、基準精度0.4%に対応する4℃と冷接点補償誤差0.5℃を合わせ、最大4.5℃になります。

5.エム・システム技研の冷接点補償の特徴

エム・システム技研の冷接点補償素子は、変換器の熱電対入力端子に直接取り付いているため基準接点温度を正確に捉えます(図2)。

図2 カップル変換器(形式:M2TS)のブロック図

冷接点補償素子の取付端子と変換器の熱電対入力端子を別々に設けているメーカーもありますが、誤差を大きくする原因になります。エム・システム技研では発売当初から、熱電対と冷接点補償素子を同じ端子に取り付ける方法を採用しています。端子温度を正確に測るのが冷接点補償誤差を抑えるポイントです。

【(株)エム・システム技研 開発部】


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