エムエスツデー 2018年1月号

計装豆知識

ロードセルの仕組みと使い方印刷用PDFはこちら

ロードセルは力を電気信号に変換するセンサです。その構造や仕組みについてご説明します。

ロードセルの定義

ロードセル(Load Cell)は、「加えられた力に対し、ある定義された関係で信号を発生する機器」としてJIS B 0155:1997「工業プロセス計測制御用語及び定義」に示されています。
さらに詳細に示した同B 7612-1:2008「アナログロードセル」では、「使用場所における重力加速度及び空気浮力の影響を考慮した後に、ひずみゲージで検出した量(質量)を別の量(出力)に変換することによって質量を測定する機器」と定義されています。
概ねいずれの場合も「力を電気信号に変換するセンサ」とみなせます。
力を検出するセンサには、他に磁歪式や差動変圧式、静電容量式、インダクタンスを利用したものなどもありますが、以下のような理由でひずみゲージ式ロードセルが広く普及されています。

  • ドリフトが小さく、精度が高いため、長時間のモニタリングに適している。
  • 種類によってさまざまではあるが、比較的安価で構築できる。
  • ひずみゲージ自体が小さく、微細な部分に貼り付けできるため小形化が可能。
  • 直流信号で扱えるため、演算処理が容易にできる。

ロードセルの構造

ロードセルは複数のひずみゲージと起歪体(金属弾性体)で構成されます。
ひずみゲージには自身が歪むと抵抗変化が生じる性質があります。この抵抗変化とひずみには以下のような直線関係が成り立ちます。 抵抗変化とひずみ 直線関係図

図1 ひずみゲージロードセルの構造 ひずみゲージの抵抗値は120Ωや350Ωが一般的です。また、ゲージ率は材料や形状によって異なりますが、たいていのものは2.0です。
図1のように、このひずみゲージを起歪体(力が加わると歪むように加工された金属部品)に貼付けることで、歪みを介して外力に正比例した抵抗値を得ることができます。

ロードセルから電気信号を抽出する仕組み

一般的にはホイートストンブリッジ回路を応用することで、ひずみゲージの微細な抵抗値変化を効率良く計測します。
図2のように無負荷状態(ロードセルに力が加わっていない状態)ではR1×R3=R2×R4が成り立ち、バランスの均衡が保たれています。
このとき、ブリッジ電圧に対する出力電圧は0Vになります。ロードセルに力が加わるとひずみゲージの抵抗値が変化し、ブリッジのバランスが崩れるため、力に比例した出力電圧e’Vを得ることができます。 図2 ひずみゲージロードセルの構造

通常は図2のような1ゲージ法が一般のひずみ測定に多く使われますが、2ゲージ法や4ゲージ法を使用する場合もあります(図3)。2ゲージ法は2辺にひずみゲージ、残る2辺に固定抵抗が接続されます。1ゲージ法に比べて2倍の出力を得ることができます。これにより、1枚を温度補償に利用したり、引っ張りと曲げなど複合的な応力を取出したい場合に用いられます。また、4ゲージ法はブリッジの4辺全てにひずみゲージを接続する方法で、通常の力測定にはあまり使用されませんが、ひずみゲージ式の変換器によく用いられます。

図3 ひずみゲージの結線法
名 称 結線法 用 途
1ゲージ法 1ゲージ法 結線法 図
  • 一般の応力・ ひずみ測定
2ゲージ法 2ゲージ法 結線法 図
  • 複合的な応力から必要なひずみ成分を取出す
  • 温度補償との併用
  • 2倍の出力測定
4ゲージ法 4ゲージ法 結線法 図
  • 変換器での応用
  • 4倍の出力測定

変換器の仕組みとブロック図

ブリッジ回路からの出力電圧は、通常数μV~数十mVの微小電圧になります。
このため、図4に示すように変換器側では増幅回路によって約100倍程度のダイナミックレンジで扱いやすい電圧まで増幅します。 図4 ロードセルと変換器のシステムブロック図

その後、デジタル値に変換して、表示・出力します。注意点としては、変換器側でもノイズ対策としてフィルタ処理を行っていますが、伝送ケーブルの配線を行う際にも、モータやインバータ、電源線などの電力線とは1m以上離すこと、またできるだけシールドケーブルを使うなどの考慮が必要です。
エム・システム技研では、ロードセル入力を統一信号に変換するロードセル変換器を各種ご用意しています(図5)。

図5 エム・システム技研のロードセル変換器例
デジタル設定形 MXLC
デジタル設定形
形式: MXLC
ワンステップキャル® M3LLC
ワンステップキャル®設定形
形式: M3LLC

印加電圧について

ロードセルの仕様には「最大印加電圧」や「推奨印加電圧」というものが必ず記載されています。もちろん、この値を超えた電圧を印加すると焼損など故障の恐れがあるため、この値以下で使用しなければなりません。昔は10Vのロードセルが主流だったのですが、最近では5Vのものも増えてきました。
それでは印加電圧はどのくらいにしたら良いのでしょうか。
入力端子間抵抗が350Ωのロードセルを例にして考えてみます。
オームの法則より、印加電圧10Vでは約28mA、5Vでは約14mAの電流を消費します。印加電圧は変換器側から供給するため、変換器側の仕様として許容電流にも注意しなければなりません。たとえば、エム・システム技研のロードセル変換器(形式:M3LLC)では許容電流が30mA以下になっているため、上記のロードセルは印加電圧が10Vでも5Vでも接続できます(ケーブルによる影響は問題ない程度と考えます)。
しかしながら、ロードセルを複数個並列接続するとなると話が変わってきます(一般的にロードセルは複数個和算して使用する事例が多くあります)。同型のロードセルを2個和算した場合には定格容量が2倍で端子間抵抗が半分のロードセルとみなせるため、出力電流は2倍になります。結果、印加電圧10Vでは約57mAとなり接続不可ですが、印加電圧 5Vでは約28mAのため接続できます。
以上から印加電圧が小さければ、出力電流も減り有利になると考えられます。ただし、前述で示したように、変換器側では微小電圧を増幅しているため、印加電圧が小さいほど感度も高くなりますので、外乱ノイズの影響を受けやすくなります。近年は変換器側のフィルタ回路やノイズ対策技術も向上しているため、ある程度までは遜色なく使えますが、接続環境を十分考慮した上で印加電圧を決めてください。

<参考文献>
日本工業規格 JIS B 0155:1997、JIS B 7612-1:2008
センサ応用回路の活用ノウハウ(SP No.66)、トランジスタ技術SPECIAL編集部 編、CQ出版社

【(株)エム・システム技研 設計部】


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