通信/ネットワーク

エムエスツデー 1998年12月号

計装豆知識

HART(ハート信号)(2)印刷用PDFはこちら

HART実現の仕組み(前回に続く)

図1にHART通信を実現する仕組みの原理図を示します。

図1 HART通信実現の仕組み

発信器内のデジタル信号は、マイクロコンピュータの管理のもと、HARTモデムによって周波数信号に変換のうえ、4~20mA DC信号に重畳されて信号線に送り出されます。HARTコミュニケータはこの重畳信号を受け、HARTモデムによって周波数信号を取出し、元のデジタル信号を再生します。一方、受信計器では、フィルタを使って重畳信号をカットし、元の4~20mA DC信号を取出します。

HART応用例

HARTの4~20mA DC信号は、調節計、表示計に送られ、制御ループに使われます。従来どおりの使用方法です。

一方、デジタル信号である測定点番号、測定名、実用単位での測定値などがDCS、PLC、PCのMMIに使えるのは容易にご想像いただけると思います。

応用例を1つ挙げます。すなわち、HARTのループテストへの利用です。計装の立ち上げにあたり、何百点もある発信器、操作端として正しい製品が使われており、また正しく接続されていることを確認するのがループテストです。ユーザー各位は、これが従来非常に多くの時間をとる仕事であったことをご存じのはずです。

計器室で、接続が終わった配線に、HARTコミュニケータをつないで、測定点番号と出力指定信号(たとえば10mA DCに設定)を発信します。測定点番号によって接続してある変換器が所定のものであることが確認できます。また、出力信号である10mA DCの信号が返ってきます。これで接続されている表示器のチェックをすることができます。

HART信号変換器や操作端は単純な4~20mA DCだけを扱う製品に比較し、多少高価です。しかし、その差額は立上げ時のループテストその他の工事手数(コスト)の削減で十分にカバーされて余りがあると認められるようになってきました。保守についても同じことが言えます。

さらに、HARTでは、変換器における上・下限値の設定変更を、計器を現場に設置したままで行えます。また、調節弁の上死点、下死点到達回数を計数して、その値を伝送することもできます。


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