通信/ネットワーク

エムエスツデー 2011年7月号

計装豆知識

EtherNet/IP、EtherCAT印刷用PDFはこちら

今回は、Ethernetをベースとした産業用Real-Time Ethernet 2種について解説します。

従来使用されてきたフィールドバス(CC-LinkやDeviceNetなど)に代わって、近年ではEthernetをベースとした産業用Real-Time Ethernet(RTE)への移行が着実に進みつつあります。今回は、その中からEtherNet/IP(Ethernet Industrial Protocol)とEtherCAT(Ethernet for Control Automation Technology)の概要をご紹介します。

1.EtherNet/IP

表1 EtherNet/IPの通信仕様

伝送種類 10BASE-T/100BASE-TX
伝送速度 10/100Mbps
通信距離 ノード間距離:100m以内
伝送ケーブル STPケーブル カテゴリ5/5e
トポロジ スター、ライン、ツリー
最大接続台数 制限なし

EtherNet/IPは、Ethernetを使用した産業用のマルチベンダネットワークです。表1に、その通信仕様を示します。この仕様はオープンな規格として、DeviceNetと同様にODVA(Open DeviceNet Vendor Association)にて管理され、様々な産業用機器に採用されています。米国およびアジアで大きいシェアを獲得していて、General Motors社の全工場における通信システムとして採用されています。EtherNet/IPは、コントローラ間のネットワークとしてだけでなく、フィールドネットワークとしても使用可能です。また、標準のEthernet技術が使用されているため、様々な汎用Ethernet機器を混在させて使用できます。

EtherNet/IPは、産業環境とタイムクリティカルなアプリケーションでの使用に適したネットワークです。EtherNet/IPでは、標準的なEthernetとTCP/IPテクノロジ、およびCommon Industrial Protocol(CIP)というオープンなアプリケーション層プロトコルを使用します。CIPを使用することによってEtherNet/IP上に接続するだけで複数メーカー製品同士の相互運用が可能になります。

また、CIPは、DeviceNet、ControlNet、およびCompoNetネットワークでも使用されるアプリケーション層であるためEtherNet/IPへの移植が比較的容易に実現できます。

図1にCIPの共通層の概略図を示します。

図1 CIP共通層の概略図

2.EtherCAT

表2 EtherCATの通信仕様

伝送種類 100BASE-TX
伝送速度 全二重100Mbps
通信距離 ノード間距離:100m以内
伝送ケーブル STPケーブル カテゴリ5/5e
トポロジ スター、ライン、ツリー
最大接続台数 65535

EtherCATは、Ethernetを使用した超高速を実現するための動作原理とノード間で高精度に同期する機能などモーション制御に最適なアーキテクチャをもち、シンプルな配線形態を特長としているオープンなネットワークです(表2)。

EtherCAT Technology Group(ETG)は、様々な産業界の主要なユーザー企業と主要なオートメーション企業がEtherCAT技術のサポート、プロモーション、発展を推進するために設置したフォーラムであり、コンフォーマンステストおよびその認証手順を規定することによって、EtherCAT実装の互換性を保つことを目的として活動しています。

EtherCATでは、それぞれのノード宛にデータを送信するのではなく、各ノードがフレームを通過させ、その際に各々のノードでフレームに送信データを書込み、フレームから受信データを読出す方法によって、データ伝送の高速性とリアルタイム性を確保しています(図2)。

図2 EtherCATデータフレームの流れ

フレームを通過させる際の各ノードでの遅延は数nsに過ぎません。したがって、従来のリアルタイムEthernet通信と異なり、使用できる帯域は90%以上になります。

また、EtherCATは100BASE-TXの全二重通信を完全に利用しているため、100Mbpsを超える通信性能(2×100Mbpsの90%以上)が利用可能になります。EtherCATマスタは標準のEthernet Media Access Controller(MAC)を使用していて、ASICなど他の専用チップは必要ありません。したがってEtherCATマスタは、Ethernetインタフェースをもつコントローラであれば、オペレーティングシステム、アプリケーション環境に依存せず、どんな機器でも実装可能です。EtherCATスレーブではデータの送受信処理を、EtherCAT Slave Controller(ESC)が高速で行っています。そのため、ネットワークパフォーマンスはスレーブのマイコンの性能に依存しません。スレーブのアプリケーションとESCはデュアルポートRAMで接続できます。

3.エム・システム技研製品との接続

エム・システム技研が発売を予定している、EtherNet/IP、EtherCATに接続できるリモートI/O R3シリーズ図3に示します。なお順次、他シリーズのリモートI/Oへの展開を予定しています。

図3 EtherNet/IP、EtherCATに接続可能なリモートI/O R3シリーズ

【(株)エム・システム技研 開発部】

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