通信/ネットワーク

エムエスツデー 2009年12月号

計装豆知識

PoE(IEEE802.3af)印刷用PDFはこちら

PoE(Power over Ethernet)は、LANケーブルを使ってEthernet機器に電力を供給するための技術です。Webカメラや無線LANのアクセスポイントなど、天井や壁に設置することが多い機器については、見た目や設置コストの点から省配線の要求が多く、PoEに対応する製品が増えています。

PoEの概要

PoE技術については、IEEE注)が2003年6月にIEEE802.3afとして標準化を行いました。給電スイッチングハブや給電アダプタなど給電側の機器をPSE(Power Sourcing Equipment)と呼び、Webカメラや無線LANのアクセスポイントなど受電側の機器をPD(Powered Device)と呼んでいます。PoEでは、PSE(給電側機器)からLANケーブルを接続する1ポートあたり出力電圧48V(最大57V)、最大15.4Wの出力が可能です。またPSE側にPDの検出機能があるため、どんなEthernet機器に対しても電圧を加えるのではなく、PoE対応の機器に対してだけ給電します。このような理由によって、同一ネットワーク内でのPoE対応機器と非対応機器の混在が可能になっています。

図1 PSE とPD

給電方式(Alternative A、Alternative B)

1本のLANケーブルは、8本の絶縁被覆付き銅線が2本ずつ撚り合わされて(ツイストペア)構成されています。10M/100M Ethernetでは、4対のツイストペアのうち2対((1)(2)対、(3)(6)対)をデータ通信用に使用し、残りの2対((4)(5)対、(7)(8)対)は使用されていません。PSE(給電スイッチングハブ)には、通信で使用している2対((1)(2)対と(3)(6)対)に給電電流を重畳させる方式(Alternative A)と未使用の2対((4)(5)対と(7)(8)対)を使って給電を行う方式(Alternative B、図2)の2種類があります。一方、PD(受電側機器)は、AlternativeA、B両方の給電方式に対応するように設計されていますから、PSEの給電方式を意識しなくてもPoE機能が使用できます。

図2 給電方法(Alternative B の場合)

PDの検出方法

表1 消費電力クラス

クラス 消費電力 検出電流
0 0.44~12.95W 0~5mA
1 0.44~3.84W 8~13mA
2 3.84~6.49W 16~21mA
3 6.49~12.95W 25~31mA
4 未定 35~45mA

PSEに接続されたEthernet機器がPoEに対応している機器(PD)であることを確認するため、PSEはEthernet機器が接続されると2.8~10Vの範囲で2つの異なる値の電圧を印加し、電流を測定します。PDは内部に検出用として25kΩの抵抗を内蔵しているため、25kΩに対応する電流値が検出されたとき、PDであるとPSEは判断します。

次にPSEは15.5~20.5Vの範囲の電圧を出力し、電流を測定します。検出された電流によってPDが属する消費電力クラス(表1)を識別できるため、PSEが各ポートから給電しているPD全体の最大消費電力を把握することができます。PD検出後は400msで給電が開始され、その後はPDが切断されるまで電力を供給し続けます(図3)。

図3 検出から給電までの流れ

エム・システム技研の製品例

図4 Ethernet 用避雷器(形式:MDCAT)

PoE対応のエム・システム技研製品の1例として、最近お客様からのご注文がとくに多い、PoE/1000BASE-T対応 Ethernet用避雷器(形式:MDCAT図4に示します。

注)IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers):米国に本部をもつ電気・電子技術にかかわる標準化団体

【(株)エム・システム技研 開発部】

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