通信/ネットワーク

エムエスツデー 2007年8月号

計装豆知識

BACnet(1)印刷用PDFはこちら

BACnet(Building Automation and Control Network)とはBA(Building Automation)と制御ネットワークのための通信プロトコル用標準化規格です。

1987年7月に米国テネシー州ナッシュビルで、BAシステムに関するメーカー、エンドユーザー、コンサルタントエンジニアまた、大学、政府を含む関係者が会合をもったのが BACnet 制定の発端になりました。

ASHRAE 注)(米国暖房冷凍空調学会)の後援を得て審議は進められ、1995年12月に ANSI/ASHRAE 規格 135-1995 として規格化されました。

BACnet プロトコルを使用することによって、従来使われていた設備・システムのメーカー独自の仕様に対応した個別インタフェースが不要になり、空調設備、照明システム、電気設備、防犯・防災設備やエレベータなど様々な製品に関する各個別のメーカーであっても、共通インタフェースを介してすべてに接続・監視できるマルチベンダー対応システムの構築が可能になりました(図1)。

図1 BACnetプロトコルを使用したシステム構成例

BACnetの仕様の種類

前述のとおり、BACnet は当初1995年にアメリカ標準規格の ANSI/ASHRAE135 として策定されましたが、さらに2003年には、ビルディングオートメーション用プロトコルとして国際標準規格 ISO16484-5としても規定されました。

しかし不幸なことに、日本では普及段階において独自の拡張を加えた標準規格(IEIEJp、IEIEJp-A)が策定されたため、本来のBACnetを含み3種類のプロトコルが現存する事態になりました。

また、BACnet/IP という仕様が標準仕様として策定されました。しかしこれによって昨今、同じ IP 上の通信である BACnet/IP と IEIEJp が、相互接続できないという状況がおこっています。

(1)ASHRAE BACnet

1995年にアメリカ標準規格の ANSI/ASHRAE135 として策定され、2003年には国際標準規格 ISO16484-5 に規定されたプロトコルです。

(2) IEIEJp

日本電気設備学会(IEIEJ)が、BACnet を IP 通信に適用し独自の拡張を加えた「BAS 標準インタフェース仕様書(IEIEJ-P-0003:2000)」を発行しており、このプロトコルは2000年に制定され、IEIEJpと呼ばれています。

(3) IEIEJp-A

BACnet/IP と IEIEJp が相互接続できないという不都合を解消するために、日本電気設備学会(IEIEJ)は、BACnet で定められた通信仕様だけを利用するアデンダムA(IEIEJ-P-0003:2000-a)という拡張を行いました。このプロトコルは2002年に公示され、IEIEJp-A と呼ばれています。

ただし、このIEIEJp-A は IEIEJp との相互接続性を維持していないだけでなく、運用面においては BACnet との相互運用性に問題を残しています。

次回は BACnet の仕様の概要についてご説明します。

〈参考資料〉
BACnetの 最新情報 http://www.bacnet.org/

注)American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers

【(株)エム・システム技研 開発部】

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