エムエスツデー 2006年4月号

計装豆知識

直列接続形電源用避雷器の特長印刷用PDFはこちら

現代社会が高度情報通信社会と呼ばれて久しくなりますが、その発達は止まる所を知らず、ますます加速しているように感じられます。計装の分野においても、計測・通信・制御システムの発達には目を見張るものがありますが、このような発達は主に電子機器の高速・高密度化に支えられています。

ところが、電子機器に使用される半導体部品は、従来の電気製品に使用されていた構成部品に比べて、雷サージに対してはるかに脆弱になっており、落雷が数億ジュールのエネルギーを放出する現象であるのに対し、電子機器はわずか数ミリジュールのエネルギーで故障するといわれています。

エム・システム技研は、計装機器メーカーとして数多くの電子機器を開発するとともに、それらを守る避雷器も同時に開発しています。そして、電子機器メーカー自身が作るからこそ、どのメーカーの避雷器よりも『効く』避雷器であると自負しています。

直列接続形電源用避雷器とは

直列接続形電源用避雷器とは、電源ラインと保護対象機器に対して直列に接続するタイプの避雷器であり、一番の特長として高い保護効果をもつため、計装・制御盤などに組み込まれた電子機器を保護するのに最適です。

対照的なタイプとして並列接続形避雷器がありますが、こちらは主として分電盤や電源の粗保護用であり、どちらかといえば電気製品向けで、電子機器を保護するのには十分とはいえません。

ほとんどの避雷器メーカーが並列接続形だけしか供給していない中で、エム・システム技研は並列接続形と直列接続形の双方を供給しています(図1に形式の違いと効果の差を示します)。

また、直列接続形はコイルを内蔵しているため、ノイズフィルタとしての働きも備えています。

図1

耐雷トランスとの比較

電子機器を守るものとして、避雷器以外に耐雷トランスがあります。構造は基本的に商用トランスと同じですが、雷サージに対する耐電圧を高めるため、一次側に並列接続形避雷器を組み込んだり、一次側に発生した過電圧が二次側に洩れないように、トランスの一次・二次間に静電シールドを施しています。

図2

避雷原理は、基本的に直列接続形避雷器も耐雷トランスも同じで、避雷器がコイルによって雷サージの通過を抑えているのに対し、耐雷トランスはトランスの絶縁によって抑えています(図2)。

 

正直に言って、トランスの絶縁に頼る方が雷サージをよりよく遮断できます。しかし、多くの場合それは過剰な性能を求めることを意味し、電源が絶縁されていない機器を保護するような特別な場合以外は、一般にコイルによる抑制(直列接続形避雷器)で十分と考えています。

一方耐雷トランスには、形状と重量がともに大きくなるため使い勝手が悪く、また単価も高くなるという欠点があります。さらに、耐雷トランスの性能を引き出すには、一次側と二次側にあるアース端子をそれぞれ別の接地極につなぐ必要があります。とくに一次側の接地極については、トランスの絶縁破壊を防ぐため、接地抵抗を数10Ω以下に抑える必要があるので、製品単価だけでなく、接地工事の面からも大変高くつくことになります。

以上を要約し、絶縁、電圧変換などトランスだけがもつ機能を必要とする場合は別として、避雷対策だけを考慮すればよいのであれば、手軽に使えて安価な直列接続形避雷器をおすすめします。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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