エムエスツデー 2011年1月号

計装豆知識

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今回は、JIS規格で規定している避雷器の分類について解説します。

以前のJIS規格では、避雷針や接地など建築物の保護を目的とする規格が中心でしたが、近年は電気・電子機器の被害が増えたのに伴って、それらの機器に対する雷保護の規格がIEC規格として次々に制定され、それを実質上翻訳する方式によってJIS規格も整備されてきました。これにより避雷器(サージ防護デバイス、Surge Protective Device、以下本稿では「SPD」と略記します)の評価方法についてもJIS規格に追加され、避雷器メーカーのカタログでもクラスI 対応やクラスII 対応といった表現をよく目にするようになりました。

今回は、JIS規格で規定している避雷器の分類について解説します。

JIS規格について

雷保護関連の主な規格を表1に示します。これらの規格は、右端欄のIEC規格に対応しており、内容的には実質的に一致(identical)です。

表1 主な雷保護関連のJIS規格

規格番号
規格名称
対応IEC規格
JIS Z9290-4
雷保護−第4部:建築物内の電気及び電子システム IEC 62305-4
JIS C60364-4-44
建築電気設備−第4−44部:安全保護−妨害電圧及び電磁妨害に対する保護 IEC 60364-4-44
JIS C5381-1
低圧配電システムに接続するサージ防護デバイスの所要性能及び試験方法 IEC 61643-1
JIS C5381-12
低圧配電システムに接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準 IEC 61643-12
JIS C5381-21
通信及び信号回線に接続するサージ防護デバイスの所要性能及び試験方法 IEC 61643-21
JIS C5381-22
通信及び信号回線に接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準 IEC 61643-22

避雷器(SPD)の分類について

避雷器の性能試験は、電源用と通信・信号回線用に分かれています。

(1)電源用避雷器の分類(JIS C5381-1)

表2は電源用避雷器のクラス一覧です。クラスI、II では、試験器の出力を短絡した状態での雷サージ波形(短絡回路電流波形)が使用されますが、クラスIII で使用されるコンビネーション波形は、短絡回路電流波形だけでなく、試験器の出力を開放した状態での雷サージの波形(開回路電圧波形)についても規定されています。通信・回線用避雷器の試験カテゴリでも短絡回路電流波形と開回路電圧波形の双方で雷サージ波形が規定されています。これらの試験波形は設置場所に侵入する標準的な雷サージを考慮しています。

直撃雷が分流する可能性がある電源の引込口には、クラスI避雷器を使用します。また建物内部の分電盤など誘導雷が侵入する箇所にはクラスII避雷器を設置することで、クラスI避雷器だけでは防ぎきれない雷サージを低減させます。また、とくに過電圧に弱い機器についてはクラスIII避雷器を機器の近傍に設置します。

表2 電源用避雷器のクラス一覧

クラス
試験波形
主な設置場所
I
電流波形(10/350μs) 電力引込口(引込盤内)
II
電流波形(8/20μs) 分電盤内、制御盤内
III
コンビネーション波形 電気・電子機器の近傍

 

(2)通信・回線用避雷器の分類(JIS C5381-21)

表3は通信・信号回線用避雷器のカテゴリ一覧です。

電源用避雷器に比べて分類(カテゴリ)が細分化されていますが、設置場所に応じて使い分けるというより、1つの避雷器に対して複数の試験方法を実施して避雷器を多面的に評価するという意味合いが大きいと思われます。
通信回線では誘導雷の侵入が大部分であるため、カテゴリC試験が性能評価の中心となります。また避雷器の性能比較を行う場合もカテゴリCの試験条件で比較する場合が多いのです。

表3 通信・信号回線用避雷器のカテゴリ一覧

カテゴリ
試験の
種 類
開回路電圧
短絡回路電流
最小印加
回  数
A1
非常に遅い
上昇率
≧1kV
0.1~100kV/s
の上昇率
10A
0.1~2A/ms≧
1000μs(持続時間)
適用しない
A2
交流
0.1~20Arms
単サイクル
B1
遅い
上昇率
1kV
10/1000
100A
10/1000
300
B2
1kV又は4kV
10/700
25A又は100A
5/300
300
B3
≧1kV
100V/μs
10A、25A又は100A
10/1000
300
C1
速い
上昇率
0.5kV又は1kV
1.2/50
0.25kA又は0.5kA
8/20
300
C2
2kV、4kV又は10kV
1.2/50
1kA、2kA又は5kA
8/20
10
C3
≧1kV
1kV/μs
10A、25A又は100A
10/1000
300
D1
高い
エネルギー
≧1kV
0.5kA、1kA又は2.5kA
10/350
2
D2
≧1kV
1kA又は2.5kA
10/250
5

JIS C5381-21:2004 から

直撃雷と誘導雷

避雷器の性能試験でよく使われるサージ波形について説明します。図1はクラスI 試験で使用する直撃雷波形(10/350μs)とクラスII 試験で使用する誘導雷波形(8/20μs)です。ピーク電流が共通でも、サージ波形に大きな違いがあることが分かります。

直撃雷が侵入する場所には、大電流を想定したクラスI避雷器が、それ以外の誘導雷の浸入が想定される場所にはクラスII の避雷器が適しています。

図1 雷サージの電流波形

クラスI とクラスII の設置例

避雷器の分類は性能の優劣を示すのではなく、実施した試験条件を表します。メーカーでは、設置する場所や用途を考慮して設計・試験が実施されていますから、クラスI避雷器だけで雷保護は十分といったものではなく、設置場所や被保護機器の耐電圧などに応じてクラスII やクラスIII避雷器と組合せることによって効果的な雷保護が行えます。図2に、エム・システム技研のクラスI、クラスII 対応の電源用避雷器注)を使用した設置例を示します。

図2 クラスとクラスⅡの設置例

注)エム・システム技研では、図2でご紹介した並列接続形電源用避雷器以外にも、直流電源用や小容量電源用など、クラスI、クラスII、クラスIII に対応した機種を取り揃えています。詳しくはホームページ(http://www.m-system.co.jp/products/mrester.html)をご覧ください。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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