エムエスツデー 2007年1月号

計装豆知識

2線式変換器について(その2)印刷用PDFはこちら

現場で使われる2線式変換器

前回の「計装豆知識」でご紹介したように、2線式変換器は、屋外に複数の貯蔵タンクがあるタンクヤードなどの現場で多く使用されます。したがって、現場形機器に対して求められる様々な性能が必要になります。

まず、屋外またはそれに近い環境で使用されるため、広い使用温度範囲が求められます。

図1 2線式ユニバーサル温度変換器(形式:27HU)

たとえば、エム・システム技研の現場形 2線式ユニバーサル温度変換器(形式:27HU図1)の使用可能温度範囲は−40~85℃ですが、同じく計器室設置用 直流入力変換器(形式:M2VSの温度範囲は−5~55℃です。

このように、2線式変換器は過酷な温度環境に対応できるように設計製作されています。

また屋外で使用する場合は、風雨にさらされることや塵埃が浮遊するような環境に設置せざるをえない場合もあり、IEC60529 の IP65注1)や NEMA250 のType4 などの保護等級への適合注2)を求められる場合がしばしばあります。

さらに、発火性の液体が充填されているタンクヤードなどの現場に設置される場合、非可燃性の雰囲気だけでなく爆発性雰囲気にさらされることが予測され、防爆認定が必要になるケースも多数あります。

爆発性雰囲気が存在する可能性が最も高い0種危険場所(爆発性雰囲気の危険度を表すランクで最も危険な場所)で使用できる電子機器は、本質安全防爆の認定を受けた製品に限られます(本質安全防爆とは、特定の故障が生じた状態でも爆発の原因にはならない防爆方式です)。

先に挙げたタンクヤードの例でも、センサだけを0種危険場所に設置し、安全場所に変換器と安全保持器(危険なエネルギーをセンサ側に行かないようにする機器)、または変換器と安全保持器が一体となった機器を設置する方法もありますが、0種危険場所と安全場所が遠く離れている場合、センサ配線を長距離敷設する必要があります。

なお、熱電対で温度を測定する場合には補償導線の長距離敷設が必要であり、さらに補償導線は高価であるという問題があります。

また、0種危険場所への電源線の引き込みは困難です。本質安全防爆の原理上、回路エネルギーが制限されているからです。

上記の理由で、0種危険場所で使用できる変換器としては、2線式変換器がコストや安全性の点からいって有利になります。

2線式変換器と併用するディストリビュータ

本質安全防爆形2線式変換器を動作させるには安全保持器とディストリビュータが必要です。

ディストリビュータは、図2に示す直流電源と受信抵抗に相当する部分で、2線式変換器への電源供給とともに電流信号を取り出す働きをします。

図2 2線式変換器の回路例

図3 ディストリビュータ(形式:A3DYH)

エム・システム技研では、安全保持器(ガルバニックアイソレータ)を兼ねたディストリビュータで、HART信号注3)も安全側と危険側の間を伝送可能なディストリビュータ(形式:A3DYH図3)を用意しています。

そのほかにも名称の本来の意味である「複数の2線式変換器に対して動作用電源を分配供給する」ディストリビュータ(形式:DS-824や、HART通信信号を双方向に絶縁して中継するディストリビュータ(形式:M2DYHなど、バラエティ豊かな各種ディストリビュータを取り揃えています。

注1)IP:『エムエスツデー』誌2003年7月号「計装豆知識」参照。
注2)NEMA:『エムエスツデー』誌2003年12月号「計装豆知識」参照。
注3)HART:『エムエスツデー』誌1998年1112月号「計装豆知識」参照。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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