エムエスツデー 2001年8月号

計装豆知識

電磁弁について印刷用PDFはこちら

図1 常時閉直動ポペット型二方弁の構造例

流体の流れを制御する弁(バルブ)の一種に、電磁弁と呼ばれるものがあります。ソレノイドと呼ばれるコイルの中にプランジャと呼ばれる可動鉄片があり、その動きによってバルブを開閉するという、比較的簡単な原理で動作します。最大の特徴は、高速応答が可能なことで、数10~数100msで動作します。他方、動作原理上、全開か全閉しかない、いわゆるON−OFFタイプの弁になります。

電磁弁は、あらゆる産業分野で幅広く使われていますが、それだけではなく、一般家庭でも使われています。直接目には付きにくいでしょうが、読者のみなさんの家庭にも必ず電磁弁があるはずです注1)

電磁弁には、用途や構造によって多種多様な製品があります。一般的には、流体の種類と電磁弁の構造に従って分類できます。

まず、流体の種類で分類してみましょう。たとえば、油圧(シリンダ駆動)用、空気圧(シリンダ駆動)用、真空用、都市ガス用、蒸気用など、それぞれに特徴をもった構造の電磁弁が生産されています。とはいえ、多くの場合、この「何々用」という呼び方にそれほど強い意味はなく、強いていえばその流体でよく使われているタイプであることを示している程度でしょう。一般的には、流体の種類に応じて、材質が変わってきます(たとえば、腐食性流体の場合は弁の材質を耐食性のあるものにする必要があります)が、中には構造にまで影響を及ぼす場合もあります(たとえば、食品などの場合は、液溜りができない構造にするなどの工夫が凝らされています)。この点は、電磁弁に限らずすべてのバルブに共通することです。

構造で分類する場合には、どの部分に着目するかによって、いくつかの方法で分類できます。ここでは、そのいくつかを簡単に説明します。

電磁弁は、流量制御弁や圧力制御弁と区別して、切換弁または方向制御弁注2)と呼ばれることがあります。流れる経路(方向)の数によって二~五方弁に分類できます。二方弁は電気回路のスイッチのaまたはb接点注3)、三方弁はc接点と似ています。二および三方弁はあらゆる用途に使用されています。四および五方弁は、2つのc接点を組み合わせたような機能で、主にシリンダなどの流体駆動アクチュエータの動作方向切替に用いられます。

弁体および弁座の形状(構造)によっても種々に分類できます。主なものとしては、ポペット型およびスプール型があります。これらの具体的構造についての説明は省略しますが、簡単に特徴だけを挙げれば、次のとおりです。ポペット型は弁の口径や流体圧力が大きくなると、駆動に要する力も大きくなりますが、流体中の異物に比較的強い構造です。スプール型は流体圧力の影響を受けにくくすることができますが、弁体にパッキンを使用している場合には、パッキンの寿命が短くなります。

駆動方式によって分類すれば、直動型とパイロット型に分類できます。メインバルブの弁体がプランジャに直結しているタイプを直動型と呼びます。また、メインバルブの弁体をダイヤフラムやピストンを介して流体の圧力で駆動し、その圧力を小型の直動型三方弁(パイロット弁)で制御するタイプをパイロット型と呼びます。直動型の場合は、流体の圧力や弁の口径が大きいとソレノイドの必要電力が大きくなります。他方、パイロット型の場合は、ソレノイドの電力を小さくすることが可能ですが、ある程度以上の流体圧力が必要になります。また、直動型に比べて動作時間が遅くなります。

最後に、フィールドネットワークについてふれておきましょう。FA用電磁弁のメーカーは、メーカー間に差はあるものの、PLC各社のネットワークがオープン化する以前からフィールドネットワークへの対応に熱心に取り組んでいました。最近のオープン化されたネットワークにも幅広く対応しているようです。

注1) 全自動洗濯機の給排水用電磁弁などが好例です。
注2) この分類方法では、弁の駆動方式は特定していません。
注3) 電気スイッチの開閉と電磁弁の開閉は意味が逆になります。

【(株)エム・システム技研 開発部】

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