2000-2001年計装豆知識
- インターネットとイントラネット(1)/2001.12
- LONWORKSについて/2001.11
- 計装配線用電線・ケーブルについて/2001.9
- 電磁弁について/2001.8
- 汎用インバータについて/2001.7
- 接地について/2001.6
- ポーラログラフについて/2001.5
- ORP(酸化還元電位)について/2001.4
- イオン電極のはなし/2001.3
- 溶存酸素計のはなし/2001.2
- 電磁濃度計のはなし/2001.1
- 電気伝導率計のはなし/2000.12
- pH(ピーエッチ)計(3)2000.11
- コアレス電流センサ/2000.10
- pH(ピーエッチ)計(2)/2000.9
- pH(ピーエッチ)計(1)/2000.8
- 調節弁の基礎知識(3)/2000.7
- 調節弁の基礎知識(2)/2000.6
- 調節弁の基礎知識(1)/2000.5
- 電気機械器具の防爆構造(2)/2000.4
- 電気機械器具の防爆構造(1)/2000.3
- CC-Link/2000.2
- DeviceNet(デバイスネット)/2000.1
エムエスツデー 2000年3月号
電気機械器具の防爆構造(1)
国内および海外の防爆規格
電気機械器具の防爆構造とは、爆発のおそれのあるガスや蒸気あるいは粉じんが大気中に含まれている、または含まれるおそれがある場所において安全に使用できるよう電気機械器具に適用する技術的手法のことで、わが国においては、労働安全衛生法に基づき労働大臣によって規格や規則が定められています。なお、労働省が定めた電気機器の防爆構造に関係する規格には2通りあります。 第1は、「電気機械器具防爆構造規格」(以下「構造規格」)であり、たとえば「d2G4」などと仕様書やカタログに記載されているものが、これに相当します。昭和44年に制定され、長年にわたって使われていますから、多くの方が聞き慣れていることでしょう。
第2は、IEC(国際電気標準会議)が制定した国際規格(IEC規格79シリーズ、以下「IEC79」)との整合をはかるため、昭和63年4月1日に、労働省告示に基づく通達の別添として発行されたもので、「電気機械器具防爆構造規格における可燃性ガス又は引火性の物の蒸気に係る防爆構造に適合する電気機械器具と同等以上の防爆性能を有するものの技術的基準(IEC79関係)」(以下「技術的基準」)です。こちらは、たとえば「Exd ⅡB T5」などと表記されています。
後者の技術的基準は、その制定後に拠り所となったIEC79シリーズに多くの改正が行われ、その結果 国際規格との間に差が生じたため、平成8年9月6日の新しい通達により改正され、翌平成9年2月6日より適用されています。なお、この改正に伴い、それ以前に技術的基準によって認定を受けていた製品は、新たな更新手続きを受けることができなくなったため、本年2月5日以降は製造できなくなりました。
欧州(EU加盟国)における防爆規格としては、EN規格および加盟国それぞれの国内規格があります。しかし、おおむねIEC79に整合しているので、わが国の技術的基準と同じと考えて良いでしょう。ただし、わが国では認定されていない防爆構造や炭坑用防爆機器 注)など、技術的基準よりも広い範囲をカバーしています。
なお欧州では、2003年以降CEマーキングATEX(防爆)指令が発令され、防爆性能だけではなく品質管理体制の監査などが加わります。また、製品への表記方法も変更されます。
米国ではNEC(National Electrical Code)に基づき、FM(Factory Mutual Research Corporation)やUL(Underwriters Laboratories Inc. )などの民間機関がそれぞれに防爆規格を定めています。しかし、機関が異なっていてもその内容は同じと考えてよいでしょう。なお、米国の防爆規格にも2種類あります。
第1はNEC 500に基づいて制定されている規格で、現在はDivisionシステムとも呼ばれ、現在はこちらが主流と言えるでしょう。
第2はNEC 505に基づくもので、Zoneシステムと呼ばれ、わが国の「技術的基準」と同様IEC79に基づき制定されています。こちらは、米国内においてはまだなじみが薄いようですし、IEC規格との整合性についても問題があるような指摘も見受けられます。(次号につづく)
<参考文献>
防爆構造電気機械器具型式検定ガイド(産業安全技術協会刊)他
注) JIS規格では、同一規格に炭坑用と工場用の両方が規定されています。しかし、わが国では、炭坑用防爆機器は通産省の管轄(鉱山保安法および鉱山坑内用品検定規則)、工場用防爆機器は労働省の管轄であり、それぞれ検定機関が異なります。技術的基準が労働省によって定められたものであることから、炭坑用防爆機器が除外されたのも理解できます。また、国内の炭坑がほとんど閉山した現在は、炭坑用防爆規格を国際規格にあわせても仕方がないことだと言えます。なお、米国でも工場用と炭坑用は別の法律によって規定されています。
【(株)エム・システム技研 開発部】