1998-1999年計装豆知識
- PROFIBUS(プロフィバス)/1999.12
- Modbus(モドバス)/1999.11
- イーサネット/1999.10
- RS-232/485規格/1999.9
- 画像データの圧縮技術/1999.8
- PID調節計の採用条件/1999.4
- ワイパーのないポテンショメータ、インダクポット/1999.3
- 交流の表現と演算方式/1999.2
- HART(ハート信号)(2)/1998.12
- HART(ハート信号)(1)/1998.11
- 温度、流量、圧力、レベル測定とPID制御(2)/1998.10
- 温度、流量、圧力、レベル測定とPID制御(1)/1998.9
- 変換器の小形化とタンタルコンデンサ/1998.8
- 熱電対と熱電対信号変換器(2)/1998.7
- 熱電対と熱電対信号変換器(1)/1998.6
- 温度センサの選択と設置(2)/1998.5
- 温度センサの選択と設置(1)/1998.4
- ファジィ/1998.3
- 配線とノイズ(3)/1998.2
- ノンインセンディブ規格(NON-INCENDIVE)/1998.1
エムエスツデー 1998年2月号
配線とノイズ(3)
デジタル信号のノイズ
信号線には浮遊容量があります。たとえば、10pFの浮遊容量があれば50Hzの商用周波では、約300MΩの絶縁抵抗の場合と同じ漏洩電流ですが、1MHzの信号になると約16kΩの絶縁抵抗と同じ漏洩電流が流れます。このため信号は減衰すると同時に他の信号線へのノイズになります。
デジタル信号は高周波成分を多く含みますから、信号伝送用配線による信号の洩れには十分配慮しなければなりません。
高 速 信 号
コンピュータ間の信号のやりとりのように、多量の情報を伝送するには速いスピード(高い周波数)が要求されます。したがって、同軸ケーブル、光ファイバケーブルなど高周波専用のケーブルを信号伝送用配線として採用する必要があります。光ファイバを使った光による信号伝送では、外部からのノイズを受けることなく、高速で大量の信号を安定に伝送できますが、コストが高くなるという問題をもっています。
制御システムでは、高速信号の伝送のために同軸ケーブルが多く使われています。同軸ケーブルの使用でとくに注意しなければならないのは線を継ぐ場合です。完全シールド方式の中継コネクタを使い、教育訓練を受けた作業者による作業が必要です。また、急角度の折り曲げは避けなければなりません。同軸ケーブルを使っても配線工事が不完全であれば、信号は洩れたり減衰したりします。
低 速 信 号
変換器、伝送器や操作部にマイコンが搭載されていて、現場機器と制御器の間でデジタル信号をやりとりすることがあります。この場合には、それほど多量の信号伝送を必要としませんから、数10kbps~1kbpsの低速信号が用いられます。配線には一般のアナログ信号用の線が使われます。
日本で多く使用されている平行電線の計装用ケーブルは、通信に使用されることを前提に設計されていませんから、大きい線間容量をもっています。この容量により隣の線に信号が飛び込みます(クロストーク)。より対線では、クロストークを相殺するためノイズは大幅に減ります。
現場で使用されるフィールドバス用低速信号の伝送速度は31.25kbpsです。この場合、使用される電線と外来ノイズを考慮しての最大配線長は表に示すようになります。
表 低速デジタル信号の線の種類と伝送距離の一例
線の種類 | 最大配線長 |
個別シールド付きより対線 | 1900m |
一括シールド付きより対線 | 1200m |
シールドなしより対線 | 400m |
一括シールド付き平行線 | 200m |
新しく配線する場合は、個別シールド付きより対線の使用が推奨されます。従来の配線を使用してデジタル信号を伝送する場合にはクロストークに対する検討が必要です。
おわりに
多芯ケーブルを使いアナログ信号と電磁弁開閉用信号を同一ケーブルに混在して伝送して、問題なく運転できていたプラントで増設があり、同じ方法で信号を送ったところ、ノイズによってプラントが誤動作するというトラブルが発生しました。原因は増設したプラントと計器室との間の距離が長くなったことによります。
ノイズは配線の種類、長さ、信号の大きさ、周波数、受信計器のノイズに対する強さ、その他多くの要素が混ざり合ってシステムのトラブルとなります。これらの要素はプラントによって異なり、最低の費用でそのプラントにもっとも適した配線方法を決定することは難しい問題です。しかしノイズ発生のメカニズムを理解することにより、与えられた条件のもとでノイズの影響を受けにくい配線を実現することができます。