エムエスツデー 2018年1月号

お客様訪問記

浸出水処理施設のデータ伝送に新しい無線周波数920MHz帯を使用して
ワイヤレスシステムを構築

島根県(株)まつえ環境の森様の浸出水処理施設に採用された920MHz帯マルチホップ無線機器「くにまる®

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は産業廃棄物処分業の(株)まつえ環境の森様を訪問し、浸出水処理施設における調整槽設備のデータ伝送用途にご採用いただいた、くにまる®データマル®FAXロガーについて、同設備の元請けとして設備設計から建設に至るプロジェクト全体の取りまとめ業務を担当された三菱化工機(株)の伊東 正敬 様、また同設備の制御・監視システムの提案・構築および制御盤類を納入された(株)別川製作所の山本 浩史 様にお話を伺いました。

新しいワイヤレス通信である920MHz帯無線の導入

 [エム・システム技研、以下エムと略称]設備の概要、無線システムを導入された経緯をお聞かせください。

 [伊東様]今回は、まつえ環境の森様の最終処分場から排出される浸出水の流入調整設備の建設を三菱化工機(株)にて請け負いました。調整槽設備は、浸出水を一時貯留し、水量変動および水質変動を均一化し、後段の水処理施設の処理安定化を図るためのものです。監視制御システムの設計を行う際、既設水処理設備と新調整槽それぞれの監視制御の連携をとるために各種信号のやり取りを考慮しなくてはなりません。その一方で、既設水処理設備と新調整槽は直線距離で約400m離れており、森林が混在する湿地帯であったことから、施工性や今後拡張性を考慮し、ケーブル敷設よりもワイヤレス伝送でできないか、(株)別川製作所の山本様に相談しました。

採用の決め手はサポート力

 [山本様]ワイヤレスシステムの導入にあたり、新しいワイヤレスネットワークである920MHz帯無線の採用を検討しました。920MHz帯無線を搭載した機器を取り扱っているメーカーは複数ありますが、普段から変換器など多数の取引があるエム・システム技研に引合いを出しました。
 今回の導入現場は見通しが良くなく、ポンプの発停も行うことから導入を悩んでいました。エム・システム技研が無償で現地電波計測を行い、合格基準を満たしていると報告していただいたことから、エム・システム技研のワイヤレスシステムである、920MHz帯マルチホップ無線機器くにまるを導入することに決めました。

島根県(株)まつえ環境の森様の浸出水処理施設に採用された920MHz帯マルチホップ無線機器「くにまる®」
(株)まつえ環境の森様の浸出水処理施設に採用された
920MHz帯マルチホップ無線機器「くにまる®」システム構成図 [拡大図

プログラムレスで簡単設定

 [エム]システムの構成についてお聞かせください。

 [山本様]既設水処理設備の制御を行っているPLCから出力される既設原水槽水位データを、くにまる子機であるR3シリーズのI/Oカードに取込み、920MHz帯無線で約400m離れた新調整槽に設置した、くにまる親機であるIB10W2に伝送しています。新調整槽設備にもPLCを設置し、くにまるで伝送したデータを信号取合するため、データマルのI/Oマッピング機能を使用しました。新調整槽側のPLCで新調整槽および既設水処理設備の原水槽に設置しているそれぞれのポンプの発停を行っています。また、新調整槽側のPLCとシリアル通信(RS-232-C)でFAXロガー TL2Fを接続して、アナログ電話回線で電話、FAX通報、水位データのロギング、帳票作成を行っています。
 くにまる親機であるIB10W2は、屋外使用を目的とした防塵・防水性IP67を取得しているため、写真の通り新調整槽の屋上に設置しました。これにより、約400m離れた見通しの利かないロケーションでも安定した通信が行えたと考えています。また、LANケーブル経由で電源供給ができるPoEに対応しているため、新調整槽1階部に設置した制御盤とLANケーブル1本のみの取合いであり、施工も容易でした。

920MHz帯無線はランニングコスト無料の優れた通信

 [エム]運用されていかがでしょうか。

 [伊東様]設備は森の中にあるため、親機、子機のアンテナ間に木が生い茂っています。導入した時期が冬であったため木は枯れており、夏の葉っぱが茂った時期に通信が途切れることはないか心配していましたが、通信が途切れることが一度もなかったため、安心して運用できています。

マルチホップで監視設備増設

 [エム]今後の予定についてお聞かせください

 [伊東様]今回導入したワイヤレスシステムは、施工面およびメンテナンス面での煩雑さを解消し、工期短縮化にも寄与できたものと評価しており、大きな成果と考えています。
 また、くにまるのマルチホップ機能は、データをバケツリレーのように伝送でき、無駄な中継局を設置することなく簡易に増設できるため、今後伝送したい信号が増えたとしても、新たにケーブルを敷設することなく、元々の拡張機能を利用して容易に増設できることも利点の一つだと思います。今回の実績を生かし、他の案件にも採用を検討していきたいと思います。

 [エム]本日はお忙しい中をありがとうございました。今後ともエム・システム技研をよろしくお願いします。

採用された製品のご紹介

くにまるキャラクター

  • マルチポートゲートウェイ®

    マルチポートゲートウェイ® IB10W2

    形式 IB10W2

    2.4GHz帯、5GHz帯の無線LANモジュール、920MHz帯の特定小電力無線モジュールを内蔵した無線ゲートウェイです。

  • リモートI/O R3シリーズ
    通信カード

    リモートI/O R3シリーズ 通信カード R3-NW1

    形式 R3-NW1

    リモートI/O R3シリーズの通信カードで、920MHz帯特定小電力無線局子機を実装しています。

  • IoT用端末
    データマル®

    IoT用端末 データマル® DL8

    形式 DL8

    Web画面による遠隔監視機能、データロギング機能、イベント通報機能などを備えたIoT用端末です。

  • フィールドロガー®
    FAXロガー

    フィールドロガー® FAXロガー TL2F-PM2

    形式 TL2F-PM2

    入力データを監視し、異常が発生したときはあらかじめ設定されている通報文をFAXまたはEメール・音声にて送信します。

(株)まつえ環境の森のご紹介

 (株)まつえ環境の森は、島根県松江市に本社を置き、2012年(平成24年)、産業廃棄物処分業として創立され、管理型産業廃棄物処理施設を運営しています。 (株)まつえ環境の森 航空写真

三菱化工機(株)のご紹介

 三菱化工機(株)は、神奈川県川崎市に本社工場を置き、1935年(昭和10年)、化学機械専門メーカーとして創立され、プラント・環境設備の建設・エンジニアリングと、各種単体機器の製作を軸に事業を展開しています。とくに、環境事業においては廃棄物最終処分場および下水処理施設の排水処理、また汚泥処理に関わる濃縮/消化/脱水などの各プロセス関連製品を取り揃えています。

(株)別川製作所のご紹介

 (株)別川製作所は、石川県白山(ハクサン)市に本社を置き1952年(昭和27年)の創業以来、配電盤メーカーとして、配電・制御・分電・監視盤の生産を行っており、全国のPA(Process Automation)、FA(Factory Automation)、BA(Building Automation)設備などに納入しています。
 盤製作だけでなくプラントの監視制御、電力・空調の省エネ監視、情報通信ネットワーク構築など、システムの提案、立ち上げ、メンテナンスまで一貫して行い、数多くの現場に納入実績があります。

本システムについての照会先:
(株)別川製作所
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目12番16号(住友芝大門ビル2号館2F)
TEL:03-3459-1321 FAX:03-3459-9653
システム営業部 山本 浩史 様


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