エムエスツデー 2013年7月号

お客様訪問記

見やすいトレンドグラフ画面でユーティリティをリアルタイムに監視
(株)日立ハイテクノロジーズ様の監視 操作ソフトの
リプレースに採用されたSCADALINXpro

(株)エム・システム技研 システム技術グループ

 今回は、山口県下松(くだまつ)市所在の(株)日立ハイテクノロジーズの電子デバイスシステム事業統括本部 笠戸地区設計・生産本部を訪問し、ユーティリティ監視システムの更新時にご採用いただいた、エム・システム技研のHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXproについて、同社のエッチング装置第二設計部 設備グループ 渡辺 克哉 様および清水 文男 様、並びに調達グループ 熊澤 篤史 様、そして当該システムを納入されたライト電業(株)ソリューションビジネス部 根本 勝弘 様および営業部 栗山 等至 様にお話を伺いました。

 御社の電子デバイスシステム事業統括本部についてお教えください。

 [熊澤様]まず、(株)日立ハイテクノロジーズが掲げる企業ビジョンは、「ハイテクソリューション事業におけるグローバルトップを目指す」ということです。商事機能と設計・製造機能を併せ持つユニークな企業でもあり、大きく4つの事業で構成されています。その中の1つである、ここ電子デバイスシステム事業統括本部では、電子デバイスの生産に欠かすことができない装置のマーケティングから研究開発・設計・製造を行なっています。中でも、笠戸地区 設計・生産本部ではエッチング装置の研究開発・設計、製造を担っています。当事業所の中にあるe-CSセンタは、お客様の視点で、時間的、空間的制約を排除してAgile&Flexibleな顧客対応を可能とするために、お客様の満足度を飛躍的に向上させたい、というコンセプトで建設したエッチング装置をデモンストレーションするための拠点です。

 e-CSセンタのクラス10*1 クリーンルーム内にはエッチング装置に加え、電子顕微鏡や異物測定器などの評価装置をイントラネットに接続し、各種データは、データベース上にて一括管理されています。

冷却水温度や圧力、窒素の流量などを監視

 監視システムの用途についてお教えください。

 [渡辺様]e-CSセンタのユーティリティ監視・記録には、かねてよりエム・システム技研のシステムを使用しています。e-CSセンタでは量産現場と同じエッチング装置でウエハを処理しているため、もし、エアー圧力の変動や冷却水の水温の変化などが発生すると、ウエハごとの加工の結果に微妙な違いが出てきます。よって、温度、圧力を定められた範囲内に抑える必要があります。もし、エッチング性能に差が出たときには、現場から我々に問合せがありますので、その際監視画面を見て、何か圧力や水温に変動があったかどうかなどの確認を行ないます。

 [清水様]我々の方では、装置に対して一番重要なユーティリティになる冷却水温度や圧力、窒素(N2)の流量、ドライエアの圧力などを監視記録しています。不具合が起きたとき、後で何が起きたかを調査・確認するためのシステムになっています。

 [渡辺様]圧力が低下するなど異常が発生したときは、エッチング装置が自動で停止します。しかし、冷却水温度は急には上がらず微妙に変化するため、トレンドグラフの時間軸が短いと分かりません。変化に要する時間が非常に長いため、確保する期間を1日、3日、1週間と時間軸を変えて目視で確認しています。冷却水温度の変化は、朝、装置を起動すると温度が除々に上がり、夜になって装置稼働台数が減ると下がる傾向がありますが、たとえば、三方弁が故障して冷却水が流れずに温度が上がったままであると、グラフを見ればおかしいと分かるため、すぐに修理対応できたこともありました。単に瞬時値を見てもすぐには異常と分かりませんが、トレンドを見ることにより異常かどうか判断できるため、トレンドの記録が残っていることが重要です。

エム・システム技研の製品でシステムを更新

 本システムの更新の経緯についてお教えください。

 [清水様]従前の設備は2001年に導入し、約10年間故障することなく正常にモニタすることができ、大変有効に活用してきましたので、更新に当たっては信頼性の面より同じくエム・システム技研製品で行くことにしました。今回は、監視用パソコンが経年劣化していることもあり、予防保全の観点からWindows7を搭載したパソコンに交換したいと考えました。ただ、従前設備導入時の詳細な経緯などが不明であったため調達グループへ相談し、ライト電業様とエム・システム技研に依頼して現地調査を行ってもらい、どのように更新したらよいか相談にのってもらいました。

 ライト電業様がご提案された更新システムの概要や構成についてお教えください。

 [栗山様]従前の設備では、リモート入出力ユニット(形式:SMLで監視対象装置のアナログ信号や接点信号を取り込み、エム・システム技研独自のNestBusと呼ばれるRS-485の規格を利用した通信で事務所まで伝送し、通信レベル変換器(形式:LK1でRS-232-Cに変換してから監視パソコンに接続していました。更新にあたり、従前の監視 操作ソフト(形式:SFDNの後継ソフトであるSCADALINXpro HMIパッケージ(形式:SSPRO5を採用し、信号を入出力する機器はリモートI/OのR5シリーズに変更しました。R5シリーズを採用した理由は、機械室から管理事務所までの通信線はシールド付きより対線を使用していたため、この線を流用してNestBusと同じRS-485の規格で通信ができるModbusに対応した通信カード(形式:R5-NM1があること、SCADALINXproがModbusの通信ドライバを標準で搭載していること、SMLはプログラミングが必要でしたがR5シリーズはプログラムが不要で安価であったことなどが挙げられます。また、直流電圧信号を入力するI/Oカード(形式:R5-SVはチャネル間が絶縁されているためノイズによる影響を受けず、かつModbusは500mまで通信保証されていたため通信距離にも全く問題はありませんでした(図3)。

図3 (株)日立ハイテクノロジーズのユーティリティ監視システム構成図

図3 (株)日立ハイテクノロジーズのユーティリティ監視システム構成図[拡大図

 更新作業のポイントなどについてお教えください。

 [根本様]SFDNからSCADALINXproへ更新するにあたり、通信については使用実績もあり扱い慣れたModbusに変更したのがポイントであり、また、現地での切替え工事にあたっては、事前に社内で同様の環境を準備してデバッグを行ない確認して行ったため、工事も予定通り2日間で終了し、システムを無事に起ち上げることができました。

見やすく、表示の早いトレンドグラフ画面

 SCADALINXproでは、どのような画面を作成し使用されていますか?

 [根本様]SCADALINXproには標準のサンプル画面が用意されていますし、我々もSCADALINXproでのエンジニアリングは経験豊富で画面構築のノウハウや開発画面を多数もっていますから、それらを利用して従前の設備と同様にトレンドグラフ画面、警報画面、計器フェース画面などを作成しました。

図1 SCADALINXproのトレンドグラフ画面 (画面はデバッグ時のものです)

図2 SCADALINXproの警報画面 (画面はデバッグ時のものです)

 本システムを導入されてのご感想をお聞かせください。

 [渡辺様]トレンドグラフが見やすくなり画面の表示が早くなったと思います。先ほどお話したとおり時間軸を1日、3日、1週間と素早く切替えて確認することが多いのですが、以前は切替表示にしばらく時間がかかり、待つ感じがありましたが、今では10 秒以内にグラフが表示されるため非常に早く、調べやすくなりました。また、グラフの背景色が黒くなったことで各トレンドグラフの線が視覚的に認識しやすくもなりました。

 今後のご予定などをお教えください。

 [渡辺様]現状では最低限必要なデータを取り込んで監視をしていますが、将来的には設備を改造して、たとえば、三方弁の開度など監視する情報量を増やしていきたいと思います。また、デモンストレーション用装置の電力を監視して、処理の内容によって電力をどの程度消費するかといったデータも取ってみたいと考えています。

*  *  *

 本日はお忙しい中をありがとうございました。

*1 米国連邦規格であるFed-std209E(Federal standard 209E)に規定がある清浄度を表すレベルのひとつ。クリーンルームの規格には、一定の空間(容積)の中にどれくらいのサイズの微粒子が何個あるかどうかという基準が示されています。クラス10は、1フィート立方中(28.8リットル中)に0.5μm 径の粒子が10個存在するという非常に厳しいレベルの清浄度を示すクラスです。

拡大 SCADALINXpro HMI パッケージ(形式:SSPRO5)

中央監視/操作用SCADA

【山口県下松(くだまつ)市のご紹介】
 山口県下松市は、山口県の南東部に位置し、周南市と光市に挟まれた形で周防灘(すおうなだ)に面しており、沖には、笠戸島を有し、大きな内海を抱えたような環境を形成しています。大正時代から工業都市として発展し、鉄道車両や船舶の製造関係から最先端のITに関するハイテク関係まで、幅広い製造業のまちとして様々な「ものづくり」が行われ、その周辺には関連企業が数多く集結しています。瀬戸内海国立公園に含まれる笠戸島は古くは、造船の島として栄えました。1970年には本土と島を結ぶ真紅のランガートラス橋である「笠戸大橋」が造られ、交通の便も良くなり、また、風光明媚なことから、今では「造船の島」から「観光の島」として脚光を浴び、人工海浜のはなぐり海水浴場、家族旅行村、海上遊歩道、そして最近では海を見下ろせる笠戸島大城温泉なども誕生しています。

山口県下松市

本システムについての照会先:
ライト電業(株)
広島支店 営業部
〒733-0025
広島県広島市西区 小河内町2丁目1-23
TEL:082-232-7285  FAX:082-295-5427

(株)エム・システム技研
カスタマセンター システム技術グループ
TEL:06-6659-8200  FAX:06-6659-8510

SCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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