エムエスツデー 2011年1月号

お客様訪問記

市町村合併に伴い、下水処理施設用遠隔監視システムの統合を経済的に実現
栃木県那須塩原市黒磯水処理センターに採用された
SCADALINXpro、リモートI/O R3シリーズ

(株)エム・システム技研 カスタマセンター システム技術グループ

図1 黒磯水処理センター 今回は、栃木県那須塩原市の黒磯水処理センター(図1)を訪問し、下水処理施設の遠隔監視システムに採用されたHMI統合パッケージソフトウェアSCADALINXproリモートI/O R3シリーズ図2)について、黒磯水処理センター 上下水道部 下水道課 施設係 係長 峰岸 紀夫様、および日本ヘルス工業(株)栃木北サービスセンター 黒磯事業所 所長 室井 悦夫様と副所長 磯 誠様にお話を伺いました。

本システムを導入された経緯についてお聞かせください。

 [峰岸様]2005年に実施した、黒磯市、那須郡西那須野町、同郡塩原町の市町村合併に伴い、黒磯水処理センターと塩原水処理センターの2つの下水道処理施設で構成された監視システムの統合を検討していました。

 既設の監視システムは、我々ユーザーによるシステムの追加・改造が困難であったために、今回は、我々がシステムを構築でき、追加改造も柔軟に行うことができるようにする点をポイントに導入を検討しました。各社の監視ソフトウェアを検討しましたが、国内メーカー製のSCADAでサポートが充実している点が決め手になり、エム・システム技研のSCADALINXproの導入を決定しました。

システムの概要や構成についてお教えください。

図2 リモートI/O R3シリーズ [峰岸様]ローカル端末としては、分散設置でき、省配線で構築できるリモートI/O R3シリーズを黒磯水処理センター内に1セットと塩原水処理センター内に2セット設置しました。

 上位監視ソフトウェアとしては、SCADALINXpro(形式:SSPRO4)を使用し、黒磯水処理センターでSCADALINXproサーバを構築し、クライアントとしての監視端末を2台設置して監視しています。

 塩原水処理センター内にも1台のクライアント用の監視端末を設置するとともに、黒磯水処理センター内にあるすべての情報を監視できる構成を取っています。

 このような構成により、どちらの水処理施設内の監視端末でもすべての情報を見ることができます。

 2つの水処理場間は、フレッツ・グループアクセス プロ(NTT東日本が提供するネットワークサービス)を使用して、閉域で安全性の高いネットワークを経済的に構築しました。

 また、今回構築したネットワークでは、3台のWebカメラと内線PHS回線を同時に使用できます。

SCADALINXproでは、どのような画面を作成し、使用されていますか?

 [峰岸様]今回は、フロー画面、アラーム監視画面、トレンド画面、帳票画面などを製品添付のサンプルを活用して構築しました(図3)。

図3 画面例

 帳票機能については、Microsoft Excelを用いてレイアウト変更や計算、印刷ができる点で非常に便利に構築することができました。また、オペレータはExcelを使用することが多く、サブレポート機能として自動的にExcel形式の帳票ファイルを出力させる機能には驚きました。

 SCADALINXproのセミナーを受講してシステム構築を始めましたが、セミナーでの課題とは違い、いざ実践となると苦労した点もありました。

 当初は、画面で表示させるランプの色やタグ名の記述方法などでも苦労しましたが、今では理解して柔軟に構築することができるようになりました。SCADAには各社の製品があり外国メーカーも多く、サポート面での心配もありましたが、質問をエム・システム技研のサポート窓口宛にメールするとレスポンス良く回答していただき、非常に助かりました。回答も親切で丁寧な対応をしていただき非常に感謝しています。

 SCADALINXproについては、構築当初はいろいろと苦労しましたが、一度作った部品や画面を自分たちの資産としてシステム中で再活用できるため、今後有効に活用したいと考えています。

フレッツ・グループアクセス プロの構築は簡単でしたか?

 [峰岸様]ネットワークの構築に関しては、NTTと日本ヘルス工業(株)に協力していただきました。

 [日本ヘルス工業殿]ネットワークは問題なくスムーズに構築できました。

 当初は、光回線が開通していないためにADSL回線を使用しましたが、現在、フレッツ光回線が開通したため、ADSL回線から光回線へ切り換え、高速でスムーズなネットワーク環境で運用しています。回線は高速で、通信が途切れることもなく、運用としては問題のない状況です。

 先に説明したように、ネットワーク構築では、塩原水処理センターのWebカメラの画像を3台と構内回線用のPHS内線電話網も同一ネットワークに組み込んでいます。したがって、電話回線料とWebカメラの回線料、監視システムの回線料の3つを1つの回線使用料でまかなうことができ、大幅なコストダウンが実現できました。

図4 システム構成図
図4 システム構成図[拡大図

本システムを導入されてのご感想をお聞かせください。

 [峰岸様]今回のシステムは、現在黒磯水処理センターと塩原水処理センターで、それぞれ独自に監視しているシステムを統合監視するための基礎段階として試験運用しています。

 将来的な統合監視に向けて、現在まで問題なく試験運用できています。チャート式記録計などの機器故障が発生した場合は、監視システムの空きチャネルに信号を取り込み、代用監視している状況にもあります。

 こういった柔軟な対応ができる点も、汎用SCADAソフトウェアを使用したメリットであると考え満足しています。

今後の課題やご予定などがありましたら、お聞かせください。

 [峰岸様]現在、塩原水処理センターは、日勤業務で夜間のみ遠隔監視態勢を取っていますが、将来的には塩原水処理センターの無人化も検討しています。

 現在は監視のみのシステムですが、将来の無人化に向けて設備の発・停動作を監視画面上から行うことを検討し、テストしています。さらにローカル側にコントローラを設置して自動制御機器を追加することも検討しています。

 また、現在グラフィックパネルに状態表示ランプや水位レベル表示を設置して監視していますが、変更・改造などを考えると、大型液晶画面で一括監視ができる方がより経済的であり、大型画面で表示することで設備への関心度が高まり、センター内での技術向上も図れると考えています。

 今回、SCADAを採用することによって、自分たちで追加・改造を行うことができるシステムを構築できました。この結果、従来よりも柔軟にシステムの変更・拡張ができるため、低予算の中でシステムアップが可能となり非常に満足しています。

本日はお忙しい中をありがとうございました。

【栃木県那須塩原市のご紹介】
那須塩原市は栃木県の北部に位置する市で、2005年1月1日に黒磯市、那須郡西那須野町、同郡塩原町の新設合併により発足しました。市の面積の半分は、那須火山帯に属した湯量豊富な塩原温泉郷や板室温泉郷、三斗小屋温泉をはじめ、箒川沿いの四季折々に彩りを見せる塩原渓谷や沼ッ原湿原を代表とした観光の名所となる自然豊かな山岳部が占めています。残りの半分は、北側を那珂川、南側を箒川に挟まれた緩やかな傾斜の扇状地で、JR東北新幹線と東北本線の那須塩原、黒磯、西那須野の各駅周辺と国道4号線と国道400号線沿いに市街地が形成されています。また、酪農も盛んで、生乳の粗生産額が本州第1位(全国第4位)を誇っています。標高200m以上であり、高原性の冷涼な気候です。

栃木県那須塩原市

本稿についての照会先:
日本ヘルス工業(株)
栃木北サービスセンター黒磯事業所
所 長 室井 悦夫 様
副所長 磯 誠 様
〒325-0013
栃木県那須塩原市鍋掛 1085
黒磯水処理センター内
TEL:0287-64-1690
FAX:0287-60-0737

SCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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