エムエスツデー 2009年10月号

お客様訪問記

那須地区広域行政事務組合 第2衛生センターで
既設システムのリプレースとして採用された
SCADALINXproによる監視システム

(株)エム・システム技研 カスタマセンター システム技術グループ

 那須地区広域行政事務組合は、大田原市、那須塩原市、那須町の2市1町で構成する広域行政事務組合で、同組合第2衛生センターがある那須塩原市は、2005年1月1日に黒磯市、那須郡西那須野町、同郡塩原町の新設合併により発足した、人口約11万人、佐野市に次ぎ栃木県内第5位、県北最多人口の市です。東京から北に約150km、東京−仙台のほぼ中間で、世界遺産「日光の社寺」を有する日光市の北東に位置し、北側は大佐飛山地、那須岳に連なる山岳部で塩原温泉郷や板室温泉などの豊富な温泉があり、これらの山岳部が市域のおよそ半分を占めています。また、山岳部から連なる穏やかな傾斜の平地が広がる複合扇状地には、天然あゆの遡上で有名な那珂川(なかがわ)、蛇尾川(さびがわ)、箒川(ほうきがわ)などの河川があり、農業や酪農などが盛んです。とくに生乳の生産では北海道に次いで多い栃木県の主生産地であり、その生産量は本州の市町村で第1位、全国でも第4位となっています。

 第2衛生センターは、那須地区広域行政事務組合が管轄する上記の2市1町を圏域とした屎尿(しにょう)の広域処理施設として1965年から運用を開始しました。その後、施設の老朽化や人口増加に対応した改良を行い、1981年度に現在の処理施設となり、日量150キロリットルの処理を行うとともに高度処理された処理水を隣に流れる那珂川へ放流しています。

 第2衛生センターでは、1981年度からデータロガー監視システムが導入され、運用されていましたが、機器の経年劣化や機能障害などに対処して、1995年3月にPLC(三菱電機製MELSEC-Aシリーズ)を採用し、システムを更新しました。それから15年近くが経過したため、本年(2009年)、さらにエム・システム技研の監視・操作システムへと更新しました。

 この最後のリプレースについて、このたび那須地区広域行政事務組合を訪問し、事業課管理係副主幹兼管理係長の藤田 真一郎 様、事業課管理係主査の八木澤 路男 様、システムの維持管理を担当されている日本ヘルス工業(株)平山 浩司 様、そして本システムの設計、構築を担当された同社ウォーター施設リストレーション統合本部栃木リストレーショングループ係長 石山 成仁 様にお話を伺いました。

 [エム・システム技研、以下エムと略称]まず、本システムを更新された経緯についてお聞かせください。

 [藤田]旧システムは1995年3月から運用を始めていて、運転管理上の指標と機器メンテナンスの実施時期、また日々の運転状況の把握などに使用され現場において不可欠な設備になっています。

 しかし近年は、機器の経年劣化や機能障害などが目立つとともに機器の修理や交換用部品の入手も困難な状況になり、システム自体の機器の更新を計画しました。

 [エム]システム構成の概要、特徴などについてお教えください。

図1 システム構成図

 [石山]以前のシステム構成と今回のシステム構成については図1をご参照ください。更新にあたり、既設機器はできるだけそのまま活用することを念頭におき、上位ソフトウェアとしては、エム・システム技研の最新のSCADAソフトウェアであるSCADALINXpro HMIパッケージ(形式:SSPRO4を採用しました。

 SCADALINXproは各種のPLCドライバを備えていて、既設PLCを直接接続できるため、既設盤内に設置されていたPLC(三菱電機製MELSEC-Aシリーズ)はそのままデータ収集用として活かすことにしました。したがって、デジタル信号192点、アナログ信号53点の配線を変更することなく新システムに移行でき、入力機器を新規調達しないため費用を大幅に削減できました。なお、将来増設の可能性があるため、そのときには入力機器の更新を検討する予定です。

図2 管理室内に設置されたパソコンとグラフィック画面

 SCADALINXproについては、以前に経験していた監視 操作ソフト(形式:SFDNに比べると構築上やや難しい点もありましたが、すでに他のシステムでの使用経験があり、セミナー受講およびエム・システム技研のサポートを受けて操作・設定方法を習得していたため、今回は比較的スムーズにシステムが構築できました。グラフィック画面では、画面上のパーツを自由にレイアウトできるため、実際の設備に近い図を入れることができました(図2)。また、システムを止めることなく画面レイアウトの変更ができるため、実運転に入ってからでも余裕をもって画面修正が行えました。SCADALINXproについては、エム・システム技研では今後のOSにも対応していく予定とのことであり、スクリプトなどにより機能追加も可能であるため、まさに今回の更新目的に合致するものでした。

図3 エンベデッドコントローラとリモートI / O R3 シリーズ

 入出力機器についてですが、以前からいろいろなシステムで使用していたMsysNet機器には、計器ブロックを使ってアナログ積算や上下限警報チェックなどの演算機能、および簡単なシーケンスなどを組めるという優れた特長があります。そこで、この特長を引き継いでいるエンベデッドコントローラ(形式:R3RTU-EMを採用することにしました。R3RTU-EMは、入出力機器としては、最新のリモートI/OシリーズのひとつであるR3シリーズを組み合わせることができるため、増設にもかかわらず、設置スペースを十分確保することができました(図3)。R3RTU-EMでは、経験済みの計器ブロックを使用できるため、システム移行のやりやすさと安心感を実感できました。結果として、短納期にも対応できました。

 [エム]今回、システムを変更されてのご感想をお聞かせください。

図4 複数画面を同時に監視

 [八木澤]何といっても、グラフィックや指示計、トレンドグラフなどを含む画面全体が見やすくなり、状況を把握しやすくなったことが挙げられます。さらに、複数のブラウザを立ち上げることで複数画面を同時に見られるため、関連情報の同時監視がやりやすくなりました(図4)。

 また、画面の変更が比較的簡単にできるとのことであり、設備の変更や改造などの工事の際には、データロガーの変更も同時進行させることによって、常に現場の状況に応じた最新の監視ができるものと期待しています。

 [平山]運転管理を行う上では、施設が広く機器も数多く運転しているため、監視用画面は見やすくわかりやすくなければなりません。その点、SCADALINXproは自由度が高く、画面作成の段階から現場の意向を取り入れて構築できたことは大きなメリットだったと思います。

 また、施設自体を常に運転している状況であるため、更新にあたっては施設の運転に支障が出ないよう、既設盤内に設置されていたPLCをそのまま利用することによって最短の時間で移行を実現しました。

 [エム]今後の課題がございましたら、お聞かせください。

 [藤田]現在は導入当初からのデータだけを収集していますが、これまでに幾度かの改修や変更工事を行ってきた中で、現場から中央に上がってきていない信号があります。これらの信号の中にはデータロガーに取り込むべきものが含まれているため、今後はデータの収集装置であるPLCの更新と併せて改善を図っていきたいと考えています。

 [エム]本日は、お忙しいところ、お話しをお聞かせいただき、ありがとうございました。

本稿のシステムについての照会先:
日本ヘルス工業株式会社 平山 浩司 様、石山 成仁 様
〒321-4334 栃木県真岡市八木岡206-1
TEL.0285-83-2201 FAX.0285-80-0154

MsysNetSCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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