エムエスツデー 2009年7月号

お客様訪問記

北海道遠軽町で採用された
SCADALINXproによる監視システム

(株)エム・システム技研 カスタマセンター システム技術グループ

 遠軽(えんがる)町は、北海道の東北部、網走支庁管内のほぼ中央、内陸部に位置しています。

 北は紋別市・滝上町、東は上湧別(かみゆうべつ)町・湧別町・佐呂間町、西は上川町、南は北見市にそれぞれ接している、東西47km、南北46kmにわたる緑豊かな町です。町を貫流する湧別川の上流側に位置し、支湧別川、武利川、丸瀬布川、瀬戸瀬川、生田原川、社名淵川のほか多数の支流が町内で合流し、そこに広がる肥よくな大地は、開拓当初から農耕に適した環境の町として繁栄してきました。2005年10月に、生田原(いくたはら)町、遠軽町、丸瀬布(まるせっぷ)町、白滝(しらたき)村の4町村が合併し、新しい「遠軽町」として、人口約23,000人、面積約1,330平方キロメートルの町になりました。役場は、遠軽町役場、生田原総合支所、丸瀬布総合支所、白滝総合支所に分かれています。

 今回は遠軽町役場をお訪ねし、遠軽町の浄水場群監視システムについて、遠軽町清川浄水場の落合 一実 様、そして本システムの設計、構築を担当された札幌テーケーシー(株)の松原 弘昌 様にお話を伺いました。

 [エム・システム技研、以下エムと略称]まず、本システムを導入された経緯についてお聞かせください。

図1 全体構成図

 [落合]背景としては、市町村合併に伴い、清川浄水場は24時間勤務体制になり、各浄水場施設の監視を一元化することになりました。それまでは、丸瀬布浄水場にエム・システム技研のMsysNet監視システムが設置されていましたが、それ以外は、日報用記録計の設置だけでした。監視システムとしては、現在の経済情勢から、とくに安価な入出力機器を使用しなければならないという事情があり、それに加えて、次のことを考慮する必要がありました。

図2 浄水場構成機器

 主となる浄水場(清川浄水場)とその他の浄水場は最大約40km離れているため、専用回線で広域監視した場合にランニングコストが高くなります。回線のランニングコストの低減を図るために、「フレッツ・グループアクセス ライト」(NTT東日本のインフラ)を採用することにしました。したがって、監視装置とI/O機器のプロトコルが「TCP/IP」でなければなりません。I/O機器と通信回線で接続されるサーバパソコンは各浄水場には設置せず、清川浄水場に設置します。そして、サーバ・クライアント方式を使用して、各支所、すなわち職員個人の卓上パソコンから監視・操作を行いたいので、そのようなことが可能なソフトウェアであること、異常時にメール通報が行えることなどを考慮した結果、エム・システム技研のHMI統合パッケージソフトウェア「SCADALINXpro」が望ましいという結論に達しました。

 [エム]システムの構成やその機能の概略、特長などについてお教えください。

 [松原]全体構成については、図1をご参照ください。

 サーバのLANを2ポート使用していて、1系統はグループアクセス経由で4箇所の浄水場(白滝、丸瀬布、安国、生田原)とデータのやりとりを行います。各浄水場には、リモートI/O R3シリーズを設置して、既設システムからの信号を取り入れています。浄水場における監視用機器の構成については図2をご参照ください。

図3 フロー画面

 もう1系統のLAN(遠軽町情報系LAN回線網)は、4箇所のクライアントからサーバへのアクセスに使用されます。遠軽情報系LAN回線網では、丸瀬布総合支所、白滝総合支所、生田原総合支所、遠軽町役場の4箇所は有線LANで接続していますが、遠軽町役場と清川浄水場間は無線LANで接続されています。各クライアントでは各浄水場のフロー画面にアナログデータ値、運転・故障状態、I/Oの状態などを表示することによって、状況がひと目で分かるようになっています(図3)。

 また「フレッツ・グループ」回線断時のバックアップ機能として、Webロガー(形式:TL2W2-R2による音声通報機能、Eメール通報機能を備えています。

図4 清川浄水場モニタ

 清川浄水場では3色信号灯をサーバのシリアルポートと接続し、警報発生時に、重故障、軽故障、回線異常の3つの区分を表示させています。また、全体の監視を容易にするため、1画面に4箇所のフロー画面を、解像度を1920×1200画面で作成し、大型フルハイビジョン液晶で表示しています(図4)。

図5 遠隔操作画面

 [エム]今回、本システムを導入されてのご感想をお聞かせください。

 [落合]今までは現場まで行って記録・操作していましたが、本システムの導入により、SCADALINXproを5ライセンスキー付きで購入しているため、最大5名まで同時にパソコンで監視できるようになりました。この結果、合併に伴う人員削減のため苦労していた問題が大幅に改善されました。

 とくに、トレンドグラフ画面では、2本のカーソルを自由に移動でき、カーソル間の最大値/最小値/平均値を容易に確認できます。この機能は、夜間の配水量の変化を見て漏水の判断をするときに有効です。また、遠隔操作で丸瀬布浄水場の前処理装置の逆洗スケジュールの書込み、取水ポンプ揚水スケジュールの書込み、ポンプの発停、次亜塩注入調節計の注入率書込みなども行えるようになり、今までは対応が難しかった冬場の雪が深い季節でも、容易に対応できるようになりました(図5)。

 [エム]今後の課題はございますか。

 [落合]水質のトレンドについては、横幅を1週間ほどにして見たいのですが、それだけのデータを表示しようとすると表示にかなりの時間がかかります。その他の細かい改善点を含めて、札幌テーケーシー様にお願いしているところです。また遠隔で監視したい箇所が別にもあり、将来的に監視システムに取り込みたいと考えています。

 [エム]本日は、お忙しいところをありがとうございました。

本稿のシステムについての照会先:
札幌テーケーシー株式会社
課長 松原弘昌様
〒003-0012 北海道札幌市白石区
中央2条1丁目 浅沼ビル4F
TEL.011-813-3336
FAX.011-813-3343

MsysNetSCADALINXproは(株)エム・システム技研の登録商標です。


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